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第十章
第243話 レイドバトル
しおりを挟む北条から伝えられた魔物の感知情報を元に、レイドエリア十四層の奥へと進んでいく。
すると道の先にはゴブリンの集団がいるのが発見できた。
召喚した大柄なオーガを複数連れて移動している為、すでに足音で相手のゴブリン達には気づかれているようで、こちらへと向かい始める様子を確認できる。
まだ遠距離攻撃も届きにくい両者との距離。
まずは陽子が"付与魔法"をかけ始める。
これから戦闘が始まってしまえば、恐らくリンク仕様によって周辺からも魔物が集まってくるはずだ。
その分戦闘に時間がかかると思われるので、先にバフをかけておくのは重要だ。
「陽子は『サムライトラベラーズ』に、俺ぁ『プラネットアース』から順に"付与魔法"を掛けていくぅ」
"付与魔法"は"結界魔法"や"召喚魔法"に比べるとレアではないが、基本的に四大属性以外の魔法は使い手が少なくなる傾向にある。
全員にバフをいきわたらせるというのは、なかなか贅沢な戦闘と言えるだろう。
「カリス、ロイド。出番よ」
カタリナは契約している火の微精霊『カリス』と、水の下位精霊『ロイド』を呼び出す。
カリスは基本球状で、上部が少しメラメラと燃えてる感じをしている。
それに比べロイドは下位精霊だけあって、形を持ち始めていた。それは少し大きなカニのような見た目をしている。
カタリナが契約してる精霊は他にもいるが、今回はこの二体で行くらしい。
残りの前衛と、まだ射程距離外の後衛はその場でじっと敵が来るのを待ち構える……と、思われたところ。信也はお試し感覚でまだ遠くに見えるゴブリンに対し、光と闇の魔眼を両方一気に開眼させる。
「G(CN!?」
信也のダブル魔眼のターゲットになったゴブリン――ケイブホブゴブリンは、苦しそうな声を上げてその場に崩れ落ちる。
信也はまだ長時間の発動は出来なかったが、練習によって二つの魔眼を同時に発動させる事には成功していた。
「ぐ、ぐぐぐ……」
接敵前に一体でも倒しておきたいと思ったのか、初めて魔物に使用する魔眼でいきっていたのか。
信也は頭痛やら吐き気などを感じながらも、ジッと相手のゴブリンを睨み続ける。
すると、ついにゴブリンのHPを削り切ったらしく、他のゴブリン達がこちらに接敵する前にゴブリンは光の粒子へと姿を変える。
「ハァ、ハァ……。なる、ほど……。啓介君が必殺技を使った後の気持ちが、少し分かったよ」
苦しそうに感想を言う信也。
信也がそうして魔眼でゴブリンを睨みつけている間に、距離が近くなったゴブリン達には、遠距離職の魔法が雨のように降り注ぐ。
「ええ~い」
「ふっ、久々の実戦ね!」
「ウオオオオッ! オレだって"風魔法"なら使えるんだああぁ!」
「ピッコリ」 「ピコッ!」 「ぴここー」
一般の冒険者パーティーではありえないほどの飽和魔法攻撃により、洞窟内が一時的に明るく照らされる。
雷が、炎が、風が、光が。
まるで目の前の敵しか見えていないかのように、愚直に突っ込んでくるゴブリン達へ降り注がれた魔法の雨は、甚大な被害をもたらす。
レベルアップによって以前より魔法の威力も上がっているうえに、事前に【魔力増強】によって魔力も強化されているのだ。
F~Eランクの魔物たちにとって、それは圧倒的なまでの火力である。
「うー、あんま残ってないよー!」
接敵までの遠距離攻撃によって、大半のゴブリンが沈んだ中、自分の獲物がいなくなった事で由里香が思わず声を漏らす。
それから近くまで接近してきたゴブリン達に、風のように軽やかに走って近寄っていくと、先頭にいたケイブホブゴブリンを殴り飛ばす。
「おおっとお、オレも暴れてやるぜっ」
少し遅れて龍之介や信也らも、前に出てゴブリンらと近接戦闘を開始する。
すでに相手の数はこちらの前衛の数以下にまで減っている。
この調子なら自分は前に出なくていいだろうと、北条は後衛の位置で待機。
他のみんなも、これからリンクしてきたやつらの第二陣がくるであろうから、無暗に魔法で援護することもなく、魔力温存に努める。
残ったゴブリンとの戦闘は五分と経たず終了した。
余りに早い敵の殲滅に、リンクしてこちらに向かっているであろう魔物の姿もまだ見えていない。
「うひゃー。これだけ魔術士がいると壮観ッスねえ」
ロベルトも最初に"風魔法"で攻撃してはいたが、その後は後衛より少し前の中衛の位置で、万が一前衛を突破してきた敵が来た時のために待機していた。
「私の精霊もほとんど手を出すことはなかったわ」
"精霊魔法"というのは少し変わった魔法であり、"火魔法"などのように、呪文名の詠唱は必要ない。
自分のしてほしい事を、言葉や意思で伝えることで、相手の精霊がそれをくみ取って攻撃をしてくれるのだ。
今回も最初にゴブリン達が接近してきた時に、少しだけ精霊による遠距離攻撃は行われていた。
下位精霊以下では精霊の自我が薄いため、こうして指示を与えないと自分から動くことはない。
これが中位精霊ともなると、しっかりとした自我と知性を持ち始める。
故に、中位精霊ともなると術者があれこれ指示しなくても、自立行動をしてくれるようになる。おまけに魔力なども下位精霊とは段違いであるので、中位精霊の使い手というのは恐れられていた。
「これで終わりなんてこと……はないようね」
楽観的希望を口にした陽子も、ある程度まで接近していたゴブリンに投げナイフなどで攻撃を加えていた。
以前探索していた鉱山エリアの魔物は、鉱石をドロップする。
それらは売り払ったりはせずに、大部分がルカナルの所へと持ち込まれており、陽子用の投擲武器もたくさん作ってもらっている。
結界の内側から投擲武器でワッショイコンボが、ようやく実現してきた。
その後、第二陣として現れたのはゴブリン達だけでなく、Eランクの魔物であるダークウルフやダークスライム。他にも蝙蝠の魔物、ナイトフライヤーや、不定形生物に分類される、シャドウなども群れに加わっていた。
だが所詮はF~Eランクの魔物であり、今の彼らには大した脅威でもなかった。
マンジュウが雷を纏いながら戦場を駆け回り、アーシアが体を変形させて、同じスライムであるダークスライムを、物理的に殴り飛ばす。
正に向かうところ敵なしといった感じで、襲い来る魔物を次々と打倒していった信也達。
そして最初の戦闘開始から二十分もしないうちに、魔物を殲滅する事に成功した。
北条の索敵にもすでに魔物の気配はひっかからないらしい。
「ふう、これで終わりか。みんな、問題ないか?」
「大丈夫っす! 逆に暴れたりないくらいっす」
「おう! オレもまだまだいけるぜ!」
大分さっくりと敵を殲滅できたせいか、まだまだ余力は残っているらしい。
信也がドロップの回収を指示し、それらが集め終わる頃にはすでに休息も不要と言えるほどに回復していた。
「では、この調子で探索を続けていこうか」
信也の声に勢いのある返事が返ってくる。
こうしてレイドエリアの本格的な探索が始まった。
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