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花火大会の夜

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駅に着くと、もう人でごった返していた。花火大会に向かう人々が、色とりどりの浴衣や甚平を着て、にぎやかに歩いている。私は自転車を置く場所を探していたが、なかなか見つからない。

「あそこに空きがあるよ」と彼女が指さした。私はそこに自転車を停めて、彼女に合流した。

「ありがとう」と私は言った。「じゃあ友達と合流するね」

「え? 一緒に行かないの?」と彼女が言った。「私も友達と待ち合わせてるから」

「そうなの?」と私は驚いた。「どこで?」

「あそこよ」と彼女は駅前のロータリーを指さした。「あれ? あそこに○○君がいるわ」

○○君? 誰だっけ?

私は目を凝らしてみた。ロータリーの中央に立っている男子が目に入った。彼は白いシャツと黒いパンツのカジュアルな格好で、手に花束を持っていた。顔は見覚えがあるような気もするけど……。

「あれが告白されちゃった人?」と私が聞くフリをした。

「うん」と彼女は頷いた。「今日デートする約束したの」

「へえ」と私は感心するフリをした。「すごいね」

「でもさー」と彼女は言った。「正直ちょっと迷ってるんだよね」

「迷ってる?」と私が聞いた。

「うん」と彼女は言った。「実はさー……」と彼女は言った。

「私、○○君のこと、そんなに好きじゃないの」

「えっ?」と私は驚いた。「じゃあ、なんで付き合うことにしたの?」

「だってさー」と彼女は言った。「告白されたら断るのも失礼だし、せっかく花火大会に誘われたんだから行ってみようかなって思っただけなの」

「それって……」と私は言葉に詰まった。彼女は本当に軽いなあ。○○君の気持ちを考えてあげてよ。

「でもさー」と彼女は言った。「今日デートしてみて、もしかしたら好きになれるかもしれないでしょ? それに、花火大会ってロマンチックだし」

「そうかもね」と私は適当に答えた。でも心の中では、彼女が○○君を傷つけることがないか心配だった。

「あ、あそこに来たわ!」と彼女が声を上げた。ロータリーを渡って歩いてくる○○君が見えた。

彼はまだ私達に気づいていないようだった。花束を抱えて緊張している様子が伝わってきた。

私は初めてしっかりと彼の顔を見た。確か同じ学年で、数学部に所属しているらしい。成績優秀でスポーツ万能でイケメンでモテモテという噂だ。

でも私は今まで全然興味がなかった。どちらかというと自分勝手でプライド高そうで苦手なタイプだと思っていた。

でも今見ると……やっぱりイケメンだわ。整った顔立ちに黒髪ショートカット、スラッとした体型。シャツもパンツもサイズピッタリで清潔感がある。

目が合う前に視線を逸らした。何故だろう? 少しドキッとした気がする。





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