四十歳目前で童貞は流石にまずいので悪魔を召喚して卒業したいと思います

糸巻真紀

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2話

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「おまえ、ほんとにいいのか?こんなおじさん相手で」
「ええ?なに今更?それが童貞捨てるために夢魔を呼び出したおじさんの言うこと?」

 無駄に広いベッドの上に、オリバーの白い裸体を横たわらせる。クスクスと耳障りのいい笑い方をしながら唇を奪ってくる無邪気な悪魔に、既に愛着が湧いてきていた。情が移ったら困るので、さっさと済ませたい。

「夢魔は人間の美醜にはあんまり興味ないんだよ。欲しいのは精気だから、敢えて言うなら性欲が強いほうが好まれるかな。でも俺は、量より質が高いほうが好き。そういう意味だとヒラサカさんはかなりタイプだけどね。こんな濃い精気なかなかないよ♡」
「そりゃ、どーも……」

 とりあえず、褒められているらしいということは分かった。性欲が強くて濃い?字面はただのこじらせた童貞にしか見えない。余計なお世話だ。オリバーは相変わらず、ずっとキスを仕掛けてくる。時折、口を開いて俺の舌を招き入れ、その誘いに乗るように深く侵入すると、満足したようにうっとりと目を細めた。夢魔のくせにキスが好きなんて、まるで人間みたいなやつだ。

「はぁ……♡んっ、む♡……はっ♡ヒラサカさん、キス上手になってきたね……♡」

 なんだそりゃ。キスに上手いも下手もあるのか。あんまり知りたくなかった評価科目だ。今までのキスはおままごとだったらしい。悔しい。どこで学べるのか教えて欲しい。ちょっとカチンと来てしまったので、称えられた言葉に追従するように、息も出来なくなるほど長く唇を塞いだ。唾液を流し込んで、逃げようとするオリバーの舌を絡めて捕まえる。涙目になった夢魔が見えたが、お構いなしに俺の息が尽きるまで続けた。

「はー♡はぁー……♡はぁ……♡」

 ようやく解放してあげると、オリバーの目はとろんとして息遣いも荒かった。呼吸がままならなかったせいか顔が真っ赤になっていて、口を開いたまま戻すことが出来ないでいる。舌を仕舞い忘れた猫のようだ、と思った。

「唾液だけで、こんなに濃いの?」
「んん?」
「中に出されたら、俺、気失っちゃうかも……♡」

 中に出す。ナカニダス。ああ、企画でよくあるやつね。あれ疑似精子が多いんだって、知ってた?そりゃそうか、避妊も百パーセントじゃないしな。妊娠したら困るもんな。ああ、でもオリバーは男だから中に出しても問題ないな。なんだそっか。いやいや。……え?生ハメで中出し?童貞には刺激が強すぎるワード第一位だぞ、それ。

 現実とかけ離れた存在が、あたかもそれが当然であるように、俺を営みへ誘う。ほんの数時間前まで空想だと思っていた出来事が、手を伸ばせば届く距離にあった。

 じわり、と額に汗がにじむ。熱い。まるでサウナみたいだ。青白いオリバーの身体も熱くて、熱を逃がそうとシャツを全て脱いだ。剥き出しの裸体に、オリバーがぴたりと密着する。若い男の肌は水分を十分に含んでいて、離れまいと吸い付いてきた。気持ちいい。他人と肌を寄せ合うことが、こんなにも心地良いなんて。情欲に濡れた瞳が、俺の目を射抜く。ああ、これからこの身体を蹂躙するのだと思うと、心臓が爆発しそうなほど早鐘を打った。


「ヒラサカさん、心臓ドキドキいってる」
「えっ、あ」
「可愛い」

 おまえのほうが可愛いよ、とは、言わないでおいた。

 オリバーが俺の手を取り、人差し指を口に含んだ。口内は思ったよりずっと熱くて、溶けてしまいそうだ。
ちゅっちゅっと小さく吸って、口の中で舌が俺の指先を舐め回す。ちゅぱっ♡と音を立てながら指を離すと、今度は二本の指を、口を大きく開けて捕食するようにまた咥えた。やたら上目遣いで俺の様子を伺っているな、と思っていると、ようやく指をフェラしているのだと気付いた。エッッッッロ……なんだそのテクは。おじさん、初めて知ったよ。窄めている唇に突き立てている指を、まるでペニスのように出し入れすると、オリバーは「んっ♡んっ♡」とエロい声を上げながら受け入れた。うわ、エロすぎ。あとでフェラして貰おう。
 オリバーの唾液にまみれた俺の指を、オリバーが自分の下肢へ導く。シミも皺も何一つ綻びのない真っ白な脚が、ゆっくりと開かれていった。中心には緩く勃ち上がった可愛らしいペニスがふるふると震えており、先端は先走りの透明な蜜が滲んで、太腿へ伝っていく。オリバーは身体をやや後ろに倒し、膝を曲げて充血した性器を見せつけてきた。ただの排泄器でしかないその淫裂は、期待に震えるようにヒクついて扇情的だ。毛なんか一本もない。なんだこれ、マジでケツの穴か?こんな綺麗な穴があるのか?人間じゃねえよ。あ、人間じゃなかった。
 俺の腕を引いて、潤ったままの指を入り口へ宛がう。オリバーはそれ以上、自分から先に進もうとはしなかった。瞬きもせず、俺の目をじっと見ている。おそらく、俺にやれと言っているのだ。

「んっ……♡」

 ご期待に応えて、人差し指をぐぷ…♡と潜り込ませる。固くもなく、かといって女性器のように柔らかくもない肉壁は、抵抗しながらも侵入者を奥へ導いていった。

「あっ♡あっ、すご……♡」
「いっ……!ちょ、ちょっ……いたたっ」

 オリバーが力を入れたせいか、きゅーっと中が締まった。これが締め付けってやつか。確かにここにチンポ入れたらめちゃくちゃ気持ちよさそうだ。……うっ、ちょっとイキそうになった。やばい。

「おまえほんとにこれケツの穴か?膣みたいになってんじゃん」
「んっ……♡夢魔は精気を食うんだけど、上の口より下の口から摂取したほうが強力な魔力になるんだ」
「し、下の口?」
「だから夢魔は、インキュバスよりサキュバスのほうが強いんだよ。基本的にインキュバスは女相手だから、経口摂取しか出来ない。俺みたいに男に呼び出されるインキュバスも、女に呼び出されるサキュバスもいるけど、大体は異性を呼び出そうとするから……夢魔としてのプライドを持ってるやつが多いせいで、呼び出しに応じないことが多いんだけどね。インキュバスは女を孕ませるために、サキュバスは男の精子を求めて存在してるから」

 なんかよく分かんないけど、キスよりセックスで中出しされたほうが強いってことか?意味が分からない。本当に現代の話だろうか。いや、こいつは悪魔なのだけれど。

「ヒラサカさんが俺を呼び出してくれてよかった……こんなに質の良い精気、ぜったい他のやつにやりたくない♡」
「……っ、」

 艶めかしい目をしたオリバーと目が合ってしまい、ごくり、と喉が鳴った。俺の指を飲み込んだ肉穴は、未だにきゅうきゅうと締め付けている。俺はもうとにかくこの穴に早くブチ込みたくて仕方なかった。血走った目をしていたと思う。オリバーの鈴のような声が響いて、「動いて……♡」と急かしてきたので、一心不乱に指で淫穴を犯した。

「あっ♡あんっしゅごいっ♡ちんぽみたいっ♡乱暴っ♡童貞の加減を知らない指マン気持ちいいよぉっ♡エッチなビデオで培った知識だけの愛撫きもちいいっ♡」
「……あん?」

 後半は暴言だと思うんだが。どこからそんな情報を仕入れてくるんだ、この悪魔は。俺の初体験は、自分がリードして相手をあんあん♡言わせるのが理想だったんだが、この、なんというか、喘いで貰ってる感がすごい。固く閉ざされていた蕾は、解してやることによって柔和に変化していった。入り口の肉襞がぷっくりと膨らんで、まるで女性器そのものだと思った。

「いいよ……♡挿れたいんでしょ……♡」
「んおぅっ!だ、だから急に触るんじゃない!」

 さわさわ、と亀頭を撫でられ、ちょっとだけピュッと精子が出た。本当にちょっとだけ。ぐねぐねと生き物のように吸い付いてくる肉の壁から指を引き抜くと、名残惜しそうにオリバーが「ぁん…♡」と悩ましい声を上げる。若い男の声だというのに、あざとそうなそんな声にも、愚息は反応してまた固くなってしまった。そしてそれは、オリバーにも筒抜けである。くぱ、くぱ、と開閉を繰り返す、女性器でしかないその穴を、オリバーの細い指が広げる。充血した媚肉が丸見えになっていて、呼吸に合わせてヒクヒクとしていた。
 何度目かの生唾を飲み込んだ。

「おいで」

 りん、と、鈴の音が鳴った気がした。



...
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