2 / 4
2話
しおりを挟む「おまえ、ほんとにいいのか?こんなおじさん相手で」
「ええ?なに今更?それが童貞捨てるために夢魔を呼び出したおじさんの言うこと?」
無駄に広いベッドの上に、オリバーの白い裸体を横たわらせる。クスクスと耳障りのいい笑い方をしながら唇を奪ってくる無邪気な悪魔に、既に愛着が湧いてきていた。情が移ったら困るので、さっさと済ませたい。
「夢魔は人間の美醜にはあんまり興味ないんだよ。欲しいのは精気だから、敢えて言うなら性欲が強いほうが好まれるかな。でも俺は、量より質が高いほうが好き。そういう意味だとヒラサカさんはかなりタイプだけどね。こんな濃い精気なかなかないよ♡」
「そりゃ、どーも……」
とりあえず、褒められているらしいということは分かった。性欲が強くて濃い?字面はただのこじらせた童貞にしか見えない。余計なお世話だ。オリバーは相変わらず、ずっとキスを仕掛けてくる。時折、口を開いて俺の舌を招き入れ、その誘いに乗るように深く侵入すると、満足したようにうっとりと目を細めた。夢魔のくせにキスが好きなんて、まるで人間みたいなやつだ。
「はぁ……♡んっ、む♡……はっ♡ヒラサカさん、キス上手になってきたね……♡」
なんだそりゃ。キスに上手いも下手もあるのか。あんまり知りたくなかった評価科目だ。今までのキスはおままごとだったらしい。悔しい。どこで学べるのか教えて欲しい。ちょっとカチンと来てしまったので、称えられた言葉に追従するように、息も出来なくなるほど長く唇を塞いだ。唾液を流し込んで、逃げようとするオリバーの舌を絡めて捕まえる。涙目になった夢魔が見えたが、お構いなしに俺の息が尽きるまで続けた。
「はー♡はぁー……♡はぁ……♡」
ようやく解放してあげると、オリバーの目はとろんとして息遣いも荒かった。呼吸がままならなかったせいか顔が真っ赤になっていて、口を開いたまま戻すことが出来ないでいる。舌を仕舞い忘れた猫のようだ、と思った。
「唾液だけで、こんなに濃いの?」
「んん?」
「中に出されたら、俺、気失っちゃうかも……♡」
中に出す。ナカニダス。ああ、企画でよくあるやつね。あれ疑似精子が多いんだって、知ってた?そりゃそうか、避妊も百パーセントじゃないしな。妊娠したら困るもんな。ああ、でもオリバーは男だから中に出しても問題ないな。なんだそっか。いやいや。……え?生ハメで中出し?童貞には刺激が強すぎるワード第一位だぞ、それ。
現実とかけ離れた存在が、あたかもそれが当然であるように、俺を営みへ誘う。ほんの数時間前まで空想だと思っていた出来事が、手を伸ばせば届く距離にあった。
じわり、と額に汗がにじむ。熱い。まるでサウナみたいだ。青白いオリバーの身体も熱くて、熱を逃がそうとシャツを全て脱いだ。剥き出しの裸体に、オリバーがぴたりと密着する。若い男の肌は水分を十分に含んでいて、離れまいと吸い付いてきた。気持ちいい。他人と肌を寄せ合うことが、こんなにも心地良いなんて。情欲に濡れた瞳が、俺の目を射抜く。ああ、これからこの身体を蹂躙するのだと思うと、心臓が爆発しそうなほど早鐘を打った。
「ヒラサカさん、心臓ドキドキいってる」
「えっ、あ」
「可愛い」
おまえのほうが可愛いよ、とは、言わないでおいた。
オリバーが俺の手を取り、人差し指を口に含んだ。口内は思ったよりずっと熱くて、溶けてしまいそうだ。
ちゅっちゅっと小さく吸って、口の中で舌が俺の指先を舐め回す。ちゅぱっ♡と音を立てながら指を離すと、今度は二本の指を、口を大きく開けて捕食するようにまた咥えた。やたら上目遣いで俺の様子を伺っているな、と思っていると、ようやく指をフェラしているのだと気付いた。エッッッッロ……なんだそのテクは。おじさん、初めて知ったよ。窄めている唇に突き立てている指を、まるでペニスのように出し入れすると、オリバーは「んっ♡んっ♡」とエロい声を上げながら受け入れた。うわ、エロすぎ。あとでフェラして貰おう。
オリバーの唾液にまみれた俺の指を、オリバーが自分の下肢へ導く。シミも皺も何一つ綻びのない真っ白な脚が、ゆっくりと開かれていった。中心には緩く勃ち上がった可愛らしいペニスがふるふると震えており、先端は先走りの透明な蜜が滲んで、太腿へ伝っていく。オリバーは身体をやや後ろに倒し、膝を曲げて充血した性器を見せつけてきた。ただの排泄器でしかないその淫裂は、期待に震えるようにヒクついて扇情的だ。毛なんか一本もない。なんだこれ、マジでケツの穴か?こんな綺麗な穴があるのか?人間じゃねえよ。あ、人間じゃなかった。
俺の腕を引いて、潤ったままの指を入り口へ宛がう。オリバーはそれ以上、自分から先に進もうとはしなかった。瞬きもせず、俺の目をじっと見ている。おそらく、俺にやれと言っているのだ。
「んっ……♡」
ご期待に応えて、人差し指をぐぷ…♡と潜り込ませる。固くもなく、かといって女性器のように柔らかくもない肉壁は、抵抗しながらも侵入者を奥へ導いていった。
「あっ♡あっ、すご……♡」
「いっ……!ちょ、ちょっ……いたたっ」
オリバーが力を入れたせいか、きゅーっと中が締まった。これが締め付けってやつか。確かにここにチンポ入れたらめちゃくちゃ気持ちよさそうだ。……うっ、ちょっとイキそうになった。やばい。
「おまえほんとにこれケツの穴か?膣みたいになってんじゃん」
「んっ……♡夢魔は精気を食うんだけど、上の口より下の口から摂取したほうが強力な魔力になるんだ」
「し、下の口?」
「だから夢魔は、インキュバスよりサキュバスのほうが強いんだよ。基本的にインキュバスは女相手だから、経口摂取しか出来ない。俺みたいに男に呼び出されるインキュバスも、女に呼び出されるサキュバスもいるけど、大体は異性を呼び出そうとするから……夢魔としてのプライドを持ってるやつが多いせいで、呼び出しに応じないことが多いんだけどね。インキュバスは女を孕ませるために、サキュバスは男の精子を求めて存在してるから」
なんかよく分かんないけど、キスよりセックスで中出しされたほうが強いってことか?意味が分からない。本当に現代の話だろうか。いや、こいつは悪魔なのだけれど。
「ヒラサカさんが俺を呼び出してくれてよかった……こんなに質の良い精気、ぜったい他のやつにやりたくない♡」
「……っ、」
艶めかしい目をしたオリバーと目が合ってしまい、ごくり、と喉が鳴った。俺の指を飲み込んだ肉穴は、未だにきゅうきゅうと締め付けている。俺はもうとにかくこの穴に早くブチ込みたくて仕方なかった。血走った目をしていたと思う。オリバーの鈴のような声が響いて、「動いて……♡」と急かしてきたので、一心不乱に指で淫穴を犯した。
「あっ♡あんっしゅごいっ♡ちんぽみたいっ♡乱暴っ♡童貞の加減を知らない指マン気持ちいいよぉっ♡エッチなビデオで培った知識だけの愛撫きもちいいっ♡」
「……あん?」
後半は暴言だと思うんだが。どこからそんな情報を仕入れてくるんだ、この悪魔は。俺の初体験は、自分がリードして相手をあんあん♡言わせるのが理想だったんだが、この、なんというか、喘いで貰ってる感がすごい。固く閉ざされていた蕾は、解してやることによって柔和に変化していった。入り口の肉襞がぷっくりと膨らんで、まるで女性器そのものだと思った。
「いいよ……♡挿れたいんでしょ……♡」
「んおぅっ!だ、だから急に触るんじゃない!」
さわさわ、と亀頭を撫でられ、ちょっとだけピュッと精子が出た。本当にちょっとだけ。ぐねぐねと生き物のように吸い付いてくる肉の壁から指を引き抜くと、名残惜しそうにオリバーが「ぁん…♡」と悩ましい声を上げる。若い男の声だというのに、あざとそうなそんな声にも、愚息は反応してまた固くなってしまった。そしてそれは、オリバーにも筒抜けである。くぱ、くぱ、と開閉を繰り返す、女性器でしかないその穴を、オリバーの細い指が広げる。充血した媚肉が丸見えになっていて、呼吸に合わせてヒクヒクとしていた。
何度目かの生唾を飲み込んだ。
「おいで」
りん、と、鈴の音が鳴った気がした。
...
10
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる