同居人の殺し屋が、子供を拾ってきました。【完結】

月兎耳

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 日彩は昔の自分に似ているのだ、というシアンの言葉に、ダスクはシアンを見つめる。シアンは目を伏せた。

「俺も昔、日彩と同じように路上で暮らしてたんだ」

 ダスクは驚く。今まで半年程一緒に暮らして来たが、シアンの過去について聞くのはこれが初めてだ。

「シアンが?」

「そうだ。俺が路上に出たのは、ほんの十歳くらいの頃だ」

 十歳と言えば、日彩より二、三歳くらい年下だ。

「俺の父親はいつも酔っ払って、俺や兄妹に暴力を振るってた。母親はそんな父親が嫌だったんだろうな。ずっと外を出歩いてばかりで、夜になってもほとんど帰って来なかった。
 食べる物もろくになくて、俺はよく万引きしてたな。見つかったらこっぴどく叩かれるんだが、そうするしかなかった。
 それでも俺は、家を出て行くつもりはなかったんだ。そりゃ、まだ幼過ぎるってこともあったが、一番は妹がいたからだ。五歳年の離れた妹は俺によく懐いていて、それは可愛かったよ。俺は状態の良い食糧は妹に回したし、妹を庇って殴られるなら、別に苦じゃなかった。でも、」

 そこでシアンは顔を歪めた。

「ある日、俺が学校から帰って来たら、妹は死んでた。青痣だらけで輪郭がわからないくらいに腫れた顔を見たら、わかった。あいつ、父親にやられたんだ。その日は虫の居所が悪かったのか、いつもより酔いが回っていたのか、とにかくあいつが殺したんだ」

 激しい口調で言うシアン。何を言っても言葉が薄っぺらく蒸発していくような気がして、ダスクは返事をすることができない。シアンは自身を落ち着けるように、一度深呼吸をした。

「だから、俺は父親を殺した。台所にあった果物ナイフで、腹を刺したんだ。あんなに憎かった父親が呆気なく倒れる姿は、痛快だったな。
 でも、妹の仇なんてヒロイズムを気取っちゃいるが、俺はただの人殺しだ。妹を殺した父親と同じだ。耐えられなくなって、俺は逃げ出した。ただの馬鹿だ」

 シアンはダスクに向けて、自嘲気味の笑顔を見せる。

「まあ、そんなわけで俺は路上に出たんだが、元々一人殺していたし、そこで出会った大人達の影響もあって、殺し屋になった」

 だから、とシアンは続ける。

「同じように路上生活をしてる日彩に、俺みたいになって欲しくなくて、連れてきたんだ。他の奴の手にかかって、日彩が犯罪者になっちまう前に」

「そんな……」

 言葉を継げないダスクに、シアンはその通り名の元となった、シアンブルーの瞳を向ける。

「でも、おまえの言うように、俺達よりも児童養護施設とか他の場所に預けた方が良いかもしれないって意見もわかる。だからダスク、おまえが決めていい。日彩をここで育てるか、別の施設に預けるか。まあもちろん、本人の希望があるならそれに従うべきだが、それがないなら、な」

「ゆっくりでいいから」と言ったシアンの目は、限りなく優しかった。
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