どこかで見たような異世界物語

PIAS

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第二章

第31話 ダンジョン確認調査

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「職業……ねぇ」

 いまいち理解できていないような信也だが、既に龍之介や咲良による解説は受けている。
 ただ、この世界ではどういった仕組みなのかまでは情報が足りず、よくある例を紹介しながら予想をぶつけあっていた感じだ。


 他にもジョーディとの会話の中で気になっていた"魔物暴動(モンスターリヴォルト)"、そして『パノティア』という名前だと思われる帝国の事や、"祝福されたダンジョン"に、天恵スキルなどなど。

 色々気になっていた事をあれこれ話し合ってみるも、結局明確な答えを知る者がいないので、話は平行線のままだった。
 しかしそれでもファンタジー知識に疎い者達にも多少の知識が――この世界で通用するかはさておき――いきわたる事になったので、全部が全部無駄だったという事でもないだろう。

 夜も更け、既に《ジャガー村》の大半の村人が眠りにつく頃。
 思わず長引いてしまった話をようやく切り上げた異邦人達は、各々男女別に分かれて床に就いた。

 その際、男に比べ女の方が人数が多かったので、最初に案内された少し大きな家が女性用の『女寮』。少し小さい方が男性用の『男寮』として使うことになった。
 ただし、ベッドの数が足りていない為、男性陣も女性陣も何人かは床や壁に寄り添って寝る形になる。

 それでも今までのように魔物を警戒する必要もなく、地面の床だが屋内で眠れるというのは格別なものだった。
 今までの疲れと、夜更けまで話していた事も重なり、彼らは泥のようにぐっすりと眠るのだった。


▽△▽



 明けて翌朝。
 ドアをドンドンと激しく叩く音に最初に気付いたのは由里香だった。
 寝ぼけ眼で玄関へと向かうその顔は、騒音で起こされた事によって、表情にイライラが見え隠れしている。
 フラリフラリとした足取りで玄関へたどり着いた由里香が、無言でドアを開けると、そこには清々しい顔をしたジョーディが立っていた。


「あ、おはようございます。先日申しました通りお迎えに――」

「はやすぎ」

 ジョーディが全てを言い終わる前に、由里香の拳がジョーディの腹部へとめりこむ。

「ぐべらっ!!」

 謎の奇声を発して腹部を抑えながらうずくまるジョーディ。
 かと思うと、慌ててその場から少し離れ、

「おぉぅえぇぇ……」

 と、先ほど食べたばかりの朝食をぶちまけていた。

 そして肝心の由里香はというと、ジョーディに一発ぶちこんだ後はすぐに部屋に戻っていった。

「んん~……あれぇ、由里香ちゃん、どこいってたの~?」

「……トイレ」

「そっかぁ~、私もいってこようっと」

 結局他の女性陣はジョーディの訪問に気付くことなく、安穏とした朝を過ごすのだった。




 信也がソレ・・に気付いたのは、玄関から外に出てすぐだった。
 朝に迎えに来るといっていたジョーディだったが、具体的にどれくらいに来るかまでは聞いていない。
 現代人ならともかく、このような生活を送ってる人ならば、日が昇ったら即座に活動を開始してもおかしくはない。

 そう考えた信也は、どうにか日が昇った辺りで目を覚ます事に成功し、まどろみの間を移ろいながらも、身だしなみを整える。
 準備が整うと他の男勢を起こす事なく、外へと出る。
 そこで信也が目にしたのがあの光景だった。

「あ、あの……こんな所で何してるんですか?」

 どれくらいの時間うずくまっていたのかは分からないが、ジョーディは苦しさも大分抜けてきたのか、背後を振り返る。

「うぅ、えっと確かシンヤさんでしたか。これは、その……」

 ジョーディが振り返った事によって、角度的に見えなかった地面にぶちまけられた"ブツ"が信也にも見えてしまう。

「えっと、大丈夫ですか? 昨日あれから飲みすぎてしまったとか?」

「いえ、そういうのではないので大丈夫です……」

 生来の性格もあるが、ジョーディはあのような少女に一撃でのされてしまった事を話す気にはなれなかった。
 下っ端社員の悲哀のようなものを滲ませながら、言い繕おうとしている姿を見て信也も流石に察したようで、これ以上問い詰める事もなく話題を強引に進める。

「それで、あの、折角来ていただいたんですが、まだあの家で寝てる他の男勢は起きてないんです。恐らくは女性陣の方もそうだと思います……」

「あ、あはは。そ、そうですよね……」

 どうやら、熟睡してる所を起こされた腹いせに殴られたんだろう、という事に気付き、ジョーディは思わず乾いた笑いを浮かべる。

「とりあえず男共の方は俺が起こしてきます。女性陣の方は……軽くノックでもしてみてください。昨日の村長宅みたいに激しくすると……どうなるか分かりませんから」

 この時信也が思い浮かべていた女性は長井であったが、そうと知らないジョーディはあの小さな少女の顔が脳裏に浮かび、思わずブルっと体が震えてしまう。

「じゃあ、ちょっと行ってきます」

 寝ている男達を起こしに戻る信也を眺めながら、これからはいかなる時でもノックをする時には気を付けよう。
 そう誓ったジョーディであった。



▽△▽△▽△



「ようやく見えてきたなぁ」

 北条の声が指し示す方向には、あの大きな泉がひっそりと佇んでいた。
 どうやらこの湖は《サルカディアの泉》という名前らしく、村から比較的近い事もあって、時折村人も訪れているそうだ。

 そのせいか、最初ジョーディにダンジョンの場所を伝えた際には非常に驚いていた。
 長い冬の間は訪れる者はなかったとはいえ、少なくともその前の秋ごろには誰かしら来ていたはずだから、かなり最近になって出来たダンジョンというのは間違いなさそうだ。

「へっ、戻ってきたぜ!」

「なんかそのままダンジョン攻略に乗り出しそうだけど、今日は入口をちょっと見て戻るだけよ」

 妙にやる気をみなぎらせる龍之介を窘めている咲良。
 確かに今回はギルド職員であるジョーディにダンジョンを確認してもらうだけなので、本格的に内部に潜ったりはしない。
 しかし、やる気があるのは龍之介だけではないようで、

「よーし、魔物なんか私がすってんころりんさせてやるんだからっ!」

「え~と……由里香ちゃん、それをいうならこてんぱんじゃないかしら~?」

 天然ボケのレベルが高かったのか、すぐに修正を入れられなかった様子の芽衣。
 すっかり朝の出来事など忘れている由里香は、無邪気にジョーディへと話しかける。

「ね、ね! 早くいこ!」

 思わず反射的に体がビクッっとしてしまったジョーディだが、すぐに何でもない風を装い、

「そ、そうですね。それでは入口のある崖の方へと回り込みましょうか」

 そう口にしながら、由里香から逃げるように先へと突っ走るジョーディ。
 そんなジョーディの後を慌てて六人が追う。

 ――現在、彼らはジョーディ含む七人のメンバーで行動を共にしていた。他のメンバーはというと、森の入り口の所で別れて別行動をとっている所だ。



 信也をリーダーとする別班は、昨日咄嗟に北条が言った、〈魔法の小袋〉の存在を隠すための嘘――森にダンジョンで拾ったドロップを隠した――のフラグを回収する為に動いているという事になっている。

 各々村から持ってきた袋にドロップを詰めて持ち帰るというものだが、実際は予め回収班の持つ〈魔法の小袋〉にダンジョン確認班のドロップを移しただけだ。
 後は全員分のドロップを、まとめて借りてきた袋に詰めるだけの作業。
 それらのドロップは今の所は仕留めた人の所有物という事になっていたので、予め誰がなになにを持っていたとメモも取ってある。

 ただ、《ジャガー村》のギルド職員はジョーディだけなので、それらドロップ品の買取はジョーディが帰還してからになる。
 その間に回収班は、これからの生活に必要なものや、食料の買い出しなどを行う予定になっていた。
 特に簡易的なものでもいいので、寝袋のようなものを確保したいというのが彼ら全員の共通する思いだった。




 ジョーディを先頭に泉を迂回して、ダンジョンへと向かう調査班の七人。
 大きい泉とはいえ十分ほどで入口まで到着した彼らは、そのまま奥へと進む。
 入口付近はダンジョン特有らしい光源もないので、ランタンはきっちり忘れずに持ってきている。

 隊列は北条と龍之介を先頭に、真ん中にジョーディ、石田、芽衣、咲良。最後尾に殿として由里香が睨みを利かせている。
 油断している訳でもないが、一階層の入り口付近なら、十分対処できるだろう。
 聞けば、ジョーディも"護身術"というスキルを持っているようで、戦闘員としては数えられないが、雑魚相手なら自分の身くらいなら守れるそうだ。


 それまではお喋りをしていた一行も、ダンジョンに入ってからは口数も減り、適度な集中を保っている。
 一行がまがりくねった道を進んでいくと、徐々に青い光が周囲を照らし始めた。

「確か、この先に小さな広間みたいなのがあったのよね」

 咲良の言う通り、そこは大量のネズミが蠢いていた場所で、慶介のビーム攻撃で根絶やしにした場所だった。
 入口から数えて僅か十分ほどでその広間へと到着する。
 ここまで来ると、完全にダンジョンの一部という事なのか、周囲の壁は淡い青色に光っている。

 いまいち見おぼえがない感覚がするのは、あの時はビームによって水溜まりの水が蒸発して周囲をよく見れなかったせいだろう。
 そして、あれからそう日にちも経っていないというのに、この部屋には"先客"が訪れていたようだった。

「チッ、またネズミかよー」

 龍之介の指摘した通り、この部屋はネズミにとって最適な住処なのか、前回程ではないが十匹程のネズミが水溜まりの傍にたむろっていた。
 仕方なく戦闘態勢に入る一行。
 今日はここに来るまで運良く一回も魔物と遭遇してこなかったので、これが初戦闘という事になる。

「それじゃー、いくよ~ 【雷の矢】」

 芽衣お得意の【雷の矢】が決まると、当たり処がよかったのか、一発でネズミは息絶える。
 それを合図として、ネズミと北条達の戦闘が幕を切ったのだった。

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