僕らの小さな怪物たち。

夜乃

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ふつうの日常

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「早坂~聞いてんの?またボーとしちゃってさー。ほらさ3時間目の仁司にも注意されてたやろ?」
隣の席の宮野美咲がいつもの関西弁口調で話しかけてきた。宮野は短めの黒髪をゴムで一つに結びながら俺のほうを向いた。
宮野は男子生徒が注目するほどの可愛さである。
あまり女子には興味が無かった俺にとってはあまり気にならないのだが。
仁司というのは国語の教師の名前だ。
仁司の授業はとにかく教科書を棒読みにしとけ、みたいな授業で、クラスの連中もみんな内職をしたりするような退屈な授業だった。
・・俺は窓の外から視線を美咲のほうに向ける。
「窓の外なんか見てへんとさ、もっとさ、ボーとする時間を何か趣味の時間に当てるとかさー。・・・早坂君。なんかないんですか。趣味は」
美咲は自分の机の上に広げてあるルーズリーフを手に持って俺のほうへ向けた。
それにはとても抽象的なギャグまんがのような仁司の顔が書いてある。
低い鼻のせいで垂れ下がっためがねがとても仁司によく似ている。
美咲はとても絵がうまかった。
「ボーとしてるほうが、仁司の似顔絵を書いてるより十分ましだよ。」
「そう?でも絵的センスは磨けるじゃない?」
・・・授業中そんなもの書いてるのと、ボーと窓の外みてるのと、どちらもえてしてあまり変わりのない行為だよなとも思う。
授業をまじめに聞いていないとゆう点では同じだ。
仁司の絵もこちらをにらんでうなずいている・・ように見えた。
「あのさー。早坂将来どうすんのよ?早坂もさ一応そろそろ考えないといけない時期じゃない?・・・なんか考えているの?」
今俺たちは中学3年生で卒業まであと半年ちょっとしかない。他の生徒はもう受験一身に勉強している時期である。俺らもそろそろ考えないといけない時期だった。
「そうゆうお前はどうするんだよ。・・そういや宮野、桜丘高校近いよな?あのへんならお前ならよゆーか・・?」
宮野はちょっと考え込むようにしてすこし黙った。
しばらくすると宮野は無気力そうに上を見ながらいった。
「・・・どーしようかなぁ・・。」
宮野がしばらく天井を見ていたので、俺もつられて、見ていることにした。
クラスメイトの甲高い笑い声が聞こえる。
天井についているボコボコの模様がゆがんだ教室を象徴しているかのように見えた。
少し間の沈黙のせいで教室のクラスメイトの喧騒がざわざわとより大きく聞こえてくる。
あるものはプロレスやったり、あるものはトランプをしたりしている。
おおよそ受験のことなんか考えてなさそうな笑い声が聞こえてくるのだが、それぞれとても受験だの、その他いろいろなことについて悩んでいるのだろう・・。
ただ、その悩みについてクラスメイトに相談するなんて事は、しない。この時代の受験生なんてのは、それぞれ、弱みも、手の内も見せず、作り笑いをして作り物の自分を見せることで精一杯・・なのかもしれない。
弱みなんて見せたら付け込まれるだけだし、噂なんてのはすぐに広まる。
ちょっとした弱みから悪口のターゲットにされるなんてこともよくある話である。
俺と宮野は、そうゆう普通の人の感覚になじめない人種の人間だった。
だからお互いとてもうまがあった、のだと思う。
だが、2人とも普通一般の高校生たちとはなじめていなかった。
中学3年生のクラス替えの時、初めて宮野を見たときはとても明るいやつだと思った。
いや、明るいやつ、とゆう表現よりは、普通にクラスの人となじめるタイプの人間だと思っていた。
俺はその当時、適当にクラスの人とは会話はしながらも、一人でいるほうが多かった。

友達を作れないんじゃなくて、友達になりたいと思うやつがいなかった。
一人でいるとゆうのも好きなわけじゃない。
初めて宮野とまともに話したのは、あれだ。席が隣同士になった後、宮野が話しかけてきたやつだ。
「無理をすると体にわるいやん?私は関西弁いっさいなおさないねん。早坂は疲れたりしないんか」
「何を疲れるんだ?」
「あの低レベルのあんたの友達。」
俺は完全に噴いた。人の友達を低レベルと言ってのけたこの女を完全におもしれーと思った。
そして、彼女は俺のことを低レベルの中に入れてはいなかった。
別に自分の友達を低レベルと思ったことなどなかったが、彼女は完全に自分の思ったことを主張しきる才能の持ち主みたいだった。                                                                                                                
俺には無い部分だった。
そして俺が疲れていることを彼女はなぜか見切っていた。
「早坂も桜丘いかないか?」
唐突に宮野が言った。
まっすぐに見つめられて言われた。
「俺はまだ考えてないから・・」と言うしかなかった。
俺は転校を繰り返している。まともに高校生活が送れるのだろうか。

そして、俺は、最近鮮明になりつつある直感やら、予感やらなんやらで、この頃からすごく嫌な予感がしていたのだった。
普通にこのままの日常が続けばいいとおもっていた。
・・高校生。
そんなもの俺には遠いもののようにしか感じられなかったのだ・・。
「一緒にかえろーぜ!早坂!」
振り返りながら、キュートな笑みを見せ言う宮野に周りの男子がときめいた。・・はぁ、そして俺に皆の視線が向かう。
男子にもてるとゆうことに自覚のない宮野はにこにここちらを向いて満面の笑みを見せていた。
「・・行こうか・・。」
宮野を独占しているかのような雰囲気だが・・俺自身、その気があるわけではないだろうと思われているらしく、激しいリンチやらイジメやらにあったことは幸いなかった。ありがたい。
「帰り道、近くのアイスクリーム屋寄ろうよ。」
そして校則に違反な寄り道コースを言ってのけた。
なんというか、彼女はそうゆうことを隠すことをしない。
「もっと小声でいうことを覚えなさい・・・。」
と小声ぎみに言った。
後ろの席の谷山が
「いいなぁおまえらは・・デートか?」
とはやし立てる様に言ったので、いや違う。とりあえず否定しておいた。
アイスクリーム屋はこの近くじゃぁかなりの大きさの店舗だ。ついでにならんで雑貨屋、服屋などがあってかなりにぎわっている。
ここいらの中学生だけではなく高校生やらいろんな方々が寄り道として使う最高のスポットだった。
もちろん中学生はここでの寄り道は禁止されている。
まじめな生徒はお家に帰ってから来たりするものだが・・・まあ、そんなに真面目じゃなく授業中お絵かきしているような宮野&授業中外ばかりみている俺・・はしょっちゅう寄り道しているのである。
「そろそろ冬っぽくなったなぁ・・。」
外の景色は紅葉ももう過ぎて枯葉の舞い落ちる時期となっていた。
もうすぐ12月である。
「ほんまに寒くなってきたなー。もうすぐクリスマスだしねぇ。」
「クリスマス?いや早いだろ・・」
その前に、冬休み&通知表のことを考えるものだ、と思った。
・・一応、受験生だし学期末テストの事も考えてもいいはずだ。
「女子にとっては冬休みよりクリスマスのが楽しみなのかね・・。」
「そうゆうものなのよ。男にはわからないのだよ早坂君。」
まあ俺も普通にクリスマスやってこの町で年をこしたいのだが・・・。
「今日はラムレーズンかなー」
と俺はアイスクリーム屋の表示をみながら言った。
「私は抹茶で」
店員さんに宮野は頼んだ。
「俺はラムレーズンで」
俺も頼む。
お互い商品を持って白い丸テーブルの椅子に座った。
「ねえ。なんでそんなにクリスマスすきなの?」
俺がアイスを食べながら、聞いてみる。
「クリスマスになったらわかるかもよ?」
微笑みながら宮野は言う。
「今日は早めに帰ることにするよ。」
  ラムレーズンのアイスを食べ終わりカップをゴミ箱に捨てながら言った。
「そうだねぇ、早坂疲れてるって顔してるしね。」
  宮野もゴミを捨てに行きながらそう言った。
「そんな顔してる?」
俺は宮野の顔をまじまじみながら聴いてみた。
「うん、してる。」
躊躇も遠慮もせず、堂々と言い切った。
実は、学校からこの寄り道のコースを歩いている時から、誰かに付けられているのが解っていた。精神的に気を使いながら行動していたので疲れたのかもしれない。
そして、宮野とは別れて、家路に着く。

帰宅中、誰かに付けられながら家へ帰った。
相手が何もしてこないのでよかったが、ものすごい不安感に襲われた。
自宅まで帰るとストーカー野郎は消えていた。
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