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シアンが日彩を連れてきた日の夜、ダスクはシアンの部屋にいた。午後十一時半過ぎ、日彩は既に別の部屋で眠っており、起きているのはダスクとシアンだけだ。シアンは寝巻き姿でベッドに腰掛けていて、寝る準備は万端のようだった。部屋の入り口付近に立ったまま、ダスクは話しかける。
「本当に日彩を預かるつもりなのか」
「もちろん」
淀みないシアンの答えに、ダスクはため息をつく。その様子を見て、シアンは言った。
「おまえは反対か」
「ああ」
そもそも、シアンは殺し屋で、自分は闇医者だ。犯罪者なのだ。子供を育てるには、ここは最もふさわしくない環境だと言っていい。
だいたいな、とダスクは続ける。
「おまえ、魚もこれだけ飼っておいて、その上人間の世話までしようってのか」
家の中にはいくつか水槽があり、色とりどりの魚達が泳いでいる。シアンは殺し屋以外の表の仕事として、ホームセンターのペットコーナーで働いており、観賞魚の飼育が趣味だった。
「魚は関係ない。世話だって全部俺がやってるだろ?」
「おまえは小さい生き物に優しすぎるきらいがある」殺し屋なのに。
シアンは胸を張る。
「いいことじゃないか」
ダスクは再びため息を吐く。シアンが小首を傾げた。
「おまえはなんで日彩を受け入れるのに反対なんだ?」
「それは……」
ダスクはうつむく。
「日彩の将来が心配だからだ」
本心からの言葉を出すと、胸の奥が居心地悪く疼いた。落ち着きなくシアンの机の上に目を遣る。案の定水槽が置いてあり、魚が泳いでいる。
「だから、日彩を俺と同じように、後ろ暗い道に進ませるのは御免なんだって」
ダスクが闇医師としてこの裏の世界に入ったのは、ほんの半年前のことだ。それまでは普通の人間として、国立大学の医学部に通っていた。それなりに成功した人生だと思っていた。それが何の因果か、突然殺人の冤罪をかけられ、警察に終われ、どうしようもなくなったところでシアンと出逢った。こんな状況になってしまった以上、普通の生活や仕事はできない。シアンはダスクに闇医者の仕事を紹介してくれた。
しかし、半年が経った今でもまだ、犯罪が商売になっているこの世界や、犯罪の片棒を担ぐ自分自身を受け入れきれていない部分はあった。
「殺し屋の俺や、闇医者のおまえが日彩を育てたら、日彩も同じようになってしまうんじゃないか、と」
シアンがダスクの思っていることを代弁する。
「そうだ」
ダスクが答えると、沈黙が訪れる。
同じように犯罪者になる、とまでは言わなくても、将来に何か悪い影響を及ぼすのではないか、影を落としてしまうのではないか。そんな疑念が拭えない。
先に口を開いたのは、シアンだった。
「おまえに何も言わず、突然日彩を連れてきたのは悪かったし、おまえの言うこともわかる」
「じゃあ……」
「でも」シアンはダスクを遮って言う。
「日彩は昔の俺に似てるんだ」
思いがけない言葉に、ダスクは聞き返す。
「昔のシアンに?」
シアンはうなずいた。
「本当に日彩を預かるつもりなのか」
「もちろん」
淀みないシアンの答えに、ダスクはため息をつく。その様子を見て、シアンは言った。
「おまえは反対か」
「ああ」
そもそも、シアンは殺し屋で、自分は闇医者だ。犯罪者なのだ。子供を育てるには、ここは最もふさわしくない環境だと言っていい。
だいたいな、とダスクは続ける。
「おまえ、魚もこれだけ飼っておいて、その上人間の世話までしようってのか」
家の中にはいくつか水槽があり、色とりどりの魚達が泳いでいる。シアンは殺し屋以外の表の仕事として、ホームセンターのペットコーナーで働いており、観賞魚の飼育が趣味だった。
「魚は関係ない。世話だって全部俺がやってるだろ?」
「おまえは小さい生き物に優しすぎるきらいがある」殺し屋なのに。
シアンは胸を張る。
「いいことじゃないか」
ダスクは再びため息を吐く。シアンが小首を傾げた。
「おまえはなんで日彩を受け入れるのに反対なんだ?」
「それは……」
ダスクはうつむく。
「日彩の将来が心配だからだ」
本心からの言葉を出すと、胸の奥が居心地悪く疼いた。落ち着きなくシアンの机の上に目を遣る。案の定水槽が置いてあり、魚が泳いでいる。
「だから、日彩を俺と同じように、後ろ暗い道に進ませるのは御免なんだって」
ダスクが闇医師としてこの裏の世界に入ったのは、ほんの半年前のことだ。それまでは普通の人間として、国立大学の医学部に通っていた。それなりに成功した人生だと思っていた。それが何の因果か、突然殺人の冤罪をかけられ、警察に終われ、どうしようもなくなったところでシアンと出逢った。こんな状況になってしまった以上、普通の生活や仕事はできない。シアンはダスクに闇医者の仕事を紹介してくれた。
しかし、半年が経った今でもまだ、犯罪が商売になっているこの世界や、犯罪の片棒を担ぐ自分自身を受け入れきれていない部分はあった。
「殺し屋の俺や、闇医者のおまえが日彩を育てたら、日彩も同じようになってしまうんじゃないか、と」
シアンがダスクの思っていることを代弁する。
「そうだ」
ダスクが答えると、沈黙が訪れる。
同じように犯罪者になる、とまでは言わなくても、将来に何か悪い影響を及ぼすのではないか、影を落としてしまうのではないか。そんな疑念が拭えない。
先に口を開いたのは、シアンだった。
「おまえに何も言わず、突然日彩を連れてきたのは悪かったし、おまえの言うこともわかる」
「じゃあ……」
「でも」シアンはダスクを遮って言う。
「日彩は昔の俺に似てるんだ」
思いがけない言葉に、ダスクは聞き返す。
「昔のシアンに?」
シアンはうなずいた。
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