どこかで見たような異世界物語

PIAS

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第七章

第155話 お宝鑑定 その1

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 若干の距離もあるし、査定の方に気を取られていたシャンインは、今しがたの出来事には気づいていないようだった。
 ナイルズがいつの間にかギルドに戻ってきていた事にも、今気づいたといった様子。

「あー、俺が受け取ってこよぅ」

 そう言って信也に向けて掌を差し出す北条。
 「あ、ああ」と少しだけ戸惑いを見せつつ、信也が交換用の木札を渡すと、そのまま北条はカウンターの方まで歩いていく。


「…………」


 北条の去った後には沈黙が場を支配していた。
 話をしようとしていた当人が、急にお化けでも目撃したかのように居すくまってしまったのだ。

「――という訳でして、『プラネットアース』の方はこちら。『サムライトラベラーズ』の方はこちらになります」

 ギルド内部からは関係者の活動する音が聞こえてくるが、端の方にある買い取りカウンター前の待機スペースだけは静かだった。
 その為シャンインと北条の話す声もよく聞こえてくる。
 ……ついでに何かが床に落ちる音も。

「あ、申し訳ありません……」

 その音の原因は、どうやらシャンインが渡した報酬の入った布袋から、硬貨が床に落ちた音だったようだ。

「あぁ、いやぁ。気にすることぁーない」

 そう言って床に落ちていた二枚の銀貨を拾い上げる北条。
 一方信也達の方もようやくコーネストの様子が落ち着いてきたので、話を再開しようとしていた。
 そこに、

「いでっ!」

 という北条のダミ声が聞こえてきた。
 その声に誰よりも過敏に反応したのはコーネストだ。
 突然よく分からない恐慌状態に陥って、それが回復してきたと思ったところでの北条の奇声は、安心した所で脅かしに来るホラー映画のようだった。

「っつうう……。なんだぁ、これぁ」

 北条が恨みがましい声でガシガシ小突いているのは、買い取りカウンターに設置された衝立だ。
 どうやら銀貨を拾い上げる際に頭をぶつけたらしい。

「大丈夫ですか? こちらは冒険者同士でのトラブルを少しでも防ぐために設けられた衝立になります。これがないと隣のカウンターを覗き見る人もいて、トラブルの元にもなるんです」

「あー、なるほどなぁ。確かに了承も取らずに勝手に覗き見られるのは気分悪いよなぁ。それでこちらの買い取り額まで気取られたら、変に目を付けられるかもしれんし」

 ギルドでのドロップや魔石買い取りの際は、口頭で幾らだとかは口にしない。
 シャンインの言うように、妬みから絡んでくるような奴や、ひどい場合はギルドを出た後にイチャモンを付けて報酬を奪ったりする奴も出かねないのだ。

 北条は落ちた銀貨を元の袋にしまうと、二つの皮袋を持って信也達の元に戻ってくる。
 そして「これがそちらの買い取り分だぁ」と、袋のうちの片方を信也に手渡す。


「……ドロップの買い取りの方は終わったようだね。コーネスト君、君には元々シンヤ達がダンジョンで入手したアイテムの鑑定依頼をしようと思っていたのだが……具合が悪いようなら次の機会にするかね?」

「い、いえ……。こちらに派遣されての最初の依頼ですから、お引き受け致します」

 大分持ち直してはいるものの、最初の頃の余裕が消えかけているコーネスト。
 しかし商売人魂なのかそれとも根性をみせたのか。強引に自分を叱咤するかのように、鑑定依頼を引き受ける。

「それなら鑑定室に案内しよう。ついてきたまえ」

 そう言って歩き出すナイルズ。
 鑑定に関しては、持ち込まれるものが高額なものも多いために、鑑定用に専用の小部屋が用意されていた。
 中央部にあるギルドの入り口から真っすぐ目の前には、受付カウンターが並んでいる。そしてその右脇には奥へと通じる通路が伸びている。その通路には幾つか扉が並んでいて、そのうちの一つに信也達は案内された。



 中へ入ると、そこには机や椅子の他にもごちゃごちゃと用途の分からないものが置かれていた。
 足の踏み場もないという程ではないが、とりあえず置いておきましたといった感じで部屋の隅にうずたかく積まれているのだ。

「では、あとは任せたよ」

 そう言い残すと、ここまで案内してきたナイルズは席を外し部屋を出ていく。

「あ、ええと。では、これから鑑定を行いますが、その前に一つ伝えておく事があります」

 机の奥にある座席に腰かけながらコーネストが注意点を説明し始める。
 その脇には護衛のアレクルトが無言のまま佇立していた。

「まず私は装備、魔法道具、薬の鑑定スキルを所有していますが、他の品物に関しては"植物知識"などの知識系スキルと"目利き"スキル。それから、今はちょっと対応出来ないんですが、そちらにある魔法道具などを駆使して鑑定を致します」

 コーネストの話によると、まだこちらに来たばかりで荷ほどきも出来ていないらしく、色々と準備不足らしい。
 本来なら、この鑑定室そのものにも魔法陣を敷設したりするそうなのだが、それもまだ出来ていないらしい。

「その代わりといってはなんですが、今回は無料で鑑定させて頂きます」

「いや、それは流石に……。というか普通に鑑定依頼をすると幾らかかるんだ?」

 コーネストの申し出に、「タダより高いものはない」と知っている信也は、思わず尋ねた。

「それはものによって異なります。私の所有する鑑定スキルでそのまま鑑定できる物に関しては、一律でひとつにつき三銀貨。知識などを元にして鑑定したものに関しては一銀貨となります」

 鑑定スキルによって鑑定されたものは、曖昧な知識ではなくスキルで示された明確な答えだ。
 それに比べ知識などを元に鑑定したものは、あくまで正確な情報ではない分、鑑定料も安くなるのだという。

「それから、鑑定しても判別ができないものというのもございます。これは鑑定スキルを用いても起こりうるもので、高度な魔導具などは鑑定スキルでも失敗することがあります。その場合でもお代を頂きますが、料金はひとつにつき二十銅貨となります」

 それは、一般的な農民などからしたら高額といえる料金だが、信也達がこれまで得た金額からすると全然問題ない程度の金額だった。
 そのため、信也も今回は素直にコーネストの好意に甘える事にした。

「それならお願いします」

 こうして今までダンジョンで入手したアイテムの鑑定が始まった。
 潜っていた期間としてはひと月ほどとそんなに長くはなかったが、手付かずのダンジョンだったという事でそれなりにアイテムを取得している。

 まずは信也達のパーティーから鑑定は行われた。
 その結果、ダンジョンで手に入れた石田の持つ杖は、特殊な効果はないが、《鉱山都市グリーク》で一般的に売られている魔法の杖と比べ、魔力アップの効果が高めという事が判明した。

 他にも、信也の使用している盾は〈インパクトシールド〉という名称で、防御力も若干アップしているが、この盾で敵を殴った際の衝撃の強さが増す効果があるらしい。

 そして一応鑑定してもらった龍之介の魔法の剣は、そのまま〈ウィンドソード〉という名前だそうで、これまで使用してきた風に関する能力以外に特殊な能力はないそうだ。
 しかし、一緒に鑑定したガントレット――〈疾風のガントレット〉というらしい――は、敏捷性が上がるという体感効果以外にも効果があったようで、風属性の攻撃に対して耐性がつくようだ。


 斯様に、各自敏捷性があがるブーツだとか、魔法耐性の上がるリングだとか、次々と鑑定が進んでいく。
 特に武器や防具はともかく、アクセサリー系に関しては効果がいまいちわからないものも多かったので、これを機会に上手い具合に分配ができそうだ。

 次に装備系以外の謎のアイテムに関しても鑑定が行われ、魔除けの香、魅惑のルージュ、保温の壺、遠視の目薬、各種魔札など鑑定が進んでいく。
 魔札というのは魔法の効果が籠められた札で、使い切りだが籠められた魔法を発動させることができるアイテムだ。
 職業として『魔札使い』という割とレアな職業もあって、その職業の者が使うとより効果的にもなるし、腕によっては魔札そのものも作成が可能だ。


 鑑定が一通り終わり、何を誰が使うのか、どれを売ってどれを残すのか。
 そうした話し合いが信也達のパーティーメンバー内ではじまり、その間に次は北条達の入手したアイテムの鑑定が行われようとしていた。






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