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第2章 王立ルミナス学院 1年目
第15話 剣を握り始めて
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秋の風が王立ルミナス学院の中庭を吹き抜ける。
クラリスは制服の袖を整えながら、教室の窓辺に立っていた。空は高く澄み渡り、季節の移ろいを感じさせる。
教室では、いつも通りのホームルームが始まろうとしていた。
担任のミス・カレナが教壇に立ち、黒板に新しい文字を記す。
「本日より、学院の教育方針が一部変更となります。これまでの学力中心のカリキュラムに加え、武術・戦術・馬術・サバイバル技術など、実践的な科目が導入されます」
教室がざわめく。
「武術って……剣とか槍とか?」
「サバイバルって、森に放り出されるの?」
「馬術って、馬に乗るの?怖い……」
クラリスは静かにノートを開きながら、ミス・カレナの言葉に耳を傾けた。
「これらの科目は、王国の新しい教育方針に基づくものです。運命力を生かすために、実際の行動力・判断力・生存力を身に着けるためのものです。期末には基礎試験が行われ、2年生の夏には課外演習が予定されています」
クラリスは、ふとロジーナの方を見た。
ロジーナは目を丸くしていた。
「クラリス様……私、剣なんて触ったこともないです」
「私もよ。でも、やるしかないわね」
ミス・カレナは続ける。
「武術に関しては、未経験者も多いため、まずは基礎から始めます。剣術・槍術・弓術のうち、希望するものを選択してください。馬術と戦術は全員必修です」
クラリスは、剣術を選ぶことに決めた。
理由は単純だった。最低限自分の身は守れるようになるため。
「選ばれた以上、みっともない姿は見せられない」
クラリスは、そう自分に言い聞かせた。
*
放課後、学院の武術場では、選択科目の説明会が行われていた。
広い石畳の演習場には、剣、槍、弓が整然と並び、教官たちが待機していた。
クラリスは、剣術の列に並んだ。
その隣には、ゼノ・ヴァルハルトの姿があった。
「君も剣術か」
ゼノが静かに言った。
「ええ。王族の婚約者として、最低限の技術は身につけておきたいと思いまして」
クラリスは、少しだけ強気に答えた。
ゼノは、彼女を見つめながら言った。
「そうだ…数字はいざというとき、助けてはくれない…」
その言葉に、クラリスは少しだけ心を動かされた。
*
その夜、クラリスは寮の部屋で剣術の教本を開いていた。窓の外には、秋の月が静かに輝いていた。
「剣術はやることになるとは思わなかったわ」
入学前の3年間で学力はある程度身に着けることはできているが、貴族の令嬢、まして王族の婚約者が剣を持つことになるとは予想していなかった。
「でも、私は選ばれたのだから。“できない”は許されない…」
そんなプレッシャーを抱えながら、その日はベットで横になった。
*
剣術授業の日。
クラリスは制服の上に支給された訓練用の軽装を身にまとい、授業に臨んでいた。
石畳の演習場には、剣術を選択した生徒たちが整列している。
その中には、ゼノ・ヴァルハルトの姿もあった。彼は無言で立ち、周囲の空気を読むように目を閉じていた。
クラリスは、手にした木剣の重みに少し驚いていた。
(思ったより重い……これで戦うなんて、本当にできるのかしら)
そのとき、演習場に一人の女性が現れた。
長身で、銀の鎧の上に深紅のマントを羽織り、腰には実剣を携えている。鋭い眼差しと凛とした立ち姿――彼女の名は、レイナ・ヴァルシュタイン。王国騎士団副隊長にして、学院の武術特別教官。
「静粛に」
レイナの声は澄んでいて、よく通った。だが、その響きには威圧感があった。
「私は王国騎士団副隊長、レイナ・ヴァルシュタイン。今日から剣術の基礎を教える。貴族だろうが王族だろうが、ここでは関係ない」
クラリスはその言葉に、背筋を伸ばした。
「まずは構え。剣を持つ手は、力を入れすぎるな。剣は振るうものではなく、導くものだ」
クラリスは言われた通りに構えようとするが、腕が震える。
隣のゼノは、すでに完璧な構えをしていた。
「クラリス・ヴェルディア」
レイナが名指しする。
「君の名前はよく知っている。だが、私は剣でしか判断しない」
クラリスは頷き、もう一度構え直す。
(私は、数字だけじゃない。私自身のために、ここにいる)
授業は、基本の足運びから始まった。
前進、後退、回避――剣を振るう前に、身体の使い方を学ぶ。
クラリスは何度もバランスを崩し、転びそうになる。
周囲の生徒たちは、ちらりと彼女を見て囁く。
「やっぱり、数字だけの子なのかな」
「婚約者って言っても、剣は別だよね」
クラリスは歯を食いしばり、立ち上がる。
(見てなさい。私は、できるようになる)
*
次に簡単な打ち合いの練習が始まった。
クラリスは、ロジーナとペアを組むことになった。
「クラリス様、手加減してくださいね……」
ロジーナは木剣を持つ手が震えていた。
「大丈夫よ。お互い、怪我しないようにしましょう」
打ち合いはぎこちなく、何度も空振りした。
けれど、クラリスは少しずつ剣の重みに慣れていくのを感じていた。
授業の終わり、レイナ教官が言った。
「君たちは、剣を握り始めたばかりのひよっこだ。だが、剣は嘘をつかない。努力した者には、必ず応えてくれる」
クラリスは、木剣を見つめた。
その表面には、彼女の手の跡がうっすらと残っていた。
クラリスは制服の袖を整えながら、教室の窓辺に立っていた。空は高く澄み渡り、季節の移ろいを感じさせる。
教室では、いつも通りのホームルームが始まろうとしていた。
担任のミス・カレナが教壇に立ち、黒板に新しい文字を記す。
「本日より、学院の教育方針が一部変更となります。これまでの学力中心のカリキュラムに加え、武術・戦術・馬術・サバイバル技術など、実践的な科目が導入されます」
教室がざわめく。
「武術って……剣とか槍とか?」
「サバイバルって、森に放り出されるの?」
「馬術って、馬に乗るの?怖い……」
クラリスは静かにノートを開きながら、ミス・カレナの言葉に耳を傾けた。
「これらの科目は、王国の新しい教育方針に基づくものです。運命力を生かすために、実際の行動力・判断力・生存力を身に着けるためのものです。期末には基礎試験が行われ、2年生の夏には課外演習が予定されています」
クラリスは、ふとロジーナの方を見た。
ロジーナは目を丸くしていた。
「クラリス様……私、剣なんて触ったこともないです」
「私もよ。でも、やるしかないわね」
ミス・カレナは続ける。
「武術に関しては、未経験者も多いため、まずは基礎から始めます。剣術・槍術・弓術のうち、希望するものを選択してください。馬術と戦術は全員必修です」
クラリスは、剣術を選ぶことに決めた。
理由は単純だった。最低限自分の身は守れるようになるため。
「選ばれた以上、みっともない姿は見せられない」
クラリスは、そう自分に言い聞かせた。
*
放課後、学院の武術場では、選択科目の説明会が行われていた。
広い石畳の演習場には、剣、槍、弓が整然と並び、教官たちが待機していた。
クラリスは、剣術の列に並んだ。
その隣には、ゼノ・ヴァルハルトの姿があった。
「君も剣術か」
ゼノが静かに言った。
「ええ。王族の婚約者として、最低限の技術は身につけておきたいと思いまして」
クラリスは、少しだけ強気に答えた。
ゼノは、彼女を見つめながら言った。
「そうだ…数字はいざというとき、助けてはくれない…」
その言葉に、クラリスは少しだけ心を動かされた。
*
その夜、クラリスは寮の部屋で剣術の教本を開いていた。窓の外には、秋の月が静かに輝いていた。
「剣術はやることになるとは思わなかったわ」
入学前の3年間で学力はある程度身に着けることはできているが、貴族の令嬢、まして王族の婚約者が剣を持つことになるとは予想していなかった。
「でも、私は選ばれたのだから。“できない”は許されない…」
そんなプレッシャーを抱えながら、その日はベットで横になった。
*
剣術授業の日。
クラリスは制服の上に支給された訓練用の軽装を身にまとい、授業に臨んでいた。
石畳の演習場には、剣術を選択した生徒たちが整列している。
その中には、ゼノ・ヴァルハルトの姿もあった。彼は無言で立ち、周囲の空気を読むように目を閉じていた。
クラリスは、手にした木剣の重みに少し驚いていた。
(思ったより重い……これで戦うなんて、本当にできるのかしら)
そのとき、演習場に一人の女性が現れた。
長身で、銀の鎧の上に深紅のマントを羽織り、腰には実剣を携えている。鋭い眼差しと凛とした立ち姿――彼女の名は、レイナ・ヴァルシュタイン。王国騎士団副隊長にして、学院の武術特別教官。
「静粛に」
レイナの声は澄んでいて、よく通った。だが、その響きには威圧感があった。
「私は王国騎士団副隊長、レイナ・ヴァルシュタイン。今日から剣術の基礎を教える。貴族だろうが王族だろうが、ここでは関係ない」
クラリスはその言葉に、背筋を伸ばした。
「まずは構え。剣を持つ手は、力を入れすぎるな。剣は振るうものではなく、導くものだ」
クラリスは言われた通りに構えようとするが、腕が震える。
隣のゼノは、すでに完璧な構えをしていた。
「クラリス・ヴェルディア」
レイナが名指しする。
「君の名前はよく知っている。だが、私は剣でしか判断しない」
クラリスは頷き、もう一度構え直す。
(私は、数字だけじゃない。私自身のために、ここにいる)
授業は、基本の足運びから始まった。
前進、後退、回避――剣を振るう前に、身体の使い方を学ぶ。
クラリスは何度もバランスを崩し、転びそうになる。
周囲の生徒たちは、ちらりと彼女を見て囁く。
「やっぱり、数字だけの子なのかな」
「婚約者って言っても、剣は別だよね」
クラリスは歯を食いしばり、立ち上がる。
(見てなさい。私は、できるようになる)
*
次に簡単な打ち合いの練習が始まった。
クラリスは、ロジーナとペアを組むことになった。
「クラリス様、手加減してくださいね……」
ロジーナは木剣を持つ手が震えていた。
「大丈夫よ。お互い、怪我しないようにしましょう」
打ち合いはぎこちなく、何度も空振りした。
けれど、クラリスは少しずつ剣の重みに慣れていくのを感じていた。
授業の終わり、レイナ教官が言った。
「君たちは、剣を握り始めたばかりのひよっこだ。だが、剣は嘘をつかない。努力した者には、必ず応えてくれる」
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