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第6話 森の建物
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駅舎に一人残っていたアイルが動いたのは、馭者に声をかけられたからだった。朝一番にやってきたと思っていたら、誰もいないはずの駅舎に勇者が一人で座っていたので驚いていた。
「どうされたんです勇者様? まさかお待ちになられていたのですか?」
馭者がそう訊ねると、アイルは苦笑いしながら首を振った。
「いや、大丈夫だ。俺もついさっききたところだよ。さっそくだが馬車を出してもらえないか」
「もちろんです。勇者様のご依頼とあらばどこへでもいかせていただきます」
「ありがとう。少しわかりにくい場所だから、隣に座って俺が案内しよう」
「へえ、かしこまりました」
駅舎を出発した馬車は、初め路なりに進んでいたが、途中から路を脇に外れて森の中を進んでいった。
「……何だか不気味な場所ですね。勇者様はいったいこんな場所にどのようなご用事が?」
「うん。実はここだけの話なんだが、旅の途中で見つけたお宝をそのままにしてあるんだ」
「えっ!? 本当ですか!?」
「ああ。いまからそれを取りにいくところなのさ。お前にも少し分けてやろう」
アイルがいうと、馭者は首をぶんぶん振った。
「滅相もない! それは勇者様御一行のものですよ」
「固いこというなって。たくさんあるんだから」
「しかし……」
そのとき、アイルが手を上げ、馬車を止めさせた。森の小径の先に塔のような建物が見えてきた。
「あの中にお宝があるんだ。ただ、魔物が巣食っているかもしれない」
「どうしましょう? 戦うのですか?」
「無論だ。ただそれほど心配することはない。というのも、俺が魔王を倒したことによって魔物たちはかなり弱っているはずだからな」
馭者はそれを聞いて、ふっと首を傾げた。
「なるほど、そうですか……」
「どうかしたか?」
「いえ……どうも細かいことが気になる性分ですみません……噂では、戦士イッチ様が魔王にとどめを刺したとかいわれておりますので……」
アイルは馭者の顔を見た。
「もうそんな噂になってるのか? まったく衛兵の口の軽さには呆れるな」
「一方で、勇者様がとどめを刺したという話もございますので、どちらが本当なのかと……」
「酒場のネタにはもってこいの噂話だな。好きにするといい」
馭者台から飛び降りるアイル。
「いいか? 俺が合図するまでここにじっとしているんだ。さっと倒してこよう」
「は、はい」
アイルは大剣を両手で構え持ち、建物の入口へ走っていった。しばらくすると、「おーい!」という声とともにアイルが姿を現した。
「魔物はすっかり倒した! 馬車をここに付けてくれ! 宝箱を載せて運ぶぞ!」
「わかりましたっ!」
馭者は期待に胸をワクワクさせながら馬を走らせた。口では断っていたが、内心ではやはりお宝が欲しかった。金貨か宝石か、あるいはもっと価値のある何かか……馭者で稼げる金など、たかが知れている。妻や子供たちのためにも、勇者様からのご褒美は有難く受け取っておこう……。
馬車を建物に横付けすると、馭者は地面に飛び降りた。
「こっちだ。ここまで運んできた。一緒に運んで載せよう」
入口の陰からアイルが手招きする。
「へい!」
馭者が建物の中に足を踏み入れると、すぐそこに埃の被った宝箱が見えた。
「これですね?」
「そうだ。反対側を持ってくれ」
「了解です!」
馭者は腰を落とし、慎重に宝箱の底に手をかけようとした。
「……あれっ?」
妙に軽い。箱の重さほどしか感じられない。
「勇者様、これは……」
馭者が顔を上げるのと同時に大剣が振り下ろされ、首が落とされた。
「どうされたんです勇者様? まさかお待ちになられていたのですか?」
馭者がそう訊ねると、アイルは苦笑いしながら首を振った。
「いや、大丈夫だ。俺もついさっききたところだよ。さっそくだが馬車を出してもらえないか」
「もちろんです。勇者様のご依頼とあらばどこへでもいかせていただきます」
「ありがとう。少しわかりにくい場所だから、隣に座って俺が案内しよう」
「へえ、かしこまりました」
駅舎を出発した馬車は、初め路なりに進んでいたが、途中から路を脇に外れて森の中を進んでいった。
「……何だか不気味な場所ですね。勇者様はいったいこんな場所にどのようなご用事が?」
「うん。実はここだけの話なんだが、旅の途中で見つけたお宝をそのままにしてあるんだ」
「えっ!? 本当ですか!?」
「ああ。いまからそれを取りにいくところなのさ。お前にも少し分けてやろう」
アイルがいうと、馭者は首をぶんぶん振った。
「滅相もない! それは勇者様御一行のものですよ」
「固いこというなって。たくさんあるんだから」
「しかし……」
そのとき、アイルが手を上げ、馬車を止めさせた。森の小径の先に塔のような建物が見えてきた。
「あの中にお宝があるんだ。ただ、魔物が巣食っているかもしれない」
「どうしましょう? 戦うのですか?」
「無論だ。ただそれほど心配することはない。というのも、俺が魔王を倒したことによって魔物たちはかなり弱っているはずだからな」
馭者はそれを聞いて、ふっと首を傾げた。
「なるほど、そうですか……」
「どうかしたか?」
「いえ……どうも細かいことが気になる性分ですみません……噂では、戦士イッチ様が魔王にとどめを刺したとかいわれておりますので……」
アイルは馭者の顔を見た。
「もうそんな噂になってるのか? まったく衛兵の口の軽さには呆れるな」
「一方で、勇者様がとどめを刺したという話もございますので、どちらが本当なのかと……」
「酒場のネタにはもってこいの噂話だな。好きにするといい」
馭者台から飛び降りるアイル。
「いいか? 俺が合図するまでここにじっとしているんだ。さっと倒してこよう」
「は、はい」
アイルは大剣を両手で構え持ち、建物の入口へ走っていった。しばらくすると、「おーい!」という声とともにアイルが姿を現した。
「魔物はすっかり倒した! 馬車をここに付けてくれ! 宝箱を載せて運ぶぞ!」
「わかりましたっ!」
馭者は期待に胸をワクワクさせながら馬を走らせた。口では断っていたが、内心ではやはりお宝が欲しかった。金貨か宝石か、あるいはもっと価値のある何かか……馭者で稼げる金など、たかが知れている。妻や子供たちのためにも、勇者様からのご褒美は有難く受け取っておこう……。
馬車を建物に横付けすると、馭者は地面に飛び降りた。
「こっちだ。ここまで運んできた。一緒に運んで載せよう」
入口の陰からアイルが手招きする。
「へい!」
馭者が建物の中に足を踏み入れると、すぐそこに埃の被った宝箱が見えた。
「これですね?」
「そうだ。反対側を持ってくれ」
「了解です!」
馭者は腰を落とし、慎重に宝箱の底に手をかけようとした。
「……あれっ?」
妙に軽い。箱の重さほどしか感じられない。
「勇者様、これは……」
馭者が顔を上げるのと同時に大剣が振り下ろされ、首が落とされた。
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