断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

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第38話:王子との再会と絶望的な状況

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「――はあっ!」

ゼノン様が、右手を、薙ぐ。
すると、彼の手から、放たれた、青い魔力の、衝撃波が、襲いかかってきた、暗部の男たちを、数人、まとめて、吹き飛ばした。

しかし、敵の数は、多い。
吹き飛ばしても、すぐに、次の者たちが、剣を、構えて、突進してくる。

「くっ…!」

多勢に無勢。
いくら、ゼノン様が、強力な魔力を持っているとはいえ、魔力を消耗した、今の状態で、この数を、相手にするのは、分が悪い。

「宰相閣下! リリアナ様! あなた方は、わたくしの、相手ですわ!」

私は、そう叫んで、二人を、牽制する。
宰相自身は、戦闘タイプではないだろうが、リリアナは、未知数だ。
彼女が、もし、強力な魔法の使い手だったら、厄介なことになる。

「ふん、この私自らが、手を下すまでもない」
「ええ、そうですわね、お父様」

幸い、彼らは、高みの見物を、決め込むつもりのようだ。

その、刹那だった。
時計塔の、下の方から、複数の、叫び声と、剣戟の音が、聞こえてきた。

「何事だ!?」

宰相が、驚きの声を上げる。
すると、階段を、数人の騎士が、駆け上がってきた。
その先頭にいたのは、見覚えのある、金色の髪。

「アラン殿下!」

「無事だったか、二人とも!」

アラン殿下が、率いてきた、王宮騎士たちが、黒装束の男たちの、背後から、襲いかかり、次々と、斬り伏せていく。
形勢は、一気に、逆転した。

「アラン…! なぜ、お前が、ここに! 牢獄に、入れたはずでは…!」

宰相が、信じられない、といった顔で、叫ぶ。

「甘いな、宰相。あんたが、俺の、腹心の騎士たちを、全員、捕らえられるとでも、思ったか?」

アラン殿下は、剣を構えながら、不敵に、笑った。

「あんたが、動き出すのは、読んでいたさ。何人かは、あえて、捕まらせて、残りの手勢で、あんたの、動向を、探っていたんだよ」

「小賢しい、真似を…!」

「お互い様だろう?」

味方の、登場。
しかも、それが、アラン殿下だったとは。
私は、心から、安堵した。

残っていた、暗部の者たちも、アラン殿下の騎士たちによって、すぐに、制圧された。
宰相と、リリアナは、完全に、孤立する。

「…どうやら、今日のところは、私の、負けのようですな」

宰相は、意外なほど、あっさりと、敗北を、認めた。

「ですが、これで、終わりと、思わないことですな」

彼は、リリアナの手を、取ると、懐から、一つの、黒い水晶を、取り出した。

「それは…!?」

「また、お会いしましょうぞ、皆様。次こそが、本当の、最終幕です」

彼が、水晶を、強く、握りしめると、二人の足元に、再び、転送魔法陣が、現れた。
しかし、今度の魔法陣は、禍々しい、闇のオーラを、放っている。

「逃がすか!」

ゼノン様が、魔法を、放とうとするが、間に合わない。
一瞬の、閃光と、共に、宰相と、リリアナの姿は、跡形もなく、消え去ってしまった。

後に残されたのは、不気味な、静寂だけだった。

「…クソッ!」

アラン殿下が、悪態を、つく。
「まんまと、逃げられたか」

「ですが、助かりましたわ、殿下。本当に、ありがとうございます」

私が、礼を言うと、彼は、にっこりと、いつもの、王子様の笑顔を、見せた。

「当然のことを、したまでさ。それより、君たちこそ、よくぞ、ご無事で。一体、何があったんだ?」

私たちは、ひとまず、時計塔を、後にすると、アラン殿下が、用意してくれていた、隠れ家へと、向かった。
そこで、私たちは、時の牢獄で、知った、すべての真実を、彼に、打ち明けた。

「…なんだって…?」

私たちの話を、聞き終えた、アラン殿下は、絶句していた。

「宰相が、10年も前から、そんな、壮大な計画を…? それに、リリアナが、奴の…?」

「ええ。すべて、真実ですわ」

「…信じられん。だが、君たちが、言うのなら、そうなんだろうな」

彼は、大きく、ため息をついた。

「だとしたら、状況は、俺たちが、考えている以上に、最悪だ」

「と、申しますと?」

「王宮は、もはや、完全に、宰相の、息がかかった者たちで、固められている。父上も、母上も、おそらく、何らかの、魔法か、薬で、思考を、操られているのだろう。今、俺たちが、王宮に、乗り込んでも、反逆者として、処刑されるのが、オチだ」

宰相は、逃げる際に、言っていた。
『王宮は、我が手中にある』と。
それは、ハッタリでは、なかったのだ。

「では、わたくしたちは、どうすれば…?」

「…一つだけ、手はある」

アラン殿下は、真剣な顔で、言った。

「宰相の、陰謀の、決定的な、証拠を、掴む。そして、それを、貴族議会や、諸外国の、大使たちの前で、公表し、奴の、罪を、白日の下に、晒すんだ」

それは、私が、先ほど、宰相に、啖呵を切ったことと、同じだった。

「民意を、味方につける。それしか、正攻法で、奴を、倒す道はない」

打倒、ロシュフォール宰相。
そのための、共同戦線が、今、ここに、改めて、結成された。
しかし、その前途は、あまりにも、多難だった。

絶望的な、状況の中、私たちは、果たして、逆転の、一手を、見出すことができるのだろうか。
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