どこかで見たような異世界物語

PIAS

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第十一章

第269話 新たな二つの分岐

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ふむ……。『青き血の集い』の連中が、ダンジョンから戻っていない、か」

 冒険者ギルドへと出かけた龍之介らは、たまたま耳にした噂が気になり、その後も聞き込みを続けていた。

 ロベルトらが加入する前の話であるが、『青き血の集い』のメンバーとは一度揉めた事があった。
 だが結局『流血の戦斧』という、もっとヤバイ奴らが出てきたことで、『青き血の集い』については記憶から追いやられていた。
 今では実力も大分上がっているので、依然のように一方的にやられる事もないだろうというのもある。

 なので、龍之介が更に情報を集めたのは警戒のためというよりも、知った名前の奴らが二十階層で行方不明になったと聞いて、気になったからだった。

「どっちに行ったんッスかね」

「一応聞いた話では『落とし穴』に落ちたって事らしー」

「確かに"噂"では、『落とし穴』の存在しか知られてないッスけど……」


 龍之介が集めてきた情報によると、『青き血の集い』は鉱山エリア二十層を探索中、メンバーが落とし穴に落ちて分断されてしまい、ひとり盗賊職の女だけが帰還したという事になっていた。

 二十層の落とし穴については、少し前からギルドで噂され始めたもので、信也達もその情報はすでに得ていた。
 何故そのような噂が流れているかについては、実際に前の前で落とし穴に落ちた奴がいたからだ。

 落とし穴といえば、底に針の山などが敷き詰められている印象があるが、単純に高い所から落ちるだけでもダメージは受ける。
 それでも冒険者であれば、十~二十メートルくらいの高さなら耐えられもする。
 二十層の落とし穴も、高さはありつつも真下に棘の罠が敷き詰められていた訳ではなかったらしい。

 そうなれば、後は冒険者の身体能力や保有スキル次第だ。
 "聴覚強化"のスキルを持つ、穴に落ちなかったメンバーが地面に耳を当ててみた所、微かに落ちた仲間の声を聞き取る事が出来た。
 ただ、落とし穴の部分は既に蓋が閉まったようになっていて、そこから後を追う事はできない。

 落ちた仲間の声に関しては、壁越しに聞いたので詳細には聞こえなかった。
 ただ、「通路がある」とか「ケガは大したことはない」とかそういった内容は微かに聞き取れたようだ。
 これを聞いた仲間は即座に話し合い、周辺の調査をすることが決定された。
 そして同じような落とし穴の罠を見つけると、一人だけ報告役として町に戻り、残りのメンバーで落ちた奴と合流する事になった。

 だが結局、穴に落ちた奴らは誰一人帰還することはなかった。
 『青き血の集い』は、その冒険者に続いて二例目の報告という事になる。


「どっちにしろ、罠の先には迷宮碑ガルストーンがないんだろ? そんな所に飛び込みたくはねーぜ」

「そうね。行くならもう少しレベルを上げて、しっかり準備してからじゃないとね」

 確かに落とし穴の先に通路があって、そこに新しいエリアが続いているのなら、件の冒険者も迷宮碑ガルストーンで帰還しているはずだった。
 だがダンジョンには、入り口部分に迷宮碑ガルストーンが設置されていないエリアというのも存在する。
 今回の落とし穴の先も恐らくはそういう事なのだろうと思われた。
 ……最悪なパターンとして、ちょっとだけ通路が続くけど、結局先は行き止まりという事もありえるが。

 だがその点については、実は二十層に行った時に既に調べはついていた。
 北条が"空間感知"のスキルで調べた所、確かに落とし穴の先には新たなエリアが広がっているのを発見したのだ。

 それと同じく、壁に貼られた魔法の幻影の先にも、別のエリアが広がっているのを確認している。
 鉱山エリア二十層からは既に北と南の二つの分岐先があったが、そこに更に二つの分岐が加わったという訳だ。

 あの二十層の地下空間は、どうも感知系を阻害する何かがあるようで、最初に訪れた時は北条もこれらの罠に気づかなかったらしい。
 ただ今回はすでに落とし穴の噂については聞いていたし、レベルなどが上がった事で感知能力が増していたので、北条も新たな二つの分岐先を確認することが出来た。


「まあ、いずれは探索する事になるかもしれんな。だが、今はそれよりパーティー編成について話し合おう」

 信也が声を掛けると、それまでペチャクチャ喋っていた面々も押し黙った。
 二度のレイドエリア探索によって全員のレベルも底上げされたし、ロベルトとカタリナとの連携というか、能力についても実地で確認が出来た。

 このままレイドエリアを探索するという選択肢もあるにはあったが、結局ここいらでパーティーでの探索に切り替えようという事に決定されていた。

 ――そろそろ、どこかのエリアの制覇を目指して行こう。という目標を建てたのだ。

 規模の大きなダンジョンでは、複数の分岐先に分かれているものがある。
 そうしたダンジョンでは、本道の奥に最終守護者ラストガーディアンとダンジョンコアが配置されていて、支道の最奥には領域守護者エリアボスが待ち構えている。更に祝福されたダンジョンならば、神碑も一緒に設置されている。

 どこが本筋ルートなのかがそもそも判明していない現状だが、既に分岐先だけでいえば幾つも発見済だ。
 それらを最奥まで突き進み、エリアを制覇する。
 可能性として、彼ら異邦人が元の世界に戻るためのキーアイテムの入手場所として、一番可能性の高い所がそうしたエリアの最奥部分だ。

 三つの神器のうち、恐らくは本筋に一つ。そして支道に二つ。
 すでにこの世界に骨を埋める覚悟をしている者もいるが、それでも残っている全員の目的は一致していた。
 その為に、ようやく本格的に動き出すときが来たのだ。
 それにはまず新たなパーティー編成が必要だった。


「それではまずどういう風に決めていくか、意見はあるか?」

「ハイハイッ! あたしは芽衣ちゃんと一緒が良いっす!」

「あ、ズリィ! オレも! ……えっと、オレも、あー……、ほ、細川さんとがいい、かも?」

 勢いよく声を上げた割には、徐々に言葉尻が弱くなっていく龍之介。その顔は僅かに赤くなっていた。

「それなら私も慶介くんと一緒がいいわ!」

「さ……よ、陽子さん……」

 龍之介とは正反対に、臆面もなく言い放つ陽子。
 指名された慶介はそれに対して少し困ったような様子だ。
 陽子からは名前で呼んで欲しいと言われていた慶介だが、名前を呼ぶだけでも未だにたどたどしい部分があった。

「そ、それなら……、私、も、北条さんと一緒で……」

 ムーブに乗って楓も意見……というより願望を伝えてくる。

 新しいパーティーを決めるというのに、各人が好きに意見を言い合うだけで、まとまる気配がない。
 どことなく、新学年のクラスでの班決めとかの雰囲気が漂い始める。

「……これでは話もまとまらないな。よし、まずは両パーティーの基軸を設けよう。まずは今までと同じで、『プラネットアース』のリーダーは俺。『サムライトラベラーズ』の方は北条さん……という事でいいか?」

「んー、まあいいんじゃね?」

「そうね。確かにその方がいいかも」

 こうして信也の意見は受け入れられ、そこから交互にメンバーを決めていく事になった。
 役割分担の事やバランスを考えて、みんなの意見を聞きながらパーティーを編成する。
 それは結局の所、前回パーティーを決めた時と同じようなものだった。

 ただ、メンバーの入れ替わりや、芽衣が槍を使いだしたりなど、役割も若干変化してきているので、その辺りを一から決めていく事になる。
 そうした枠組みの中で自分の要望を通そうと、楓や陽子らがギラギラとした目をしている中、パーティー編成会議は始まった。



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