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第2章 王立ルミナス学院 1年目
第10話 食堂にて
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昼の鐘が鳴り、学院の食堂は賑わいを見せていた。
銀の食器が並ぶ長いテーブルには、新入生たちが思い思いに席を取り、談笑していた。
クラリスは、また窓際の席に一人で座っていた。
ロジーナはまだ授業の内容について、先生に質問してくるとのことで、少し遅れてくる予定だった。
スープにスプーンを入れながら、クラリスは周囲の視線を感じていた。
それは、昨日と変わらない。
“数字”を見ている目。
“王子の婚約者”としての目。
そのときだった。
食堂の入り口が静かにざわめいた。
第一王子、レオニス・グランフェルドが入ってきた。
完璧な制服姿。
無駄のない歩き方。
そして、誰もが一瞬で空気を変える存在感。
クラリスは思わず背筋を伸ばした。
彼がこちらに向かって歩いてくる。
まさか、と思った瞬間――
「失礼、ここは空いているかな?」
レオニスが、クラリスの向かいの席に立っていた。
「……ええ、空いてますわ。」
クラリスは、できるだけ冷静に答えた。
レオニスは静かに腰を下ろし、食器に手を伸ばした。
「あの晩餐会以来だね?違うクラスで残念だよ。」
その声は、昨日の入学式での挨拶と同じく、澄んでいてよく通った。
けれど、今は少しだけ柔らかさがあった。
「……ええそうですね、私も大変でしたから。」
「何が大変なのだ?私の婚約者になるのだからそれくらい当然だろう。」
クラリスは言葉を間違えたかなと思いながら、別の話題を振ることにした。
「そういえば、今日歴史の授業でレイモンド・カスティールという人物が出てきたのですが…」
レオニスはスープを口に運びながら、わずかに目を細めた。
「制度の始まりを象徴する人物だな。だが、あまり有名ではないな。」
クラリスはその言葉に、少しだけ驚いた。
王族しか知らないことがあるかと思い、聞いてみたがこの様子だとレオニスはそれ以上知らなさそうだった。
「そう……ですか。」
レオニスはクラリスを見た。
その目は、晩餐会での“制度を見る目”と同じ目をしていた。
彼女自身ではなく“数字”を見ているような――そんな気がした。
「君の数字は高い。それが何を意味しているのか、きちんと理解しているようだな。」
クラリスは目をそらした。
その瞬間、ロジーナが食堂に入ってきた。
クラリスは立ち上がり、軽く会釈した。
「今日はありがとうございました。ご一緒できて、光栄でした。それではまた。」
レオニスは頷いただけで、何も言わずに席を立ち、別のテーブルへと歩いていった。
ロジーナが近づいてきて、そっと囁いた。
「王子と……話してたんですか。」
クラリスは、スープの冷めた香りを感じながら、静かに答えた。
「ええ、まあ。ただの雑談よ。」
「そうですか。何か嫌なことでも言われました?」
クラリスは、軽く微笑んだ。
「たいしたことじゃないわ。それより、先生に何を聞きに行っていたの?」
レオニスも流石に婚約者とその友人が二人で昼食を食べていたら、寄ってこなかったかもと思いながら尋ねた。
「ええっと。今日の授業に出てきたレイモンド・カスティールについてです。あんまり聞いたことがない人だったので。」
「そうね。私も気になったわ。それで先生はなんと?」
「先生は教科書以上のことは教えることはできないとのことで…。」
「そう…変な方針ね。」
クラリスは少しがっかりしながら、残っていた冷めたスープを食べ終える。
「急がないと、もうすぐ午後の授業が始まってしまうわよ。」
そうロジーナを急かし、クラリスは席を立ち、食器を片付けに行く。
「待ってください~。」
急いで昼食を食べ終えたロジーナと食堂を後にし、次の授業に向かうのだった。
*
夜、学院の灯が静かに消えていく。
クラリスは寮の個室で、机に向かっていた。
窓の外には、月が中庭の花々を淡く照らしている。
今日一日を振り返ると、胸の奥にいくつもの感情が渦巻いていた。
入学式の余韻。同じクラスの方とこれからうまくやっていけるかしら。でもロジーナと仲良くなれそうだわ。
初めての授業。基本的に入学前の3年間でかなり勉強は進めていたおかげか、今のところかなり順調だ。
そして…
食堂でのレオニスとの会話。
クラリスはペンを手に取り、ノートの余白にそっと書き込んだ。
「数字にふさわしい者って、何?」
レオニスの言葉が、まだ耳に残っていた。
完璧な王子。
制度の代弁者。
そして、自分を“婚約者”ではなく、“制度の成果”として見ている目。
「私は、まだ“数字”でしかないのね」
クラリスはペンを止め、鏡の前に立った。
制服姿の自分が映っている。
整った髪、正しい姿勢、完璧な表情。
けれど、その目の奥には、誰にも見せていない本心があった。
「ふさわしいかなんて、まだ誰にも分からないわ」
クラリスはベッドに腰を下ろし、窓の外を見つめた。
月の光が、静かに部屋を照らしている。
「私は、数字だけじゃない。
でも、数字でしか見られていない。わかっていたことだけど。でも…」
その続きは言葉にはならなかった。そしてそっと胸の奥にしまった。
あの日の誓いはまだ彼女の中に残っている。
その誓いを胸に学院生活を過ごしていったのであった。
銀の食器が並ぶ長いテーブルには、新入生たちが思い思いに席を取り、談笑していた。
クラリスは、また窓際の席に一人で座っていた。
ロジーナはまだ授業の内容について、先生に質問してくるとのことで、少し遅れてくる予定だった。
スープにスプーンを入れながら、クラリスは周囲の視線を感じていた。
それは、昨日と変わらない。
“数字”を見ている目。
“王子の婚約者”としての目。
そのときだった。
食堂の入り口が静かにざわめいた。
第一王子、レオニス・グランフェルドが入ってきた。
完璧な制服姿。
無駄のない歩き方。
そして、誰もが一瞬で空気を変える存在感。
クラリスは思わず背筋を伸ばした。
彼がこちらに向かって歩いてくる。
まさか、と思った瞬間――
「失礼、ここは空いているかな?」
レオニスが、クラリスの向かいの席に立っていた。
「……ええ、空いてますわ。」
クラリスは、できるだけ冷静に答えた。
レオニスは静かに腰を下ろし、食器に手を伸ばした。
「あの晩餐会以来だね?違うクラスで残念だよ。」
その声は、昨日の入学式での挨拶と同じく、澄んでいてよく通った。
けれど、今は少しだけ柔らかさがあった。
「……ええそうですね、私も大変でしたから。」
「何が大変なのだ?私の婚約者になるのだからそれくらい当然だろう。」
クラリスは言葉を間違えたかなと思いながら、別の話題を振ることにした。
「そういえば、今日歴史の授業でレイモンド・カスティールという人物が出てきたのですが…」
レオニスはスープを口に運びながら、わずかに目を細めた。
「制度の始まりを象徴する人物だな。だが、あまり有名ではないな。」
クラリスはその言葉に、少しだけ驚いた。
王族しか知らないことがあるかと思い、聞いてみたがこの様子だとレオニスはそれ以上知らなさそうだった。
「そう……ですか。」
レオニスはクラリスを見た。
その目は、晩餐会での“制度を見る目”と同じ目をしていた。
彼女自身ではなく“数字”を見ているような――そんな気がした。
「君の数字は高い。それが何を意味しているのか、きちんと理解しているようだな。」
クラリスは目をそらした。
その瞬間、ロジーナが食堂に入ってきた。
クラリスは立ち上がり、軽く会釈した。
「今日はありがとうございました。ご一緒できて、光栄でした。それではまた。」
レオニスは頷いただけで、何も言わずに席を立ち、別のテーブルへと歩いていった。
ロジーナが近づいてきて、そっと囁いた。
「王子と……話してたんですか。」
クラリスは、スープの冷めた香りを感じながら、静かに答えた。
「ええ、まあ。ただの雑談よ。」
「そうですか。何か嫌なことでも言われました?」
クラリスは、軽く微笑んだ。
「たいしたことじゃないわ。それより、先生に何を聞きに行っていたの?」
レオニスも流石に婚約者とその友人が二人で昼食を食べていたら、寄ってこなかったかもと思いながら尋ねた。
「ええっと。今日の授業に出てきたレイモンド・カスティールについてです。あんまり聞いたことがない人だったので。」
「そうね。私も気になったわ。それで先生はなんと?」
「先生は教科書以上のことは教えることはできないとのことで…。」
「そう…変な方針ね。」
クラリスは少しがっかりしながら、残っていた冷めたスープを食べ終える。
「急がないと、もうすぐ午後の授業が始まってしまうわよ。」
そうロジーナを急かし、クラリスは席を立ち、食器を片付けに行く。
「待ってください~。」
急いで昼食を食べ終えたロジーナと食堂を後にし、次の授業に向かうのだった。
*
夜、学院の灯が静かに消えていく。
クラリスは寮の個室で、机に向かっていた。
窓の外には、月が中庭の花々を淡く照らしている。
今日一日を振り返ると、胸の奥にいくつもの感情が渦巻いていた。
入学式の余韻。同じクラスの方とこれからうまくやっていけるかしら。でもロジーナと仲良くなれそうだわ。
初めての授業。基本的に入学前の3年間でかなり勉強は進めていたおかげか、今のところかなり順調だ。
そして…
食堂でのレオニスとの会話。
クラリスはペンを手に取り、ノートの余白にそっと書き込んだ。
「数字にふさわしい者って、何?」
レオニスの言葉が、まだ耳に残っていた。
完璧な王子。
制度の代弁者。
そして、自分を“婚約者”ではなく、“制度の成果”として見ている目。
「私は、まだ“数字”でしかないのね」
クラリスはペンを止め、鏡の前に立った。
制服姿の自分が映っている。
整った髪、正しい姿勢、完璧な表情。
けれど、その目の奥には、誰にも見せていない本心があった。
「ふさわしいかなんて、まだ誰にも分からないわ」
クラリスはベッドに腰を下ろし、窓の外を見つめた。
月の光が、静かに部屋を照らしている。
「私は、数字だけじゃない。
でも、数字でしか見られていない。わかっていたことだけど。でも…」
その続きは言葉にはならなかった。そしてそっと胸の奥にしまった。
あの日の誓いはまだ彼女の中に残っている。
その誓いを胸に学院生活を過ごしていったのであった。
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