どこかで見たような異世界物語

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第十一章

第258話 魔物のスキル

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 北条の話を聞いたカタリナが、更に魔物のスキル取得について詳しく問い詰めてくる。
 その迫力に少しあとずさりしつつも、北条は魔物のスキルについて話していく。

「んー、そうだなぁ。魔物のスキルには種族に依存してるものも多い。例えばぁ……」

 そう言いつつ北条は指先から糸のようなものを作り出す。

「こいつは蜘蛛系の魔物が持つ"硬糸"というスキルなんだがぁ、本家のように大量に糸を出したり、勢いよく飛ばしたりということが難しい。元々人に糸を生み出す能力がないからだろう」

 それこそ最初はほんのわずかな糸を出すことも難しかったと言う。
 スキルを練習していくにつれて、今では最低限の糸は出せるようになったが、戦闘用に使うにはまだ微妙なレベルだ。

「だがぁ、"硬糸"とは違って"操糸"や"絶糸"なんかのスキルは、使用に制限がない。恐らく強靭な糸を用いた人間の暗殺者なんかが使用するんだろうなぁ」

「つまり糸を作るのは苦手だけど、生み出した糸を操作するのには問題ないって事ね」

「そーゆーことだぁ。このように種族が制限されて効果が弱まるスキルというのが、魔物のスキルの中には多い」

 北条の説明を聞いて、必死に脳内に情報を書き留めようとしているカタリナ。
 普段そこまで知識欲を全開にさせる事のない彼女だが、魔物のスキルなどそれこそ『魔物使い』などから間接的に聞かないと分からない知識だ。
 彼女でなくとも、「スキル学」を学ぶ者なら誰しも同じ反応を見せる事だろう。

「という事は、性能を十分に引き出せないけど、魔物の使うスキルでも人が使う事は出来るのね」

「あー、必ずしもそうとは限らん。スライムが持ってる"分裂"スキルは、いくら熟練度が上がっても使える気配がない。……あの悪魔が使っていた悪魔特有のスキルも無理っぽいなぁ」

「うげぇ。オッサンが分裂なんかしたらヤバすぎだろ!」

「でも戦力的には悪くなさそうね」

「い、いちパーティーに、いち北条さん……」

 楓は何やら妙な妄想をしてぽわわんとしていた。
 信也などは、実際に北条がうねうね~っと分裂するのを想像してしまい、若干顔色がよろしくない。
 他の人の反応は、陽子の言うように戦力的な意味で、アリアリのアリじゃない? という意見の方が多そうだ。

「まあこの話はもうこの辺でいいだろう。すっかり休憩も出来たし、魔方陣をそろそろ起動させるぞぉ」

「おう、そうだな!」

 まだまだカタリナは話したい事があるようだったが、この魔方陣の光がいつまで続くか分からない。
 話をするにせよ、休憩も終わったことだしまずはこの転移魔方陣の先に行ってみるのが先決だ。


「ではいくぞ」


 信也がそう言って魔方陣に魔力を送り込むと、待機中であった魔方陣が本格的に発動を開始する。
 "転移する"という、日本で暮らしていた頃には夢のような出来事も、すでにすっかりお馴染みのものとなっている。

 魔方陣の光が、中にいた者たちを包み込むようにして、その効果を発動させる。
 すると次の瞬間、彼らは全く別の場所へと転移を果たしていた。



「やっほおおおおおお!」

「ちょっと、由里香ちゃん!?」

 転移するなり大声で叫ぶ由里香に、少し慌てた様子のメアリー。
 だが彼女とパーティーを組んできた『サムライトラベラーズ』の面々は、どこかで見た光景に特に反応を示すことはない。
 以前由里香が同じように叫んだ時は、見通しが悪く暗い場所であったが、今いる場所は彼女が叫びだす気持ちにも納得のいくものであったからだ。

「わぁ……。すごい風景ですねえ」

 心の底から沸き上がったような咲良の言葉。
 それは周囲に広がる雄大な山々を見ての、純粋な咲良の感想だった。

 新しく転移してきた場所は山岳地帯であり、近くには迷宮碑ガルストーンも設置されている。
 ここから見える範囲の山肌には緑がほとんど見えず、所々に若干生えてる草や花が確認できるくらいだ。
 テレビなどではこうした光景を見たことある異邦人たちだったが、実際に生で見たことのある者は少ない。

「どうやら新しいエリアに来たみたいッスね。森と草原のエリアは十八~二十二層まで、と」

「……のようだな。ではまずは登録をしてこよう」

 そう言って信也が、すでに〈ソウルダイス〉を二つ嵌め込んである〈ソウルボード〉を持って、レイド対応の迷宮碑ガルストーンで一気に全員分の登録を済ませる。

「それで、これからどうする?」

「んー、大分潜っているし、この周辺を少し探索してから帰還でいいんじゃない?」

「大分ってまだ十日も潜ってないけど……、まあ、そうね。一区切りはついたし私は構わないわ」

「そッスね。今回は十分な成果もあったし、いいと思うッス!」

 陽子の意見にロベルト兄妹も反対する事はなく、周囲の探索をまず行う事になった。
 新しいエリアへ移動してからの、……それも何の情報もない場所での初戦闘には注意が必要だ。
 由里香たちもそれで一度痛い目に会っているので、景色の素晴らしい山道の探索でテンションは上がりつつも、きっちり警戒をして探索に挑んだ。

 だが結果としては、そうそう恐れる必要はない事が判明する。
 小一時間ほど辺りをうろついた頃に、近くにいた魔物の小集団との戦闘が開始され、そこからレイドエリア独特のリンクによって、しばし魔物との戦闘が続けられた。

 現れた魔物は主にオーガ系統と鳥の魔物。それから鹿の魔物が構成の大半を占めていた。
 どれもランクはE~Dランクと、二十二層と比べて大きく変化している訳でもない。

 芽衣が召喚しているオーガとの同士討ちの様子は、なかなかに激しいものであったが、"従属強化"で強化された芽衣のオーガの方が強さは上だ。
 とはいえ敵のオーガの中にはオーガファイターやオーガメイジなどの役職付きのDランクも交じっていたので、戦闘終了までにはそれなりに時間がかかった。

「うーん、戦えない事はないけど、これが続くとなると少しだるいですね」

「ああん、そうかあ? オレはこれくらいが丁度いいと思うけどな!」

「アンタは基本前衛だからいいけど、私らは残り魔力の事も考えないといけないのよ」

 咲良の言うように、魔物のランクが上がればその分HPや体力も上がってタフになっていく。
 すると必然的にMPの消費も増えていってしまう。
 鳥の魔物はともかく、オーガは特にHPが高く、鹿の魔物もそこそこ厄介で、殲滅には時間がかかっていた。

「まあ、行けないことはないがぁ、安定させるにはもう少しレベル上げをした方がいいかもなぁ」

 今回問題なく最初の戦闘を終えられたのも、北条が控えていた事が大きかった。
 でなければ、どこかの場面で崩れてしまい、誰かが大けがを負ってしまう事もあったかもしれない。

 この新しい山のエリアは、いくつもの山が連なっている山脈の一部のようで、恐らくはそれなりに標高が高いと思われた。
 さっきまでのエリアとは違い、どうも空気が薄いように感じられるのだ。
 周囲を見渡すと、今いる場所よりも高い場所がいくらでもみかけられるので、そういった場所では更に呼吸がしにくくなると思われる。
 そうなると、長時間の戦闘にも影響を及ぼしてくるだろう。

「そうだな。もう少しの間は前のエリアでやるのもいいだろう」

 最後に信也がそう結論付け、迷宮碑ガルストーンへと帰還を始める。
 帰りは魔物との遭遇もなく無事に戻る事が出来た。
 レイドエリアでは、一度戦闘が始まると周囲の魔物が寄ってきてしまうために、戦闘後はしばらく魔物と遭遇することがなくなる。
 メリハリが効きすぎてはいるが、いつ魔物が出るか常時警戒してるのと比べたら、こっちの方が良いという人もいる。その辺は人それぞれだろう。

 二十三層入り口にある迷宮碑ガルストーンまで辿り着いた一行は、その足で転移部屋まで戻ってダンジョンを後にする。
 相変わらず、レイド対応の迷宮碑ガルストーンから転移してきた彼らは、転移部屋に屯している冒険者からの視線を感じたが、絡んでくる者はいなかった。

 ダンジョンを出てすぐの所にある広場も、警備員の常駐する小さな小屋の他に屋台の露店が立ち並び始め、以前より賑やかになってきている。
 基本的には、これからダンジョンに向かう冒険者に物を売りつける商人が多いようだが、中にはダンジョンから出てきた冒険者に声を掛ける商人もいた。

 村に戻る時間も惜しいとばかりに、ダンジョンに潜ってドロップを集めては入り口広場で売却。それからまた食糧などを買ってすぐにダンジョンに戻る。
 こんな事をしてる人もいるらしい。
 何分〈魔法の袋〉などの魔法収納がないと、持ち出せる量にも限りが出てしまう。

 信也達の元にも「ドロップを買い取るぞ」と声を掛けてきた商人がいたのだが、丁重に断ると村への帰路を急ぐのだった。


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