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第14話 花を植える日
朝の光が、今日は少しだけやわらかかった。
前日までの白く乾いた光とは違う。冷たさはまだ残っているのに、窓辺へ落ちる色の奥へ、かすかな蜜のようなぬくもりが混じっていた。南の別邸へ移ってから三日目の朝。リュゼリアは長椅子の上で毛布を膝にかけ、開いたままの本を手元へ置きながら、その光をぼんやり眺めていた。
ここへ来てから、朝の時間は不思議なほど長くなった。
王都の屋敷にいた頃は、目を覚ました瞬間から一日の輪郭が先に決まっていた。何時に起き、何を着て、誰と会い、どの書類へ目を通し、どの客へ返書を送り、どの部屋へ花を替えさせるか。何もかもがすでに自分を待っていて、寝台の中でさえ、心だけが先に食堂や執務室へ向かっていた。
だが、ここでは違う。
朝はただ朝としてやってくる。
まだ温まりきらぬ空気。湖の水の匂い。湿った土の気配。遠くで鳴く水鳥の声。窓の外の低木を渡る風の細い音。それらが、誰のためでもなく、ただそこにある。
最初の朝は、その名前のない静けさが落ち着かなかった。誰の顔色も窺わずにいていいことが、かえって恐ろしかった。だが三日目の今朝は、その落ち着かなさが少しだけ変わっていた。まだ完全に慣れたわけではない。それでも、静けさがただの空白ではなく、自分の呼吸を取り戻すための場所なのかもしれないと、ようやく思えるようになっていた。
窓の外には、小さな庭が見える。
王都の屋敷の庭とは比べものにならぬほど控えめな庭だった。きっちりと幾何学に整えられた花壇も、季節ごとに色を変える温室も、噴水もない。低い石垣に囲まれた土の区画がいくつかあり、館の壁際には若いハーブの列が並び、奥のほうにはまだ葉の少ない果樹が二本ほど立っている。庭というより、暮らしのための小さな畑と花床を、きちんと整えて人目にもやさしくしたような場所だ。
けれどその素朴さが、リュゼリアは少し好きだった。
ここでは花も、見せるためだけではない。香りを楽しみ、乾かして薬へ使い、食卓へ添え、窓辺へ飾り、季節の移ろいを知るために咲いている。王都の温室で咲く花たちのように、社交の場で人の目を奪うために磨きあげられた美しさとは違う、生きることの延長にある花だった。
「奥様」
薬の入った小さな盆を持って、アイダが寝室へ入ってくる。
「お目覚めでいらっしゃいますか」
「ええ、とっくに」
そう返すと、アイダは少しだけ肩を落とした。
「呼んでくださればよろしかったのに」
「あなた、ようやく少し眠れたみたいだったもの」
リュゼリアが言うと、アイダは返事を濁した。たしかに昨夜の彼女は、この数日のうちではいちばん深く眠っていた。長椅子へ毛布をかけたまま、朝方まで一度も目を覚まさなかったのだ。南の別邸へ移り、館の者たちの手も借りられるようになって、ようやく張りつめていたものが少しだけ緩んだのだろう。
アイダは薬を差し出しながら、窓の外へ目をやる。
「今日は陽がよろしゅうございますね」
「ええ」
リュゼリアは頷く。
「風も昨日よりやわらかいみたい」
「先生が先ほどお見えになりまして、本日、少しだけであれば外気へ当たってもよろしいと」
その言葉に、リュゼリアは目を上げた。
「本当?」
「ただし、ほんの短く。陽の高いうちだけで、足元を冷やさぬようにと」
外へ出ていい。
その一言だけで、胸の中に小さな明かりが点る。王都では、窓の外へ視線をやることはあっても、実際に庭へ出ることなど体調を崩してからはほとんど許されなかった。いや、許されるかどうか以前に、自分でそういう時間を持つ発想を失っていた。外へ出るのなら、客と会うためか、花の出来を確認するためか、何かの行事に付随してでなければならぬと思い込んでいたのだ。
ここでは違う。
ただ少し日へ当たるために、庭へ出ていい。
その事実が妙に新鮮で、少しだけ眩しい。
「お昼の前がよろしいかと、先生は仰っておりました」
「そう」
リュゼリアは薬を飲み、白湯をゆっくり喉へ流し込んだ。胸の奥は相変わらず重く、呼吸を深くすれば痛みがある。それでも、外へ出られるというだけで、身体の中に沈んでいたものが少しだけ持ち上がる気がした。
その様子を見ていたアイダが、ふと穏やかな声で言う。
「館の庭を預かっている老夫婦がおりまして」
「ええ。昨日、廊下でお会いしたわね」
痩せた身体にきびきびとした動きを宿す老庭師のエルンストと、丸い肩とやさしい笑い皺を持つその妻、ミナ。二人ともこの別邸が建つ前からこの土地に住んでいたらしく、館そのものより年季の入った落ち着きを纏っていた。
「奥様がもしお加減よろしければ、小さな苗をいくつか植えるところをお手伝いいただけないかと、昨夜ミナが」
「わたくしに?」
「ええ。庭の南側の花床が空いているので、春の花を少しだけ足したいのだそうです」
リュゼリアは目を瞬いた。
庭へ出て、苗を植える。
その響きが、信じられないほど遠い過去みたいだった。土に触れたのはいつだったろう。王都の温室で咲く薔薇の枝に指を添えたことは何度もあるが、土を掘り、苗を自分の手で植えるなど、侯爵家にいた少女時代以来かもしれない。
「でも、そんなことまでしてよいのかしら」
「少しだけなら、と先生は」
「汚れてしまうわ」
「外気へ当たるのが目的でございますから、汚れはむしろ結構かと」
アイダが珍しく少しだけ冗談めいた口調でそう言い、リュゼリアは思わず笑った。喉に響かぬよう小さく笑っただけなのに、胸の奥がふっと軽くなる。
「では、ほんの少しだけ」
「はい」
アイダの顔がはっきり明るくなった。
◇
昼に近づくころ、リュゼリアは外へ出た。
厚すぎぬ外套を肩へ掛け、裾の軽いドレスへさらに膝丈のエプロンを結ばれる。庭へ出るためだけのその格好が、ひどく新鮮だった。公爵夫人のために誂えられた衣装ではなく、ただ土へ触れるための服。鏡を見た時、妙に自分が若くなったような気がした。いや、若いというより、公爵夫人になる前のどこかへ少しだけ戻ったような気配だった。
玄関からではなく、寝室に近い南の回廊を抜け、小さな石段を下りて庭へ出る。陽は高く、けれど暑すぎない。風は湖からくるのだろう、頬へあたるとひやりとして、そのあとすぐにやわらかくほどける。土の匂いがした。湿り気を含み、けれど重すぎない、春の手前の土の匂いだ。
その匂いを胸いっぱいに吸い込みたくなって、しかし実際に深く吸うと咳き込みそうになる。リュゼリアは小さく息を整えた。それでも、屋内の静かな空気とは違うこの匂いは、身体のどこかへ確かに沁みた。
「奥様」
館の南側、日当たりのよい壁際で、ミナが待っていた。頭に白い布を巻き、分厚いエプロンを掛けた小柄な女だ。傍らには低い腰掛けと、小さな苗の載った木箱が用意されている。エルンストは少し離れた場所で土を軽く耕していたが、リュゼリアの姿を見ると鍬を置いて一礼した。
「お加減、大丈夫でございますか」
「ええ。ここまでなら」
「無理は禁物でございますよ。ほんの少しで」
ミナの口調には貴族相手の過度な仰々しさがない。礼は尽くしているが、この土地に根を張った人間だけが持つ、落ち着いたやさしさがある。リュゼリアはそれに救われるような気持ちになった。
用意された腰掛けへ座ると、足元に土の色が近くなる。乾いて見えた表面の下には、まだ少しだけ湿りがあるらしい。ミナが木箱を開けると、小さな苗がいくつも並んでいた。葉はやわらかく、根元にはまだ培土がこぼれずに残っている。
「何のお花なの?」
リュゼリアが尋ねると、ミナは嬉しそうに答えた。
「白のマーガレットと、薄青のネモフィラでございます。それから少しだけカモミールを」
白と青。
その並びに、リュゼリアは思わず小さく目を細める。王都では、花もまた意味を背負って並べられていた。色の格、季節、家ごとの好み、飾る部屋の目的。けれどここでは、ただこの陽だまりに似合う色だから選ばれたように見える。
「派手ではございませんけれど、春のはじまりにはよろしいかと」
「とても素敵」
素直にそう言えたことが、自分で少し嬉しかった。
ミナが細い手袋を差し出す。だがリュゼリアはそれを見て、少し迷ったあとで首を振る。
「今日は、手袋はなしでいいかしら」
アイダがすぐに反応する。
「奥様、土は冷えます」
「少しだけ、触れてみたいの」
その言い方に、アイダは反対を飲み込んだ。ミナが驚きながらも、そっと頷く。
「では、本当に少しだけ」
リュゼリアは膝の上の外套を整え、ゆっくり手を伸ばした。
土へ指先が触れる。
冷たかった。ひやりとする。その次に、しっとりとした重みが伝わる。王都の温室の土とは少し違う。あちらはもっと管理され、均質で、どこか上品だった。ここはもっと生の土だ。小さな石が混じり、湿り気の濃いところと乾いたところがあり、触れれば指の腹へやわらかくへこむ。人の都合だけではなく、季節や水と一緒に生きている土。
その感触が、驚くほど深く胸に響いた。
「……土って、こんな匂いだったかしら」
思わず零すと、エルンストが少し笑った。
「長く屋内で暮らしておられれば、そう感じましょう」
低い、年輪の入った声だった。
「春先の土は、冬の名残と新しい根の匂いが混じります」
リュゼリアはもう一度、指先で土を掬うようにした。爪の間へ少しだけ入り込む。細く白い指がすぐに汚れる。そのことに不快さはなく、むしろ妙な安堵があった。公爵夫人の指ではなく、ただ花を植える女の指になったみたいだった。
ミナが小さな移植ごてを渡してくる。
「穴は、これくらいで」
言われるまま、リュゼリアは土を掘る。ほんの浅い穴だ。それなのに、腕へ思ったより重みがかかる。普段どれだけ身体を使っていなかったのかを思い知らされる。けれど、その小さな重みさえも、いまはどこか心地よい。
「奥様、無理を」
「大丈夫」
アイダの声をやわらかく制して、リュゼリアは掘った穴へ白いマーガレットの苗をそっと置く。根元を支え、周りの土をやさしく戻し、指先で軽く押さえる。土が指の熱を吸っていく。風が花びらのまだない葉を小さく揺らす。
たったそれだけの作業なのに、胸のどこかに張りついていたものが少しだけほどける気がした。
無心だった。
誰かのために美しく見せる必要もなく、正しく振る舞う必要もなく、上手に話す必要もなく、ただ目の前の土と苗にだけ意識を向けていればいい。そのことが、こんなにも楽なのだと初めて知る。
「こちらは青でございます」
ミナが次の苗を差し出す。ネモフィラの小さな葉は、白いマーガレットよりさらに繊細で、少し触れただけで揺れそうだった。
「隣に植えてもいいかしら」
「ええ。陽が好きですから、寄せすぎぬように」
リュゼリアはまた土を掘る。指先はもう冷たさに慣れていた。代わりに土の湿り気や、細い根が引っかかる感触、掘ったところへ風が少し流れ込む感じがよくわかる。青い苗を置き、土を戻し、そっと押さえる。
白と青。
それが自分の前に並んだとき、リュゼリアは思わずじっと見つめてしまった。
王都の温室では、花はいつも群れで美しく整えられていた。だがここでは、まだ小さな苗が二つ、土の上に置かれているだけだ。咲いてもいない。けれど、その頼りなさがひどく愛おしく見えた。
「……ちゃんと咲くかしら」
ぽつりと問うと、エルンストがすぐ答える。
「土と陽が合えば、咲きます」
簡潔な返答だった。
土と陽が合えば。
それだけで咲く。
余計な飾りも、見栄えも、名目もなく。
その言い方が妙に胸へ残った。
◇
花を植えるあいだ、リュゼリアはほとんど喋らなかった。
ミナが次の苗を渡し、エルンストが水の具合を見て、アイダが時々顔色を確かめる。短いやりとりだけがあり、あとは風の音と、土を掘る小さな音、遠くで水鳥が鳴く声だけだった。
三つ、四つと苗を植えたところで、さすがに胸が少し苦しくなってくる。息を深く吸うと痛みが走る。指先も冷えた。だが不思議と、心は軽かった。
リュゼリアは土の上へ置いた手を見下ろす。
白い手だ。細く、病んでいて、力もない。けれどいまは土にまみれている。爪の際へ黒い土が入り込み、指の節には小さな湿りが残っている。王都の公爵夫人としての自分なら、すぐに拭わせ、元の清潔な指へ戻しただろう。なのにいまは、その汚れが少しだけ誇らしかった。
「奥様」
アイダがそっと声をかける。
「もう、お戻りを」
「そうね」
リュゼリアは頷きかけて、しかし最後にもう一度だけ、土へ触れたいと思った。衝動のようなものだった。彼女は手袋もなしに、指先で植えたばかりの土をそっと撫でた。やわらかい。冷たい。重い。生きているものの下にある土の感触。
その瞬間、胸の中でずっと固く縮こまっていたものが、ほんの少しだけ弛んだ。
王都を出た日から、自分はずっと力が入ったままだった。公爵家を去ると決めた時から、いや、余命半年と告げられた時から、もっと前からかもしれない。何かを失う恐れと、何かを手放す決意と、遅すぎる愛への痛みと、その全部で心はずっと硬くこわばっていた。
でも、いま指の下にある土は、そんなことを何も知らない。
ただ冷たく、湿っていて、苗を受け入れるためにそこにある。
その無関心が、なぜだか優しかった。
「……もう少しだけ、生きたいわね」
ほとんど無意識に、そんな言葉が唇から零れた。
風がその声をさらっていく。ミナもエルンストも、聞こえたのか聞こえなかったのか、何も言わない。だがアイダだけが、はっと息を呑んだのがわかった。
リュゼリア自身も、口にしてから少しだけ驚いた。
生きたい。
それは前にも思った。ヴィルレオの言葉に揺らされて。だがいまのそれは、少し違っていた。誰かのためではなく、誰かに愛されるためでもなく、ただ自分の手で植えたこの小さな苗が咲くところを見たいと思った、その気持ちに近かった。
白い花が開くところ。
青い花が風に揺れるところ。
それを、この庭で見てみたい。
その小さくて具体的な願いが、胸の内へ静かに根を張る。
「奥様」
アイダの声は震えていたが、泣いてはいなかった。
「はい」
「お戻りになりましょう」
「ええ」
立ち上がると、少し眩暈がした。すぐにアイダが支え、ミナが椅子をどける。エルンストは一礼して、植えたばかりの苗の根元へ少しだけ水を注いだ。土が暗く色を変え、苗の周りがしっとりと沈む。
リュゼリアはそれを見つめた。
ほんの小さな花壇。数本の苗。土の匂い。陽だまり。
それだけなのに、自分の中の何かがたしかに変わった気がする。
◇
館へ戻る途中、南の回廊の影にヴィルレオが立っていた。
最初は気づかなかった。アイダに支えられて歩を進め、石段を上がり、回廊へ入ったところで、その気配にようやく顔を上げたのだ。彼は柱の陰に寄るように立ち、こちらを見ていた。どれくらい前からそこにいたのかはわからない。
濃い色の上着のまま、腕も組まず、ただ静かに。
リュゼリアは一瞬だけ足を止めた。
「……旦那様」
呼ぶと、ヴィルレオはほんのわずかに顎を引く。近づいてくるでもなく、すぐに何か言うでもない。視線だけが、土のついたリュゼリアの指先へ落ち、それから顔へ戻る。
「外へ出たのか」
ようやく落ちた言葉は、それだけだった。
「少しだけ」
「医師は」
「少しならと」
「そうか」
また短い応酬。だが今日は、それほど痛くなかった。土に触れたあとだからかもしれない。心のこわばりが少し弛んでいるぶんだけ、彼の不器用さもただそのまま受け取れた。
「花を植えたの」
リュゼリアは自分でも驚くほど自然にそう続けた。
「白と青の小さな苗を」
ヴィルレオの目が、わずかに細まる。
「お前が?」
「ええ」
「無茶だ」
「少しだけよ」
「土だらけだ」
「そうね」
そのやりとりに、アイダがほんの少しだけ目を逸らした。たぶん、二人だけにしてやりたいと思ったのだろう。だがリュゼリアはいま、その配慮すら気にしなかった。
「……楽しかったわ」
ぽつりとそう言うと、ヴィルレオの表情がごく僅かに変わる。
楽しかった。
その言葉が、ここへ来てから初めて彼女の口から出た、痛みでも諦めでもない感想だったからだろう。
「そうか」
声は低いままなのに、そこにははっきりと安堵が混じっていた。
「ええ。びっくりするくらい」
リュゼリアは自分の指先を見る。まだ土が残っている。爪の縁へ入り込んだそれを見て、なぜだか少し笑いたくなった。
「わたくし、こんなふうに土へ触るの、ずいぶん久しぶりだったのね」
ヴィルレオは数秒黙ったあと、低く言う。
「……洗え」
「ええ」
それはいつもの彼らしい答えで、リュゼリアは思わず少しだけ笑った。ほんの短く、胸に負担のかからない程度に。するとヴィルレオは、その笑みを見て一瞬だけ目を伏せた。
たぶん、彼もまた久しぶりに見たのだろう。
何かを諦めた穏やかさではなく、本当に少しだけ気が緩んだ笑みを。
「また植えたいか」
不意の問いに、リュゼリアは顔を上げた。
「また?」
「体が持つなら」
その言い方があまりにもぎこちなくて、けれど以前より少しだけまっすぐで、胸の奥が静かに揺れる。
「……ええ」
リュゼリアは答える。
「花が咲くまでには、もう少しかかるでしょうから」
ヴィルレオはそれに何も返さなかった。だが、ただ一度だけ、植えた花壇のほうへ視線を向けた。
白と青の小さな苗。
土に触れた指先。
少しだけ解けた心。
名前のない静けさの中で迎えた朝は、何も急かさず、何も求めなかった。その代わり、自分の心のこわばりを少しずつほどいて、土の匂いのする小さな願いを残していった。
咲くところを見たい。
その願いはまだ小さい。
けれど、確かに根を下ろし始めている。
リュゼリアはアイダに支えられながら回廊を進み、館の中へ戻っていく。背後には風の中の土の匂いと、植えたばかりの花壇が残った。
あと何度、あそこへ出られるだろう。
あと何回、自分の手で土に触れられるだろう。
それはまだわからない。
でも今日、花を植えた。
その事実だけが、胸の中でひどく静かに、そしてたしかにあたたかかった。
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