異世界転生興国記

青井群青

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強襲野盗拠点

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ヒロキはジープタイプの車両で山道を突き進む。山の下腹近辺まではベリル以下の衛兵達も同乗していたが今は降りてもらい別行動だった。ベリル達も初めは車に乗ることにおっかなびっくりだったが、すぐに慣れて便利さに感心していた。別行動の理由は装備が違いすぎるのと彼らは実戦の経験が無かった為だ。剣と槍と使えても魔法が少しなのでこちらに比べて損害を出す可能性が高かったので距離をとって後方で待機してもらう。彼らの役割は無力化した野盗を縄で縛り逮捕連行してもらう為だった。
 
 この役割について当初は血気盛んな者からは不満があったがこちらの装備の威力を実演で見てもらったところすぐに考えを改めてくれた。いくら体力や力に自信があっても100メートルからの遠距離から一方的に攻撃されたら堪らない。

 ヒロキは夜盗の拠点から200メートル手前で車を降りてここからは徒歩で近づくことにした。ヒロキ自身も対人の実戦は初めてではあったが前世で自衛隊の演習で基地防衛や警備の経験がある。更に基地に忍び込んでサボタージュや暴れまわる武装テロリスト役も演じたことがあるので緊張しない程度に自信はあった。病気に患う前は趣味でサバイバルゲームも頻繁に行っていた。演習でも弾薬庫爆破判定や自分諸共だが司令室爆破判定もやってのけていた。この類が得意な人間はどの部隊にもいたので防御側に回ると対処が困難なのだが今となっては良い思い出である。そんな過去を思い出しているうちに拠点の入口手前30メートルに到着した。一応見張りは二人立っていたが立っているだけだった。呑気に欠伸までしている。

 ヒロキは物音を立てないように注意して伏せ射ちの姿勢で慎重に照準を合わせる。今回持ってきた装備はアサルトライフルタイプの銃が一丁と拳銃一丁だった。弾は電撃弾だった。実弾と違って反動が無く発射音もしないのでとても便利だ。射程が少し短いのが欠点だが30メートルなら確実に当てられる。

 息を殺しながらゆっくり引き金を絞った。命中した見張りの一人目はゆっくりその場で崩れ落ちる。隣に立っていたもう一人も驚いた顔のまま同様に倒れた。念のため静かに近づいて生死を確かめたが外傷も無く痺れて気を失っているだけだった。

 ヒロキは確認を終えると中に進んだ。事前の情報では夜盗の拠点には粗末な小屋が三か所ある。裏からはシエラが同じように侵入する手筈だったのだが敷地内に入ってからヒロキは唖然としていた。なんと敷地内中央に残りの夜盗全員がまるで市場のマグロのようにきれいに並べられて横たわっていた。並べられた夜盗の中央でシエラが待機していた。すでに終わっていたようである。シエラはヒロキの姿を確認すると一言。

「お待ちしておりました。残存する敵はもういません。」
「は、はやかったね・・・。ご苦労様。あと死んでないよね?」
「ヒロキ様の命令は絶対です。この程度は造作もございません。」

 ヒロキは少し呆れたがすぐに打ち合わせ通りに空に向かって信号弾代わりに電撃弾を3発発射した。後方の衛兵達に制圧が終わった合図を送ったのである。

 10分程後ベリル達が拠点に到着して全員を縛りあげていった。一度に連行は難しいので車で何度か往復してお昼前には砦の牢屋に収容が完了した。
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