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矢野鷹斗の場合

epilogue.02 独り言

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  ここは時間という概念がない場所。長い長い時の果て、悠久に彷徨う魂が行き着くところ。
  もっとも、先程の男性のように不時着する魂もあるので、それを探すのはちょっとした一苦労だ。

  私はここで迷える魂たちを導く役割をしている。

  さっきの男性は自分の記憶の中で後悔した日を繰り返しただけだ。実際は何も歴史は変わっていない。どの人間も、大抵はそれで満足して消えていく。それはあの男性も例外ではなかった。ただ、まあ・・・・・・ちょっと特別だったのは本当だ。あういうことは

  あの男性が交通事故で亡くなったのはただの偶然ではない。亡くなるべくして亡くなったのだ。私の上司、人間が作り出した神という存在が干渉した、と言えば良いだろうか。ともかく、あれは防げるものではなかったのだ。

  まったく、我が上司ながら適当なことをやってくれる。おかげで、私の仕事が増えたではないか。

  ・・・・・・しかしおかげで久々に良いものを見れた。人が作った言葉だが<奇跡> というものは本当にあるんだな。

  景色が、いわゆる教室というやつからまた別の風景に変わった。次はどんな人間が相手なのだろうか。しっかり景色があるところを見るに、ちゃんと記憶がある人間のようだ。

「あなた、自分の人生に後悔はありませんか?」
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