『姉に全部奪われた私、今度は自分の幸せを選びます ~姉の栄光を支える嘘を、私は一枚ずつ剥がす~』

六角

文字の大きさ
18 / 20

第18話「欠片が示す、犯人の輪郭」

しおりを挟む
王都の朝は、不気味なほど静かだった。 普段なら市場の準備をする荷車の音や、商人たちの威勢のいい声が響き始める時間だ。 だが、今朝の通りには、人の気配がほとんどない。 たまに見かける市民たちは、一様に虚ろな目をし、教会の鐘の音に導かれるようにふらふらと歩いている。 その手には、セシリア・アルヴェインの肖像画が握られていたり、胸に粗末な青いガラス玉を下げていたりした。

「……ひどい有様ですね」

私は馬車の窓からその光景を眺め、カーテンを閉めた。 この馬車は、レオンハルト様が手配してくれた、ごく普通の商用馬車だ。 御者台には、変装した近衛騎士が座っている。 目的地は、貴族街の一等地にあるバークレイ侯爵邸。

「洗脳の深度が上がっている。……魔石の共鳴が、セシリアの『種』を持たない一般市民にまで波及し始めている証拠だ」

同乗しているレオンハルト様が、地図を見ながら低く言った。 彼は他の班の指揮を執りつつ、最も危険度が高い私のサポートに回ってくれている。

「急がなければなりませんね。……人の心が完全に壊れてしまう前に」 「ああ。……まずはミランダだ。彼女が持っている魔石を回収すれば、貴族街一帯に広がる『虚栄の波長』を断てる」

印章庫で手に入れたデータによれば、ミランダが持つ魔石は、七つの欠片の中でも特に「感情増幅」の出力が高いものだった。 おそらく、彼女自身の強いコンプレックスと承認欲求が、魔石にとって格好の餌になったのだろう。

馬車が止まった。 裏口付近の路地だ。 私たちはフードを目深に被り、音もなく降り立った。 バークレイ侯爵邸は、異様な雰囲気に包まれていた。 屋敷全体が、毒々しいほどの薔薇で飾られ、窓という窓から紫色の淡い光が漏れ出している。

「……行くぞ」

レオンハルト様が短く合図し、私たちは裏門の鍵を魔法で解錠して侵入した。 庭師や警備兵たちがいたが、彼らもまた夢遊病者のように彷徨っているだけだった。 私たちは彼らを刺激しないよう、植え込みの影を縫って本館へと進んだ。

          ◇

屋敷の中は、甘ったるい香水の匂いで充満していた。 廊下の壁には、ミランダの肖像画がずらりと並べられている。 どれも美化されすぎた、お姫様のような絵だ。 使用人たちは見当たらなかった。 おそらく、全員どこかの部屋に閉じ込められているか、あるいは「観客」としてミランダの側に侍らされているのだろう。

「二階の角部屋……あそこが一番、魔力反応が強い」

私が懐中時計型の探知機を確認して告げる。 ミランダの私室だ。 私たちは階段を駆け上がり、その豪奢な扉の前に立った。 中からは、ヒステリックな笑い声と、独り言が聞こえてくる。

「……もっと! もっと光を! わたくしが一番美しくなければならないのよ!」 「はい、お嬢様……とてもお綺麗です……」 「セシリア様よりも? リリアなんかよりも?」 「はい……世界で一番……」

メイドたちの怯えきった声。 私はレオンハルト様と顔を見合わせ、頷いた。 レオンハルト様が扉に手をかけ、一気に押し開ける。

「失礼する」

部屋の中は、目を覆いたくなるような惨状だった。 壁一面に鏡が設置され、数え切れないほどのドレスや宝石が床に散乱している。 そして、その中心に、ミランダがいた。 彼女は下着同然の姿で鏡の前に立ち、胸に青い魔石のペンダントを下げていた。 その目は血走り、頬はこけ、鬼気迫る形相で自分自身を見つめている。 周囲には、疲れ果てて床に座り込んだメイドたちが数人いた。

「誰!? ……あ、あなたたちは!」

鏡越しに私たちに気づいたミランダが、金切り声を上げて振り返った。 その瞬間、彼女の胸の魔石が激しく明滅し、紫色の衝撃波が放たれた。

「うわっ!」 私は咄嗟に腕で顔を庇ったが、衝撃で数歩後退らされた。 物理的な威力はないが、精神を直接揺さぶるような不快な波動だ。 『お前は醜い』『価値がない』というネガティブな感情が、頭の中に直接流れ込んでくる。

「よくも来たわね、リリア! 泥棒猫! わたくしの美しさを盗みに来たの!?」

ミランダが叫ぶ。 その声は、かつてのお茶会での嫌味な令嬢の声ではない。 魔石に取り憑かれた、怪物の咆哮だ。

「ミランダ様。……その石を渡しなさい。それは貴女を美しくはしません。貴女を食い潰しているだけです」 「黙りなさい! これはセシリア様がくださったの! 『あなたは誰よりも輝ける』って!」

彼女はペンダントを握りしめた。 魔石が彼女の指に食い込み、黒い血管のような紋様が首筋へと侵食している。 同化が進んでいる。 このままでは、彼女の精神が崩壊してしまう。

「レオンハルト様、彼女の動きを封じてください! 私がプリズムでリンクを切ります!」 「承知した!」

レオンハルト様が詠唱し、床から氷の蔦を出現させる。 蔦はミランダの手足を拘束しようと伸びるが、彼女は魔石の力で障壁を展開し、それを弾き返した。

「無駄よ! わたくしは選ばれたの! わたくしこそが、次期王妃にふさわしいのよ!」

ミランダが手を振ると、部屋中の宝石箱や鏡が浮き上がり、弾丸のように私たちへ飛んできた。 ポルターガイスト現象。 魔力の暴走だ。

「くっ……!」 レオンハルト様が氷の盾で防ぐ。 ガシャーン! という破壊音が響き、ガラス片が飛び散る。

「リリア、近づけない! 遠距離から狙えるか!?」 「無理です! あの石は彼女の『心の闇』をエネルギーにしています。……物理攻撃では壊せません!」

私は砕け散った鏡の破片に映る、自分の顔を見た。 そして、ミランダの顔を見た。 彼女は何を恐れている? 何を求めている?

『リリアなんかよりも』。 彼女は言った。 彼女はずっと、私を見ていた。 追放された私を蔑みながら、同時に、どんな状況でも折れない私を羨んでいたのではないか?

「……ミランダ様!」

私は飛来する香水瓶を避け、一歩踏み出した。

「貴女はずっと、コンプレックスの塊でしたね! 侯爵家に生まれながら、才能豊かな姉妹と比べられ、社交界ではセシリアの金魚のフンと呼ばれて!」 「だ、黙れぇ!!」

図星だったようだ。 攻撃が激化する。 だが、それは彼女の動揺の証拠だ。

「セシリアは貴女を友人だなんて思っていなかった! ただの『引き立て役』として利用していただけです! 貴女もそれに気づいていたはずでしょう!?」 「違う! セシリア様は……!」

「だから貴女は、私をいじめた! 家を追われた私を蔑むことで、自分の方がマシだと安心したかった! ……でも、本当は貴女自身が一番、自分を惨めだと思っていたのではないですか!?」

「やめろぉぉぉッ!!」

ミランダが絶叫し、魔力が爆発した。 レオンハルト様の氷壁にヒビが入る。 だが、私は止まらない。 心の傷口を抉らなければ、毒は抜けない。

「鏡を見てください、ミランダ様! 今の貴女は美しいですか!? それは貴女がなりたかった姿ですか!?」

私は懐から『真理のプリズム』を取り出し、彼女に向けた。 光の矢ではない。 これは鏡だ。 真実の姿を映し出す、冷酷な鏡。

「見なさいッ!!」

プリズムから放たれた光が、ミランダの目の前に巨大なスクリーンを作り出した。 そこに映ったのは、美化されたお姫様ではない。 髪を振り乱し、眼窩が落ち窪み、魔石に寄生されて醜く歪んだ、哀れな怪物の姿だった。

「……ひっ……」

ミランダは息を呑んだ。 自分の本当の姿を見て、硬直する。 魔石の光が明滅し、彼女への支配力が揺らぐ。

「……これが、わたくし……?」 「そうです。それが、嘘に食われた貴女の成れの果てです」

私は静かに近づいた。 防御魔法など必要ない。彼女はもう、攻撃する意思を失っている。

「でも、まだ戻れます。……その石を捨てれば」 「……捨てられない……。これがないと、わたくしは……ただの空っぽな……」 「空っぽなら、詰めればいいじゃないですか。……自分の力で」

私は彼女の目の前に立ち、そっと手を伸ばした。 彼女の首にかかったペンダントに触れる。 冷たく、禍々しい石。 でも、ミランダの体温も感じられた。

「貴女は、ルビーがお好きでしたね。……以前のお茶会で、貴女が着けていたネックレス。あれは不正な金で買ったものでしたが、貴女にはよく似合っていました」 「……え?」 「貴女には、華やかな赤が似合います。……こんな不気味な青色じゃなくて」

私が微笑むと、ミランダの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。 張り詰めていた虚栄心が決壊し、ただの弱い女の子の心が溢れ出す。

「……う、うわぁぁぁん!」

彼女が泣き崩れると同時に、魔石からパチンと音がした。 共鳴が止まったのだ。 私はすかさずペンダントを引きちぎり、プリズムの光で浄化した。 魔石は黒い煙を上げて沈黙し、ただの薄汚れたガラス片に戻った。

「……回収完了です」

私は魔石を布に包み、鞄に収めた。 部屋を覆っていた紫色の光が消え、朝の陽射しが差し込んでくる。 メイドたちが正気を取り戻し、「お嬢様!」と駆け寄ってくる。

ミランダは床に座り込み、子供のように泣きじゃくっていた。 レオンハルト様が氷壁を解き、肩の力を抜いた。

「……手荒なカウンセリングだったな」 「荒療治が必要な患者でしたから」

私はミランダにハンカチを投げ渡した。

「泣き止んだら、顔を洗ってください。……今の貴女、今までで一番マシな顔をしていますよ」

ミランダは驚いたように顔を上げ、鼻を啜りながら、それでも少しだけ照れくさそうにハンカチを握りしめた。 彼女が私の味方になることはないだろう。 でも、もう敵ではない。 ただの、少し面倒な隣人に戻っただけだ。

          ◇

屋敷を出ると、外の空気は少しだけ軽くなっていた。 貴族街を覆っていた重苦しい圧迫感が薄れている。 通信用の魔道具が震えた。 カミュ団長からだ。

『よう、リリア嬢。こっちは片付いたぜ』 豪快な声が響く。

『商業区のガレオン商会跡地……残党どもが魔石を使って暴徒を集めていたが、全員のしてやった。商会長の息子、トーマスが協力してくれてな。「親父の罪を償う」って、魔石の隠し金庫を開けてくれたよ』

「トーマス様が……。よかったです」 『おう。それと、スラムの方も部下から報告が入った。ガストン院長の隠し部屋から魔石を発見、回収済みだ。……ただ、こっちは少し厄介だったらしい。「聖女様がくれた希望の石だ」って、貧民たちが手放そうとしなくてな』

『どうやって解決した?』 レオンハルト様が尋ねる。

『食いもんだよ。王家の備蓄庫からパンとスープを運び込んで、「本物の希望はこっちだ」って配ったら、あっさり石を寄越しやがった。……現金なもんだが、それが人間ってもんだろ』

カミュ団長らしい解決法だ。 でも、それが一番正しいのかもしれない。 飢えた人に必要なのは、奇跡の石ではなく、温かいスープなのだから。

「残るは……近衛騎士詰め所ですね」 「ああ。ジェイクの件だ」

レオンハルト様の表情が曇る。 王宮内にある騎士団の詰め所。 そこは今、洗脳された騎士たちによって要塞化されている。 ジェイクは、その中心にいる。

『安心しろ。そっちは俺がこれから向かう。……馬鹿な部下の目を覚まさせるのは、上官の義務だからな』 カミュ団長の声には、悲壮感はなかった。 あるのは、揺るぎない信頼と覚悟だけ。

『リリア嬢、レオンハルトの旦那。あんたらは先に行っててくれ。……「本丸」の準備をしてな』 『……頼むぞ、カミュ』 『任せとけ!』

通信が切れる。 これで四つの魔石が回収された。 残るは三つ。 一つは近衛騎士詰め所(カミュ団長が対応中)。 一つは……まだ特定されていない場所にあったはずだが、印章庫の地図では「王宮の地下」を示していた。 そして最後の一つは、玉座の間にあるセシリアのもの。

「……王宮の地下?」 私は記憶を探った。 地下には牢獄や貯蔵庫があるが、魔石が置かれるような場所があっただろうか?

「……リリア。あれを見ろ」

レオンハルト様が空を指差した。 王宮の方角から、黒い煙が上がっている。 火事? いいえ、違う。 あれは……魔力の奔流だ。 どす黒い、ヘドロのような魔力が、王宮の地下から噴き出し、空を覆おうとしている。

「地下から……? まさか!」

私はハッとした。 王宮の地下深く。 そこには、王家の墓所がある。 歴代の王たちが眠る、最も神聖で、最も魔力が集まりやすい場所。

「セシリアは、死者を冒涜するつもりか……!?」

レオンハルト様が馬車を急がせるよう御者に命じる。 馬車が猛スピードで走り出す。

「墓所には、建国当初の『古い結界』の核があります。……もし魔石を使ってその核を汚染すれば、王宮の防御機能そのものを乗っ取ることができます!」 「防御どころではない。……王都全体の地脈を支配下に置く気だ」

レオンハルト様の顔色が蒼白になる。 地脈支配。 それが完成すれば、王都はセシリアの意のままになる巨大な魔法陣と化す。 住民の命を吸い上げ、彼女に無限の魔力を供給するシステム。 アレクサンダー王子が言っていた『種』の本当の意味は、これだったのか。 国家転覆どころではない。 国家そのものを「生贄」にする儀式だ。

「……急ぎましょう。地下の魔石を止めなければ、玉座の間のセシリアには手出しできません」 「ああ。……ジェイクの方はカミュに任せる。我々は地下へ向かうぞ!」

馬車が王宮の裏門へ滑り込む。 城内は騒然としていた。 黒い霧が回廊を這い回り、逃げ惑う使用人たちの悲鳴が響いている。 洗脳されていた衛兵たちも、この異様な事態に混乱し、統制を失っているようだった。

私たちは地下への入り口を目指して走った。 途中、何度か黒い霧が実体化し、魔物の形をとって襲いかかってきたが、レオンハルト様が氷の剣で切り伏せ、私がプリズムの光で浄化した。 連携は完璧だ。 言葉を交わさなくても、互いの呼吸がわかる。

「……ここだ」

王家墓所の入り口。 重厚な石扉は粉々に砕かれ、中から冷気と腐臭が漂ってくる。 私たちは足を踏み入れた。

地下墓所は、広大な迷宮のようだった。 歴代国王の石棺が並ぶ通路を抜けると、最深部に巨大なドーム状の空間が広がっていた。 その中央に、初代国王の棺が安置されている。 そして、その棺の上に、一人の男が立っていた。

ボロボロのローブ。 白髪交じりの髪。 そして、手には複雑な機械仕掛けの装置と、青く輝く魔石を持っていた。

「……ギルバート!?」

私が叫ぶと、男はゆっくりと振り返った。 クレイグの元弟子。 法廷の天井裏から突き落とされ、拘束されたはずの彼が、なぜここに?

「ヒヒッ……。来たか、邪魔者たち」

ギルバートは狂ったように笑った。 その半身は黒い魔力に侵食され、異形化している。

「拘束から逃げ出したのか……」 「逃げた? 違うね。……『あの方』が助けてくれたんだよ。アレクサンダー殿下がね!」

帝国の手引き。 やはり、まだ終わっていなかった。 王子は帰国したふりをして、裏で工作を続けていたのだ。

「見ろ! これぞ私の最高傑作! 『強制共鳴増幅炉』だ!」

ギルバートは装置を作動させた。 魔石が激しく明滅し、地下墓所の霊脈から魔力を吸い上げ始める。 黒い波動が広がり、空間が歪む。

「この装置で地脈を逆流させ、王都中の人間の精神をセシリア様の意識と直結させる! ……そうすれば、誰も彼女に逆らえなくなる! 完全なる平和! 完全なる支配だ!」

「……狂ってる」

レオンハルト様が吐き捨てるように言った。

「科学の発展だと? 貴様がやっていることは、ただの大量虐殺だ!」 「黙れ! 凡人に天才の思考が理解できるものか!」

ギルバートが手を振ると、周囲の石棺が開き、中から白骨化した王たちの遺体が起き上がった。 ネクロマンシー。 魔石の力で、死者すら兵隊に変えたのか。

「かかれ! 私の研究の養分となれ!」

スケルトンの軍団が襲いかかってくる。 数は百以上。 狭い地下空間で、この数は脅威だ。

「リリア、装置を狙え! 雑魚は私が引き受ける!」 「はい!」

レオンハルト様が前に出る。 「氷結界・展開!」 彼を中心に冷気が爆発し、迫り来るスケルトンたちを一瞬で凍りつかせる。 凄まじい魔力消費だ。 長くは持たない。

私はその隙を縫って、ギルバートへと走った。 私の武器は『真理のプリズム』。 でも、今回は光を当てるだけでは足りない。 あの装置を物理的に破壊し、魔石を回収しなければならない。

「させるかよ!」

ギルバートが装置から黒い雷撃を放つ。 私はスライディングで回避し、柱の影に飛び込んだ。 雷撃が石畳を焦がす。

「どうした、隠れているだけか? 監査官!」

ギルバートの嘲笑。 私は懐から、ミランダから回収した魔石を取り出した。 さらに、トーマスから、ガストンから回収した魔石も。 計三個。 これらを使えば……。

「……毒には毒を」

私はクレイグの教えを思い出した。 魔石同士は共鳴する。 ならば、回収した魔石を使って、ギルバートの持つ魔石に「逆位相の波長」をぶつければ? 共鳴過多(オーバーロード)を起こして、自壊させられるかもしれない。

「レオンハルト様! 私に合わせてください!」 私は叫びながら飛び出した。

「何を……!?」 「今です!」

私は三個の魔石を空中に放り投げた。 そして、プリズムを通して魔力を流し込む。 「共鳴反転……クラッシュ!」

三つの魔石が輝き、ギルバートの持つ魔石に向かって光の鎖を伸ばした。 ギルバートの装置が異音を立てる。 「な、何だ!? 出力が……制御できない!?」

「今だ、レオンハルト様!」

「承知ッ!!」

レオンハルト様が氷の剣を巨大化させ、跳躍した。 スケルトンたちを踏み台にし、ギルバートの頭上へと躍り出る。

「貴様の研究は、ここで打ち切りだ!」

一閃。 氷の大剣が、ギルバートの装置ごと魔石を両断した。

ドカァァァン!!

爆発。 黒い霧が霧散し、スケルトンたちがバラバラと崩れ落ちる。 ギルバートは吹き飛ばされ、壁に激突して動かなくなった。 真っ二つになった魔石が、床に転がる。 光を失った、ただの石ころ。

「……はぁ、はぁ……」

レオンハルト様が着地し、膝をつく。 魔力を使い果たしたようだ。 私もへたり込む。 なんとか、止めた。

「……回収完了、ですね」

私は砕けた魔石の破片を拾い上げた。 これで六つ。 地下の汚染も止まった。

「ああ。……残るは一つ」

レオンハルト様が天井を見上げる。 その視線の先、何百メートルも上空にある『玉座の間』。 そこに、最後の敵がいる。

「……行きましょう。リリア」 「はい」

私たちは立ち上がり、出口へと向かった。 戦いは最終局面へ。 もう、誰も私たちを止めるものはいない。 姉との、最後の対話が待っている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。 エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。 地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。 しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。 突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。 社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。 そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。 喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。 それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……? ⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

妹を選んで婚約破棄した婚約者は、平民になる現実を理解していなかったようです

藤原遊
恋愛
跡継ぎとして育てられた私には、将来を約束された婚約者がいた。 ――けれど彼は、私ではなく「妹」を選んだ。 妹は父の愛人の子。 身分も立場も分かったうえでの選択だと思っていたのに、 彼はどうやら、何も理解していなかったらしい。 婚約を破棄し、妹と結ばれた彼は、 当然のように貴族の立場を失い、平民として生きることになる。 一方で、妹は覚悟を決めて現実に向き合っていく。 だが彼だけが、最後まで「元に戻れる」と信じ続けていた。 これは、誰かが罰した物語ではない。 ただ、選んだ道の先にあった現実の話。 覚悟のなかった婚約者が、 自分の選択と向き合うまでを描いた、静かなざまぁ物語。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

王子に婚約破棄されて国を追放「魔法が使えない女は必要ない!」彼女の隠された能力と本来の姿がわかり誰もが泣き叫ぶ。

佐藤 美奈
恋愛
クロエ・エルフェシウス公爵令嬢とガブリエル・フォートグランデ王太子殿下は婚約が内定する。まだ公の場で発表してないだけで、王家と公爵家の間で約束を取り交わしていた。 だが帝立魔法学園の創立記念パーティーで婚約破棄を宣言されてしまった。ガブリエルは魔法の才能がある幼馴染のアンジェリカ男爵令嬢を溺愛して結婚を決めたのです。 その理由は、ディオール帝国は魔法至上主義で魔法帝国と称される。クロエは魔法が一番大切な国で一人だけ魔法が全然使えない女性だった。 クロエは魔法が使えないことに、特に気にしていませんでしたが、日常的に家族から無能と言われて、赤の他人までに冷たい目で見られてしまう。 ところがクロエは魔法帝国に、なくてはならない女性でした。絶対に必要な隠された能力を持っていた。彼女の真の姿が明らかになると、誰もが彼女に泣いて謝罪を繰り返し助けてと悲鳴を上げ続けた。

たいした苦悩じゃないのよね?

ぽんぽこ狸
恋愛
 シェリルは、朝の日課である魔力の奉納をおこなった。    潤沢に満ちていた魔力はあっという間に吸い出され、すっからかんになって体が酷く重たくなり、足元はふらつき気分も悪い。  それでもこれはとても重要な役目であり、体にどれだけ負担がかかろうとも唯一無二の人々を守ることができる仕事だった。  けれども婚約者であるアルバートは、体が自由に動かない苦痛もシェリルの気持ちも理解せずに、幼いころからやっているという事実を盾にして「たいしたことない癖に、大袈裟だ」と罵る。  彼の友人は、シェリルの仕事に理解を示してアルバートを窘めようとするが怒鳴り散らして聞く耳を持たない。その様子を見てやっとシェリルは彼の真意に気がついたのだった。

妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑
恋愛
家族から才能がないと思われ、蔑まれていた姉が辺境で溺愛されたりするお話です。 2/21完結

処理中です...