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第10話 医師の見立て
翌々日の昼、空は鈍い銀色をしていた。
朝からずっと陽が差さない。雪になるほど重くはないが、雲は低く垂れこめ、庭木の先を墨でなぞったみたいに滲ませている。屋敷の中は暖炉と燭台の火でどうにか温度を保っているものの、窓の外の光が弱いせいで、どの部屋もいつもより少しだけ薄暗く見えた。
そんな日に限って、王都からの馬車は正午きっかりに公爵邸へ入った。
砂利を踏む車輪の音が表玄関まで重く響き、そのあと、扉の向こうで何人もの足音と低い声が交錯する。使者ではない。医師団だ。王都から専門の医師を呼んだと聞いてはいたが、実際に到着の気配を耳にすると、セルフィーネの胸は静かに強張った。
自室の窓辺に立っていた彼女は、薄いカーテンを指先で少しだけ持ち上げ、馬車から降りる人影を見下ろした。
年嵩の男が一人。黒に近い濃紺の外套、銀糸で控えめに縁取られた襟元。医師にしては衣服が整いすぎていると思ったが、王都の名医ともなれば、それもひとつの看板なのかもしれない。その後ろに助手らしい若い男が二人、革張りの箱と書類筒を抱えて続く。
「奥様」
ミレナが背後で声をかける。
「王都の医師団が到着したそうです。エドウィン様より、診立ての場へご同席いただきたいと」
「……ええ」
返事は短く済んだが、喉の奥が少し乾いているのをセルフィーネは自覚していた。
専門医。
ただ事故で頭を打っただけではない、ということなのだろう。公爵家の当主が記憶を失っている。それも、妙に偏った失い方をしている。婚約時代の記憶はあるのに、結婚後の三年だけがごっそり抜け落ちている。それが単なる打撲による一時的な混乱ではないと、屋敷付きの侍医も感じていたからこそ、王都へ正式に診察依頼を出したのだ。
セルフィーネは外套を羽織り、髪を整え直した。
鏡の中の自分は、ここ数日のせいか、少しだけ頬が痩せて見える。目元の疲れも隠しきれていない。けれど今さらどうしようもない。大丈夫な顔を作るしかなかった。
廊下へ出ると、屋敷全体の気配がいつもよりひときわ静かだった。使用人たちも、この診察がただの形式ではないことを察しているのだろう。歩く足音が必要以上に抑えられている。遠くで扉が閉まる音も、小さく遠慮がちに聞こえた。
診察の場に選ばれたのは、オルドレンの私室に隣接する小客間だった。
寝台のある部屋ではなく、少し離した場所にしたのは、病人扱いを必要以上に強めないためかもしれない。窓は高く、採光は悪くないが、空が曇っているため室内は薄暗い。暖炉の火がほどよく燃え、中央の丸卓を囲むように椅子が並べられていた。
セルフィーネが入った時、すでにオルドレンは席についていた。
額の包帯はもう細くなっている。顔色も事故直後に比べればだいぶ戻った。だが青灰色の瞳の下には薄い影があり、数日分の睡眠の質が決してよくないことが見て取れる。彼はセルフィーネが入室すると、すぐに顔を上げた。記憶を失ってからの彼は、彼女が部屋へ入るたび、いつもそうする。まるで無意識のうちに探してしまうみたいに。
その視線のまっすぐさが、今も少しだけ苦しい。
「おはようございます」
セルフィーネが言うと、オルドレンは静かに頷いた。
「来てくれて助かる」
その言葉に、王都から来た医師がわずかに目を細めたのが分かった。彼は観察しているのだろう。患者本人の記憶だけでなく、その人が誰へどう反応するのかまで。
医師は丁寧に一礼した。
「初めてお目にかかります。王都医学院附属診療院に籍を置いております、ヘルムート・ヴァルシェと申します」
声音は落ち着いているが、柔らかすぎない。人を安心させるより、正確に見定めることを優先する類いの声だと感じた。
「本日は、公爵閣下の記憶障害について、より専門的な見立てをお伝えするため参りました」
オルドレンが短く言う。
「遠路、感謝する」
ヘルムート医師は椅子へ腰かけ、助手のひとりが持ってきた書類を受け取った。そこにはこれまでの診察記録や、事故当日の簡単な経緯が記されているのだろう。彼はそれへ目を走らせながら、まずオルドレン自身へいくつか確認を始めた。
「閣下。今日は何年何月何日と認識しておられますか」
「王暦三百三十一年、二月十七日」
「結婚の事実は、現在どう認識なさっていますか」
この問いには、セルフィーネのほうが一瞬だけ息を止めた。
オルドレンはしかし、迷わず答える。
「事実として受け入れている。だが、結婚式そのものや、その後の生活に関する具体的な記憶はない」
「奥様に対する感情の認識は」
やや踏み込んだ問いだった。セルフィーネは思わず医師を見たが、彼は少しも表情を変えない。必要な確認なのだろう。
オルドレンは一拍だけ沈黙した。
その沈黙がやけに長く感じる。
「認識が、二重になっている」
やがて彼はそう言った。
「婚約時代までの私は、彼女へ好意を抱いていた記憶がある。それは今もはっきりしている。だが、彼女が離縁を望んだという現実がある以上、その後の私が彼女をひどく傷つけたことも理解している。だから……」
そこで彼は言葉を探すように視線を落とした。
「単純に“好きだから妻へ戻ってほしい”とは思わない。ただ、何があったのか知らずにいることが耐え難い」
セルフィーネは膝の上で指を組み合わせる。
この人は本当に、こういう場でも誤魔化さない。記憶を失ったことを免罪符にせず、自分が何も知らないこと自体を痛みとして引き受けようとする。その誠実さが前よりずっとつらいと、もう何度思っただろう。
医師は小さく頷くと、今度はセルフィーネへ視線を向けた。
「奥様から見て、閣下の変化はどのように映っておられますか」
セルフィーネは少しだけ唇を湿らせる。
どう答えればいいのだろう。優しくなった、と短くまとめるには、あまりにも足りない。記憶の抜け落ちた婚約者が、結婚後の冷たい夫の身体を借りて戻ってきたみたいだ、とでも言えばいいのか。
「……事故の前と、今では別人のようです」
結局、それしか言えなかった。
医師は即座に書き留める。
「具体的には」
セルフィーネは目を伏せ、言葉を選んだ。
「私の好みや体調の癖を覚えていて、気遣うようになりました。以前は……少なくとも結婚後は、そのようなことはありませんでした」
「結婚後の三年間、閣下は奥様へ一貫して冷淡だったと?」
セルフィーネはその表現に少しだけ息を詰める。
冷淡。たしかにそうだ。だがその言葉だけであの三年をすべて説明できるわけではない。見て見ぬふりをされること。必要な時だけ形式上の礼を尽くされること。誕生日の晩餐すら別席で済まされること。そういう細かな切断の積み重ねが、心を静かに削っていったのだ。
「……はい」
それでも、答えはそうなるしかなかった。
医師はそれ以上深くは掘り下げず、紙面へ何かを書きつける。ペン先が走る音だけが、妙に大きく聞こえた。
「では、見立てを申し上げます」
やがてヘルムート医師は書類を閉じた。
その一瞬で、部屋の空気がさらに静まる。暖炉の火のはぜる音すら遠く感じるほどだった。
「閣下の状態は、単純な打撲による一時的な健忘とは少々異なります」
低く、はっきりした声だった。
「もちろん事故による身体的衝撃が引き金であることは否定できません。ですが、失われた記憶の範囲があまりに特定的です。婚約以前や幼少期、政務に関する広範な知識は保持されている一方で、結婚後の三年から四年に関する個人的記憶のみが大きく欠落している」
オルドレンが黙って聞いている。セルフィーネの喉も自然と詰まる。
「この偏りから考えられるのは」
医師は一度だけ区切った。
「強い精神的衝撃に紐づいた記憶の遮断です」
その言葉が落ちた瞬間、セルフィーネの背筋に冷たいものが走る。
強い精神的衝撃。
つまり、彼はただ事故で忘れたのではない。何か耐え難い出来事と結びついた記憶ごと、そこだけを切り落とすように失っているのだ。
「事故の衝撃は引き金にすぎません」
医師は続ける。
「もともと閣下の中で、その時期の記憶が何らかの強い負荷を抱えていた可能性が高い。人の心は、時に耐え難い記憶をそのまま保持しきれず、閉じたり、歪めたり、切り離したりすることがあります。今回は、その状態が事故によって顕在化した、と見るのが自然でしょう」
セルフィーネは無意識に、自分の指をさらに強く握っていた。
耐え難い出来事。
その中心に、自分がいる。
そう気づいた瞬間、胸の内側がしんと冷える。結婚後のオルドレンが自分へ冷たくなった理由。それはまだ明らかになっていない。だが少なくとも、その三年間の記憶が彼にとって「耐え難い」と分類されるほどの重みを持っていたのなら、その核に自分との関係があることはほとんど確実だ。
離縁届を受け取った夜の平坦さも、冷え切った三年間も、全部その中心へ繋がっているのだろうか。
セルフィーネは何も言えなかった。
黙ったまま視線を下げるしかない。そうしなければ、自分の顔に何が出るか分からなかった。
「先生」
沈黙を破ったのはオルドレンだった。
「つまり私は、自分で忘れたということか」
医師は慎重に答える。
「“自分で”と表現するのは正確ではありません。意識的な選択ではないからです。ですが、閣下の心が耐えきれぬ何かを避けようとした可能性はございます」
「何か」
オルドレンがその二文字を静かに反芻する。
セルフィーネは顔を上げられない。自分が、その「何か」の中心かもしれないと分かってしまったからだ。
「記憶は戻るのか」
次の問いも、オルドレンの声は平坦だった。だがその平坦さの下に、ひどく切実なものがあるのをセルフィーネは聞き取ってしまう。
「可能性はあります」
医師は即答しない。慎重に言葉を積む。
「断片的に戻る場合もあれば、ある特定の刺激をきっかけに一気に結び直されることもあります。ただし、無理に思い出そうとするのは危険です。頭部の負担だけでなく、精神面の反動が大きい」
「では、何も知らずに待てと」
その問いには、珍しく苛立ちが滲んでいた。
当然だろう。知らないままでいろと言われて平気でいられる人ではない。まして、その空白の中で自分が妻を深く傷つけたらしいと知ってしまっているのだから。
医師は少しも怯まずに答える。
「待つのではなく、丁寧に辿るべきです。記憶そのものを力ずくでこじ開けるのではなく、その周囲にある事実、関係、感情の輪郭から」
その言い方に、オルドレンの目がわずかに細くなる。
「関係、か」
「はい。とくに閣下の場合、抜け落ちている時期が夫婦関係と強く結びついているように見受けられます」
部屋の空気が、そこで一段と重くなる。
誰もその言葉を否定しない。できない。
セルフィーネは頬の内側を噛み、ようやく視線を上げた。ヘルムート医師は彼女を見ていない。オルドレンのほうへ向き直り、まるで患者の自尊心を傷つけないよう配慮しながらも、核心は外さずに話している。
「閣下が何を受け、どう誤解し、何を失ったのか。それを少しずつ確かめていくしかございません」
「誤解」
オルドレンはその言葉を拾った。
医師は小さく肩をすくめる。
「断言はいたしません。ただ、耐え難い衝撃というものは、必ずしも事実そのものとは限りません。受け取り方や思い込みが、それを増幅させることもある」
セルフィーネの胸が、そこで鋭く脈打つ。
誤解。
思い込み。
それらは、あまりに心当たりがありすぎた。
結婚した直後からの冷たさ。何かを決定的に取り違えたみたいな距離の取り方。問いただしても何も答えず、ただ静かに壁を作っていく態度。あれらの背後に、もし誤解があったのだとしたら。
だが、今この場でそれを口にすることはできない。自分の推測を事実として挟めば、話が壊れる気がした。
医師は診断の説明を終えると、注意事項をいくつか伝えた。頭を強く使うことを避けること。睡眠を取ること。急激な情動の上下をできるだけ避けること。そして、記憶の抜け落ちた時期に関しては、第三者の証言や書類を通じて少しずつ輪郭を確かめるのがよいこと。
すべて正しいのだろう。
けれど、セルフィーネには、その一つ一つがどこか現実離れして響いた。第三者の証言。書類。輪郭。夫婦の三年間をそんなふうに外側から辿るしかないところまで、二人は壊れていたのだ。
診察の場が解かれ、助手たちが書類をまとめ始める。侍医と王都の医師が別室で少し打ち合わせをするということで、部屋の中には一瞬だけ、セルフィーネとオルドレンだけが残された。
暖炉の火が静かに燃える音が、やけに大きく聞こえる。
セルフィーネは席を立つべきか迷った。今の沈黙はひどく重い。だが、まだ何か言われる予感もあった。
その予感どおり、オルドレンが低く口を開く。
「……その中心に、君がいるのだな」
セルフィーネの指先が強張る。
やはりそう来るのかと思った。言葉にされる前から分かっていた。医師の診立てを聞けば、オルドレンがそこへ行き着くのは避けられない。
「中心、とは」
どうにかそう返すと、オルドレンは自嘲するようにわずかに息を吐いた。
「私が耐え難いと思った何かの中心だ」
青灰色の瞳が、まっすぐセルフィーネを見る。
「君の顔を見れば、それくらいは分かる」
セルフィーネは返事ができない。
それを認めることも、否定することも、今はどちらも残酷に思えた。認めれば彼を追いつめる。否定すれば嘘になる。
だから沈黙するしかない。
その沈黙が答えになってしまうことも、分かっていたけれど。
オルドレンはそれ以上問い詰めなかった。以前の彼なら、こういう場面ではもっと冷たく線を引いたか、逆に黙って切り上げていただろう。だが今の彼は、沈黙の意味をきちんと受け止めてしまう。
「……そうか」
低く落ちる声は、もう何度も聞いたはずなのに、毎回違う痛みを帯びていた。
「なら、なおさら知らねばならないな」
セルフィーネはそこで初めて顔を上げた。
オルドレンの表情は、静かだった。だが静かなだけで、決して穏やかではない。何かを決めた人間の顔だった。
「無理に思い出そうとするな、と医師は言った」
オルドレンは自分に言い聞かせるように続ける。
「なら、私は事実から辿る。書類、証言、屋敷の中で起きたこと、夫婦としての記録。何があったのかを」
セルフィーネの喉がひどく乾く。
「やめてください」
気づけば、そう言っていた。
オルドレンが目を向ける。
「何を」
「そんなふうに、調べるみたいに」
言いながら、自分でも何が嫌なのかはっきりしない。彼が無理をするのが嫌なのか。過去を暴かれるのが怖いのか。あるいは、彼が本気で知ろうとすること自体が、また自分の心を揺らすからなのか。
たぶん全部だった。
オルドレンは少しだけ眉を寄せる。
「調べるしかないだろう」
その声音は冷たくない。むしろ静かすぎて、引き返す気がないのだと分かる。
「私は、知らないままでいるほうが恐ろしい」
セルフィーネは唇を噛みしめる。
それも分かる。知らない空白の中に、自分が妻を壊すほどの何かをしていた。その事実だけを抱えたまま生きるのは、彼にとって耐え難いはずだ。
けれど、知れば全部が解決するわけでもない。
むしろ、知った先で何が待っているのかは、セルフィーネにだって分からない。誤解があるのかもしれない。取り返しのつかない事実があるのかもしれない。いずれにせよ、その先に楽な結末などなさそうだった。
「閣下」
扉の向こうから声がし、侍医が戻ってくる気配がした。
オルドレンは一度だけセルフィーネから目を離し、またすぐに戻した。
「私は始める」
それだけを告げる。
「夫婦の間に何があったのかを」
セルフィーネはもう何も言えなかった。
言えば止められるわけではないと分かったし、止める資格が自分にあるのかも分からなかった。むしろ、ずっと知ってほしいと願っていたのは自分だったのではないか、とさえ思う。何があって、何を誤解し、どうしてここまで壊れたのか。その全体を、やっとこの人が見ようとしている。
それがこんなに怖いなんて、知らなかっただけで。
侍医が入室し、診断書の最終確認を始める。王都の医師も戻ってきて、今後しばらくは安静を続けつつ、刺激を避けることを念押しする。オルドレンは形式上はそれに従う返事をしたが、その目の奥がもう別の方向を見ていることを、セルフィーネは分かってしまった。
この人は始めるのだ。
記憶の空白を、外側から埋める作業を。
夫婦の間に何があったのかを、本格的に調べ始めるのだ。
それはたぶん、止められない。
診察が終わり、王都の医師たちが退出すると、部屋の中には妙な静けさだけが残った。暖炉の火の音と、紙を整える侍医の手元の微かな擦れだけがある。
セルフィーネは立ち上がり、一礼した。
「私はこれで」
オルドレンが呼び止めるかと思った。だが彼は呼び止めなかった。代わりにただ、青灰色の目でセルフィーネを見つめる。その視線には昨日までの平坦さがなく、かといって婚約時代の柔らかな熱だけでもない。何かを決意した人間の、深く静かな色だった。
廊下へ出ると、冷えた空気が肌を撫でる。
セルフィーネは歩き出したが、数歩進んだところで一度だけ立ち止まった。窓の外は相変わらず鈍い灰色で、庭木の先が風に揺れている。何も起きていないような顔をした冬の午後だった。
けれどもう、何もかもが変わり始めている。
オルドレンはただ事故で忘れたのではない。耐え難い何かごと、自分の中の記憶を切り落としている。その中心に自分がいると気づいてしまった。だからこそ、彼は知ろうとするのだ。
それはきっと、避けられない。
セルフィーネはゆっくり息を吐き、また歩き出した。
過去は、もう黙っていてはくれないのだと、鈍い空の下でようやく本当の意味で理解した気がした。
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