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桃川鈴加

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「リリィの記憶回復大作戦」

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霧深い「静寂の山脈」中腹にそびえ立つレオネス荘。朝の陽光が大きな窓から差し込むダイニングルームでは、今日もいつものように賑やかな朝食タイムが始まっていた。

「今日もメシが美味いな~。【料理マスター】様々やで」

レオは満足そうに手作りのホットケーキを頬張りながら、自分のスキルに感謝していた。【料理マスター】で作った朝食は、地球時代の貧しい食生活とは雲泥の差だった。

「俺様の舌も満足だ。5000年生きてきて、これほど美味い食事は初めてだぞ」

人間の姿になったカイロスが、燃費節約のため普段の50センチサイズから人間大に戻って食事をしている。長い銀髪が朝日に輝き、イケメン度は相変わらず異常に高い。

「レオの料理にかかる食材費、1日平均1200セルン。月36000セルン...まあ、許容範囲ね」

メリサは手帳に数字を書き込みながら呟く。元魔王軍四天王の彼女にとって、家計管理は最重要任務だった。

「この優雅な朝食タイム、年間食費43万2000セルンの価値はありますわね」

もちろん、実際の支出はゼロである。
レオたちが使っている食材は、ほぼすべてレオのスキルと山での採集によって賄われている。もしこれらを市場に卸せば、一日分で少なくとも1200セルン、月36000セルン、年間食費43万2000セルンということである。

エリカは貴族らしく上品にナプキンで口元を拭いながらも、しっかりと金銭計算をしていた。没落してから拝金主義になった彼女らしい発言だ。

「族長時代は芋ばかりだったからな...こんな贅沢、申し訳ない気分だ」

リューナは感慨深げに朝食を味わっている。ダークエルフの隠れ里では、こんな豪華な食事は夢のまた夢だった。

そんな中、一人だけ違った様子を見せているのがリリィだった。普段なら「美味しいのじゃ~!」と元気よく食べているはずなのに、今朝はぼーっと宙を見つめている。

「リリィちゃん、どうしたんですの?食欲がないみたいですけど」

エリカが心配そうに尋ねると、リリィは小さくため息をついた。

「ねえ、レオお兄ちゃん...私、やっぱり記憶がないのが気になるのじゃ...」

一同の箸が止まった。リリィは普段は明るく振る舞っているが、時々こうして不安そうな表情を見せることがある。創造神らしい力を持ちながらも、記憶を失った幼い少女の心には、深い不安が宿っているのだ。

「リリィ...」

レオが声をかけようとすると、リリィは続けた。

「みんなはそれぞれ過去があるでしょう?レオお兄ちゃんは前の世界のこと、カイロスお兄ちゃんは竜王族のこと、メリサお姉ちゃんは魔王軍のこと、エリカお姉ちゃんは貴族のこと、リューナお姉ちゃんは族長のこと...」

リリィの金色の瞳に涙がたまっていく。

「でも私は...私は何もわからないのじゃ。どこから来たのか、何をしていたのか、家族はいるのか...本当に私はここにいていいの?みんなの邪魔になってないの?」

その言葉に、レオは立ち上がって声を荒げた。

「バカヤロウ!何言ってんだ、リリィは俺たちの大切な家族だろうが!」

「そうだ。記憶があろうがなかろうが、お前は俺たちの妹分だ」

カイロスも竜王としての威厳を込めて断言する。

「計算上、リリィの存在価値は無限大よ。家族に損得勘定なんてないの」

メリサは手帳を閉じて、珍しく感情的な口調で言った。

「リリィちゃんがいないレオネス荘なんて、考えられませんわ」

エリカも涙ぐみながら言う。

「記憶より大切なものがある。今、ここにいる仲間との絆だ」

リューナも力強く頷いた。

しかし、リリィの不安は簡単には拭えない。

「でも...でも私、時々怖い夢を見るのじゃ。暗くて、冷たくて、誰もいなくて...一人ぼっちで泣いている夢...そんな時、本当の私はどこにいるんだろうって思うのじゃ」

リリィの頬に涙が流れた。普段の天真爛漫な姿からは想像できない、深い孤独感が込められた言葉だった。

レオは席を立つと、リリィの前にしゃがんで優しく頭を撫でた。

「リリィ、よく聞いてくれ。確かに俺たちには過去がある。でもな、その過去があるから今があるってわけじゃない。今があるから、過去に意味が生まれるんだ」

「レオ...」

「俺も前の世界じゃただの借金まみれのサラリーマンで、毎日がつらくて、死にたいって思ってた。でも今は違う。借金は999億に増えたけど、お前たちがいるから頑張れる。過去なんかより、今のお前たちとの毎日の方がずっと大切だ」

レオの言葉に、他のメンバーも頷く。

「よし!じゃあ決めた!今日は『リリィの記憶回復大作戦』だ!」

「え?」

一同が驚く中、レオは拳を握りしめた。

「みんなでリリィの記憶を取り戻す手伝いをしよう!何か思い出しそうなものを持ち寄って、リリィの記憶を刺激するんだ!」

「でも、記憶を無理に取り戻そうとするのは危険じゃないか?」

リューナが心配そうに言うが、レオは首を振った。

「無理はさせない。でも、リリィが不安に思ってるなら、俺たちにできることをやってやりたいんだ。な、リリィ?」

リリィは涙を拭いて、小さく頷いた。

「うん...みんなが一緒なら、怖くないのじゃ」

「よし!それじゃあ、『リリィの記憶回復大作戦』開始だ!」

こうして、借金まみれの異世界転移者たちによる、前代未聞の記憶回復作戦が始まった。
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