2 / 11
2.魅了の力の、婚活に適した使い方
しおりを挟む夜会は、面倒な挨拶も一通り終わり、あちこちで人の輪が出来ていた。
サラフィナも同性の友人たちと話に花を咲かせている。
「ねえ、サラフィナ、あちらの殿方たちがあなたを見ていてよ」
「ダンスにくらい応じて差し上げればいいのに」
気楽に付き合える友人たちはそんな風を言うが、サラフィナは自他共に認めるロマンチストである。
「この力に影響されている方には恋愛感情を抱けないと思うわ」
「なんてもったいない。でも、中には魔力の低い方がいてよ。そんな方なら力の影響を受けにくいのでしょう?」
「ええ。たぶん……」
サラフィナは曖昧にしか答えられない。
伯爵家で雇っている平民出身の使用人の中には、魔力をほとんど持たない者もいて、その人たちはサラフィナの実験に協力してくれる。
そういった人たちは、意識して魅了の力を使っても反応しない場合が多い。
ところがややこしいことに、魔力がほとんどなくても、この力に影響される者も一定数は存在する。
自分で調べてみても訳が分からなすぎて、ため息しか出ない。
この力は、使い方によっては非常に危険な、もしくは国にとって有益なものなので、その力についての詳しい情報は秘匿されている。
だからといって、国に助けを求めようと思ったことはない。
国からは昔からサラフィナの魅了の力を見込んで、他国へ嫁いで故国の国益になるように行動をする道もあると、断ることの出来る範囲で勧誘されていて、実際に何度も断っている。
そんな政略結婚や間者のような真似はしたくない。だから、国には関わりたくない。
サラフィナがそんなことを考えていると、友人が肩に触れた。
前を見ると、貴公子たちが、こちらの女性たちの輪の方に向かって来ていた。
いつものように友人たちが言った。
「サラフィナ、私は一番右の方がいいわ」
「私は真ん中の方」
「あら、取られてしまったわ。では、私は左の方ね。まあ悪くはないわ」
「了解」
サラフィナと友人たちは、貴公子たちを微笑みをたたえて迎える。
彼らは明らかにサラフィナに対して話しかけてくる。
しかし、サラフィナが手の甲に口づけを受けて肌が触れ合っている時に、微笑みながら友人を紹介すると、彼らはその友人をダンスに誘って去って行く。
サラフィナは魅了の力を使って、人の感情を少しばかり動かすことが出来るからだ。
素肌で触れながら微笑みかける必要があるものの、ダンスに誘う前には男性側は手袋を取っているものだから、サラフィナもそうしておけば上手くいく。
もしそれで操れない人がいたとしたら、魅了の力が効かない人だと分かるわけだから、サラフィナはそのダンスの誘いを受ければいい。
こうしていれば、魅了の力に左右されずに自分自身を見てくれる、理想の結婚相手が見つかる可能性がある。
友人たちは出会いの機会を得られるし、サラフィナは恋愛対象とならない人物から言い寄られるのを避けることが出来る。
この方法を思いついた時には友人たちと手を握り合ったものだった。完全に利益が一致していた。
でも、この日も、そんな理想の相手かもしれない殿方には出会えないようだった。
サラフィナは友人たち全員がお相手の貴公子たちとダンスの輪の中に入るのを見届けると、さっさとその場所から逃げ出した。
5
あなたにおすすめの小説
「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」
みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。
というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。
なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。
そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。
何か裏がある――
相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。
でも、非力なリコリスには何も手段がない。
しかし、そんな彼女にも救いの手が……?
「君は地味な裏方だ」と愛人を優遇するサイコパス気質の夫。〜私が去った後、商会の技術が全て私の手によるものだと気づいても、もう手遅れです〜
水上
恋愛
「君は地味だから裏方に徹しろ」
効率主義のサイコパス気質な夫は、妻であるクララの磨いた硝子を愛人の手柄にし、クララを工房に幽閉した。
彼女は感情を捨て、機械のように振る舞う。
だが、クララの成果を奪い取り、夫が愛人を壇上に上げた夜、クララの心は完全に凍りついた。
彼に残した書き置きは一通のみ。
クララが去った後、商会の製品はただの石ころに戻り、夫の計算は音を立てて狂い始める。
これは、深い絶望と、遅すぎた後悔の物語。
魔女の祝福
あきづきみなと
恋愛
王子は婚約式に臨んで高揚していた。
長く婚約を結んでいた、鼻持ちならない公爵令嬢を婚約破棄で追い出して迎えた、可憐で愛らしい新しい婚約者を披露する、その喜びに満ち、輝ける将来を確信して。
予約投稿で5/12完結します
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
カリスタは王命を受け入れる
真朱マロ
恋愛
第三王子の不始末で、馬に変えられた騎士との婚姻を命じられた公爵令嬢カリスタは、それを受け入れるのだった。
やがて真実の愛へと変わっていく二人の、はじまりの物語。
別サイトにも重複登校中
親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
「10歳の頃の想いなど熱病と同じ」と婚約者は言いました──さようなら【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王太子フリードリヒの婚約者として、幼い頃から王妃教育を受けてきたアメリア・エレファウント公爵令嬢。
誰もが羨む未来を約束された彼女の世界は、ある日突然、ひとりの少女の登場によって揺らぎ始める。
無邪気な笑顔で距離を(意図的に)間違える編入生ベルティーユは、男爵の庶子で平民出身。
ベルティーユに出会ってから、悪い方へ変わっていくフリードリヒ。
「ベルが可哀想だろ」「たかがダンスくらい」と話が通じない。
アメリアの積み上げてきた7年の努力と誇りが崩れていく。
そしてフリードリヒを見限り、婚約解消を口にするが話は進まず、学園の卒業パーティーで断罪されてしまう……?!
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています
『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』
鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」
幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された
公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。
その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、
彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。
目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。
だが、中身は何ひとつ変わっていない。
にもかかわらず、
かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、
「やり直したい」とすり寄ってくる。
「見かけが変わっても、中身は同じです。
それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」
静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。
やがて彼女に興味を示したのは、
隣国ノルディアの王太子エドワルド。
彼が見ていたのは、美貌ではなく――
対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。
これは、
外見で価値を決められた令嬢が、
「選ばれる人生」をやめ、
自分の意思で未来を選び直す物語。
静かなざまぁと、
対等な関係から始まる大人の恋。
そして――
自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる