王妃失格と呼ばれた私を、敵国の王だけが抱きしめた

なつめ

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最終話 春の温室で、あなたの名を呼ぶ

 春は、音より先に匂いで来る。

 ノルドグランの王宮でそう思うようになったのは、たぶん温室へ通うようになってからだった。雪がやみ、石畳の隙間の白が消え、空の青が少しだけ薄くやわらいでも、北の国の春は最初から見た目に華やかなわけではない。朝晩はまだ冷えるし、風はときどき冬の名残を鋭く運んでくる。庭の木々も、ぱっと色を変えるというより、よく見なければ分からぬほど小さな芽を、黙って枝先へ増やしていく。

 けれど匂いは、先に変わる。

 濡れた土の重さが少しだけ軽くなり、水を含んだ木の匂いに若い青さが混じり、日当たりの良い場所から先に、葉の裏側のようなやわらかな香りが立ちのぼる。冬の終わりまで張りつめていた空気が、気づけば息を深くしても胸を刺さなくなっている。その変化を最初に教えてくれるのが、温室だった。

 戦も、断罪も、会談も、ようやく終わった。

 終わったといっても、何もかもが一晩で綺麗に片づいたわけではない。アルヴェリアではいまだに、寵姫派に連なっていた者たちの家から帳簿が押収され、王太后付きの女官たちの処遇が整理され、横流しに手を貸していた商会が一つずつ名を失っているという報せが来る。ノルドグラン側でも、交易路の引き直しや、春以降の備蓄再編、流行病の余波への対処が続いていた。

 だが、それでも。

 王宮の空気は、あの冬とはもう違う。

 人々は、今日を生き延びるための怯えだけではなく、その先の季節を見て動き始めている。広場では鍋の湯気より、干し布の白さや若い菜の色が目につく日が増えた。炊き出しの列はまだあるが、その傍らで春の種を売る店も開く。医務区画へ運ばれる者の数はゆっくり減り、代わりに温室から北棟へ回される若葉の鉢が増えた。

 そして王宮の温室には、新しい花が咲き始めていた。

 それは、春の中心に咲くような派手な花ではない。
 小さく、背の低い、薄い青や白や、まだ色づききらぬ黄をした花たちだ。

 けれどその控えめな花が、冬の終わりを越えた今のノルドグランには、ひどくよく似合って見えた。

 その日の夕方、リュゼリアは一人で温室へいた。

 王妃となってからも、温室へ来る時の足取りは変わらない。侍従や兵は必要な距離を保つし、東翼から北棟へ向かう道すがら、会釈の深さは確かに変わった。だが温室の扉を開けてしまえば、そこにあるのは王妃のために飾り立てられた空間ではなく、土と葉と水と光の匂いだ。

 それが、リュゼリアにはありがたかった。

 王妃になってからの日々は、決して重すぎるばかりではなかった。むしろ不思議なくらい自然に過ぎている瞬間が多い。王宮の者たちは、彼女をただ高く棚へ上げるのではなく、これまで通りに帳簿を持ってきて、薬草の相談をし、民の暮らしに関わる細かな判断を問う。冠を受けたからといって突然遠ざけるのではなく、むしろ「この国の王妃らしい近さ」の中へ置いてくれる。

 それでも時々、ふと立ち止まる瞬間がある。

 自分は本当にここにいていいのだろうか。
 ちゃんと、この国の王妃になれているのだろうか。
 失格と呼ばれた過去は、もう本当に背中へ貼りついていないのだろうか。

 そういう問いが、何の前触れもなく胸の奥に顔を出す。

 以前のリュゼリアなら、その問いを誰にも言わなかっただろう。黙って飲み込み、もっと完璧に振る舞うことで消そうとしたはずだ。だが今は違う。問いが消えるまで一人で噛み締めなくてもよい場所があると知っている。

 そしてその場所の一つが、温室だった。

 夕方の温室は、昼と夜の境目にある。

 硝子天井の向こうで、空はまだ青みを残している。だが陽は低く、棚の影は長い。水を含んだ土の匂いに、昼の熱と夜の冷えが少しずつ混ざり始める。葉の裏には光がまだ残り、花びらの薄い色はその光を透かして柔らかく見える。

 リュゼリアは、小さな白花の鉢の前にしゃがみこんでいた。

 花弁は五枚。雪の名残のように白いのに、中心だけが淡く緑を帯びている。冬祭りの花冠に使われていた乾燥花とは違う、生きた春の白だ。その白を見ていると、長かった冬の終わりに、やっと余計な意味を持たずに「白」を見られるようになったのだと、ふと思った。

 アルヴェリアでは、白はいつも何かを意味した。
 王妃らしさ、無垢、飾り、見栄え。
 そして自分が足りないということ。

 今ここで咲いている白は、ただ春に咲くから咲いている。
 そのことが、妙にうれしかった。

「またしゃがんでいる」

 背後から、低い声がした。

 振り返る前に、誰かは分かる。

 ゼルヴェインだ。

 その声を聞くだけで、胸の奥の、言葉にしにくいところが少しだけ緩む。求婚の夜以来、その緩みは前より自然になった。王妃と王として並ぶ時間が増えても、彼は私的な場へ入る時の気配を変えない。急に甘くもしないし、威厳を持ち込みすぎもしない。ただ、以前からそうだったように、余計なものを削いだまま近づいてくる。

 リュゼリアはしゃがんだ姿勢のまま、少しだけ顔を上げた。

「花を見ていたの」
「見れば分かる」
「ひどい言い方ね」
「事実だ」

 その短いやり取りに、口元がほんの少しだけ和らぐ。

 ゼルヴェインは外套を脱ぎ、いつものように長椅子の近くへ置いた。最近は温室へ来る時、王としての重い外衣より、動きやすい濃紺の上衣で現れることが多い。王宮の外では決して見せぬ、少しだけ肩の力の抜けた姿だ。その姿を見ると、リュゼリアは「自分だけが知っているこの人の時間」があることを、静かに実感する。

「今日は」
 彼が言う。
「北棟で春の備蓄表を見た」
「ええ」
「また妙なところへ線を引いていたな」
「妙って」
「豆の配分と薬草束の数を一緒に見ていた」
「関係あるもの」
「普通は別に見る」
「普通がいつも正しいとは限らないでしょう」
「そうだな」

 そう言って、彼は彼女のすぐ近くへ来た。

 手を差し出すわけでもない。
 すぐ抱き寄せるわけでもない。
 ただ、しゃがんでいるリュゼリアと同じ高さになるよう、少しだけ腰を落とす。

 それだけで十分だった。

 リュゼリアは花から目を離し、ゼルヴェインの方を見る。夕方の光が、その横顔の輪郭を柔らかく削っている。いつも冷たく見える目も、温室の中ではどこか土の匂いを帯びて見えた。

「疲れているか」
 彼が問う。
「少し」
「北棟か」
「それもあるけれど」
 リュゼリアは言葉を選ぶ。
「……最近、時々」
「何だ」
「本当にここまで来たのだなって、考えるの」
「……」
「新しい王妃として呼ばれて」
「……」
「冠を受けて」
「……」
「民の前に立って」
「……」
「それが、時々、まだ不思議で」

 自分でも、ひどく曖昧な言い方だと思う。けれど、そうとしか言えなかった。喜びでも、不安でも、誇りでも、どれか一つにきれいに分けられない感覚。失格と呼ばれた人生の終わりに、こんな場所が待っているなど、以前は想像もできなかったから。

 ゼルヴェインは少しだけ目を細めた。

「不思議なら、それでいい」
「……」
「慣れろとは言わん」
「あなたは本当にそういうわね」
「そういう性分だ」
「知ってる」

 その最後の一言を、リュゼリアはほとんど考えずに言っていた。

 知ってる。

 ああ、とその瞬間、自分で少しだけ驚く。
 そうだ。自分はもう、この人の性分を知っていると言えるのだ。沈黙を急がないこと。触れる前に必ず問うこと。敵に対しては一切甘くないこと。暮らしの細部に案外目が届くこと。自分の感情を飾らず、それでいて軽くもしないこと。

 そして、それを知ったうえで、隣で生きたいと自分で選んだのだ。

 胸の奥が少しだけ熱を持つ。

 ゼルヴェインは、その変化に気づいたのかどうか、ひどく静かな声で言った。

「リュゼリア」

 名を呼ばれる。
 いつも呼ばれてきた名。
 けれど今、その呼び方はまた少し違う。
 王妃としてではなく、ただ彼女自身を呼ぶ声として、以前より深く胸に落ちる。

 リュゼリアは応えようとして、ふいに思った。

 まだ、自分は彼の名を呼ぶ時、心のどこかでほんの少しだけためらっているのではないかと。求婚を受け、戴冠を終え、隣で立つようになっても、それでも名を呼ぶことは、彼女の中でまだ「意識してすること」だった。

 けれど今、この夕方の温室で、そのためらいが不意に薄くなった。

 たぶん理由はない。
 あるいは、ここまで来るまでの全部が理由だったのかもしれない。
 抱きしめられたこと。
 求婚されたこと。
 自分で選んだこと。
 そして、そのあとも変わらず、暮らしの話と花の話ができること。

 それらが全部つながって、名を呼ぶことが、やっと自然な息の延長に近づいたのだろう。

「ゼルヴェイン」

 その名は、思ったより静かに出た。

 けれど、温室の空気が少しだけ変わるには十分だった。

 彼の目が、ほんのわずかに見開かれる。
 驚きというほど大げさではない。だがたしかに、今までと違うものを受け取った顔だった。

 リュゼリアはその表情を見て、胸の奥が少しだけ熱くなる。
 こんなことでも、この人はちゃんと受け取るのだ。

「……何だ」
 ゼルヴェインが低く言う。
「呼びたかったの」
「そうか」
「ええ」
「なら、もっと呼べばいい」
「そう簡単に言うのね」
「難しくしていたのはお前だ」
「……そうかもしれないわ」

 そのやり取りのあとで、沈黙が落ちる。

 けれど今夜の沈黙は、これまでのどの夜とも少し違っていた。重くない。痛くない。何かを言わねばという緊張もない。ただ、名前を呼んだことの余韻が、やわらかな水面みたいに二人のあいだへ広がっている。

 リュゼリアはその余韻の中で、ふと思ったことをそのまま口にした。

「失格と呼ばれた人生の終わりが」
「……」
「こんなふうだなんて、思わなかった」

 ゼルヴェインは、すぐには答えなかった。

 彼もまた、その言葉の重さを測っているのだと分かる。失格と呼ばれた人生。そこには、アルヴェリアでの日々全部が含まれている。失われた子も、値札のついた婚姻も、無能の烙印も、遅すぎる愛の言葉も。そういうものを経た上で、今ここにいるのだという実感。

「終わり、か」
 やがて彼が言う。
「ええ」
「そうだな」
「……」
「終わりでもあり」
「……」
「始まりでもある」

 その答えは、いかにも彼らしかった。綺麗に一つへ収めない。終わりなら終わり、始まりなら始まりと単純に言わず、両方だと認める。失格と呼ばれた人生は確かに終わった。だがその終わりの先に、新しい暮らしが始まっている。痛みが消えたわけではないが、痛みだけで定義される人生でもなくなった。

 リュゼリアは小さく頷いた。

「……そうね」
「何だ」
「始まりでもある」

 言葉にしてみると、胸の中へすとんと収まる感じがした。

 完璧な王妃になることが、終着点ではない。
 誰からも非の打ちどころのない女になることでもない。
 ただ、失格と呼ばれた過去の終わりに、ようやく「そのままでいても愛される」という生き方があるのだと知ること。その方が、ずっと大きな意味を持っている。

 ゼルヴェインがそこで、ゆっくりと手を伸ばした。

 確認を忘れない人だ。今も、急に抱き寄せたりはしない。ただ、届く場所へ手を置く。相手がそれを見て、選べるように。

 リュゼリアはその手を見て、少しだけ笑った。

「今日は」
 彼女は言う。
「聞かないのね」
「何を」
「抱くぞ、とか」
「必要か」
「……」
「嫌か」
「嫌じゃないわ」

 その返答の方が、もう確認になっている。

 ゼルヴェインはそこで初めて、彼女を引き寄せた。

 腕は深い。
 けれど重すぎない。
 温室の夕方の匂いと、外の冷えを少し纏った彼の衣の感触が、頬の横にある。

 抱きしめられることに、もう怯えない。
 それどころか、自分からその熱へ少しだけ身を預けることができる。

 それがどれほどの変化か、リュゼリア自身が一番よく知っていた。

「……あたたかい」
 思わず零れる。
「そうか」
「ええ」
「花の方があたたかそうに見えたが」
「それは土があたためられてるから」
「なら、お前も同じだな」
「何が」
「ようやく、あたためられた」

 その一言に、胸の奥が静かに満ちる。

 ようやく、あたためられた。

 冬の長かったこの国で、それは何より正確な言い方かもしれなかった。凍えていたものが、一気に燃え上がるのではない。ただ、少しずつ、時間をかけて、もう冷えに支配されなくなること。その変化の積み重ねの中に、今の幸福がある。

 リュゼリアは彼の胸へ額を預けながら、温室の匂いを吸い込んだ。

 新しい花の匂い。
 濡れた土。
 若い葉。
 火鉢の残り熱。
 そして、ゼルヴェインの匂い。

 それら全部が混ざり合って、ようやく春なのだと教えてくる。

 完璧な王妃になることが幸福ではない。
 過去をすべて忘れることでもない。
 失われたものがなかったことになるわけでもない。

 それでも、なお。

 名前を自然に呼び、
 その名を呼んだことを自然に受け止められ、
 抱き寄せられても怖くなく、
 役目ではなく自分の意志で隣にいる。

 そのままで愛される幸福とは、きっとこういう静かな温度のことなのだろう。

 温室の外では、王宮の夜がゆっくり降りていく。
 だが硝子の向こうの闇は、もう冬のように閉ざしたものには見えなかった。

 新しい花は、これからもっと咲くだろう。
 国も、暮らしも、二人の時間も、まだこれからいくつも変わっていく。
 それでもリュゼリアは、もう知っている。

 失格と呼ばれた人生の終わりにあったのは、
 完璧な王妃になることではなく、
 そのままで愛されることだったのだと。

 そしてそのことを、春の温室で、ようやく少しも怖れずに受け取れるようになったのだと。

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