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第十一章
第270話 パーティー再編成
しおりを挟む「色々分け方はあるだろうがぁ、まず俺と芽衣は別々のが良いだろうなぁ」
パーティー編成について、最初に声を上げたのは北条だ。
その声の調子からは当然だという考えが窺えて、名指しされた方の芽衣はどこか視線をさまよわせる。
「……あ、"召喚魔法"ですね?」
少し考えて答えにたどり着いた慶介。
それを聞いて他の面子も納得の表情を浮かべる。
フルに"召喚魔法"を使えば、パーティーひとつ分のかさ増しが出来るのだ。
それならバラバラに分かれた方がいい。
「うー、あー、えっとぉ……。芽衣ちゃんがそっち行くならあたしもそっちに行くっす」
「するってぇと、前衛の俺はオッサンと一緒のがいいか」
「なんだかするすると決まってくわね」
「まあ、一応まだこれは仮決めの段階だからな」
役割バランスなどを考えると、一人が決まるともう一人も必然的に決まっていく。
そうして仮の組み分けをしてから細かい所を詰めていけば、調整もしやすい。
「あた、しは……、北条さんと同じパーティー、で……」
「カエデさんは確か盗賊職ッスよね。じゃあ僕はシンヤさんのパーティーで」
ロベルトは特にどちらのパーティーがいいという希望もなかったようで、すんなりと楓の主張を受け入れる。
「あと分けといたほうがいい組み合わせは……」
「北条さんと陽子さんも分けた方が良くないですか?」
信也の確認するようなセリフに咲良が意見を述べる。
北条は戦闘中は前衛に出る事もあるので、陽子のように後衛の位置で結界を張り、守備に徹する事はない。
だが野営の時にも"結界魔法"は大いに役立っているので、北条の"結界魔法"にも出番はある。
「そうね……。じゃあ、『プラネットアース』最後の一枠は慶介くんで――」
「いやぁ、そいつぁどうかな?」
陽子がさりげなく主張をゴリ押ししようとした所を、北条が止める。
話を遮られた陽子は不満げな顔を見せながらも、とりあえず北条の真意を聞くことにしたようだ。
「……この組み合わせで何か問題ある?」
「あぁ。ロベルトには悪いがぁ、それだとヒーラーが少し不安だぁ」
「僕ッスかッ!?」
仮決めではあるが、信也のパーティーに決まっていたロベルトは、急に自分の名前が出た事で驚きの声を上げる。
ロベルトは最初にパーティーを選ぶときに、盗賊職として楓と分けられて配置されていたが、"神聖魔法"を使う事もできる。
陽子がその事をきっちり認識して慶介を指名したかは疑問だが、一応役割としては問題なさそうに見える。
「俺たちのこれまでのパーティーではぁ、ヒーラーは軒並み中級レベルに達している。だがぁ、ロベルトの使っている"神聖魔法"は、初級レベル。これでは【リープキュア】や【キュアオール】も使えん」
【リープキュア】というのは中級の"神聖魔法"で、距離の離れているパーティーメンバーを治癒させる事が出来る魔法だ。
今では咲良もその魔法を使えるようになっていて、離れた相手を治癒するのにわざわざ【キュアオール】を使う必要もなくなっている。
他にも回復量が強化された【ミドルキュア】という魔法も、中級の"神聖魔法"には存在する。
先へ進むという事は魔物の攻撃力も上がっていくという事であり、いつまでも初級の"神聖魔法"だけには頼ってられない。
「そ、それでも"神聖魔法"は使えるんでしょ? それならどうにか……」
「自分で言うのもなんだがぁ、そっちのチームに俺はいない。その状況でいざという時に、生死を分けるヒーラーが初級魔法しか使えないというのはマズイと思うぞぉ」
「うっ……。で、でも……、あ、そうだ! ロベルトだって成長していけば中級魔法が使えるようにあるかもだし?」
「そいつも厳しいなぁ」
「何でよ?」
思わず反射的に聞き返す陽子。
その時、どこか申し訳なさそうに所在無げな様子のロベルトが、陽子の瞳に映る。
「ロベルトの今使ってる"神聖魔法"は本人のものではなく、"スキルスティール"で誰かから盗ったスキルだぁ。"スキルスティール"では、相手のスキル熟練度をそのまま使用する事が出来るがぁ、その代わりそれ以上成長する事がない」
「やっぱ……そうなんッスね」
これまでの使用感や、本人だけが感じ取れるスキルの曖昧な感覚によって、ロベルトもそうではないかと思っていたようだが、確信まではしていなかったらしい。
「ただぁ、すでに"神聖魔法"自体は自力で取得出来ているからぁ、一度スティールしたスキルを手放せば、一からにはなるが成長はしていくハズだぁ」
「そ、それはダメッス!!」
スキルを手放すという話を聞いて、これまで聞いたこともないような声で大声を上げるロベルト。
その表情には鬼気迫るものがあり、普段の温厚でヘラヘラとした彼からは想像が出来ない顔をしていた。
ロベルトの突然の大声に異邦人たちは少し驚いた様子を見せるが、カタリナだけは伏し目がちにその心情を覆い隠そうとする。
「い、いやまぁ、別に手放せとは言っとらんよぉ。それにその"スキルスティール"のスキルは、もっと使いこなしていけば同時に二つのスキルを盗む事も出来るようになるしなぁ」
「エェッ! それマジッスか!」
スキルの持ち主であるロベルトですら知らなかった情報を告げられ、今度は先ほどとは違う意味で大きな声を上げるロベルト。
「あぁ、まあまだ先の話だろうがなぁ。……で、そういった訳で『プラネットアース』の最後の一枠は、ヒーラーとしての腕の良い二人のどちらかが良いと思うぞぉ」
「腕の良いヒーラー……」
小さくそう呟くと、何やら考え込み始める咲良。
もう一人の"腕の良いヒーラー"であるメアリーは、そんな咲良の様子に気づき、自分の意見を述べる事なく様子を見守っている。
「あの……。私、『プラネットアース』の方に入ります」
ややあって、咲良が口にしたのは信也のパーティーに加わるというものだった。
「前衛の割合も、これで少しバランスが整うと思います。それに私は"神聖魔法"だけじゃなくて攻撃系の魔法も使えるから、戦闘でも後衛から戦えるし……」
合理的に考えると確かに適材適所といった感じではあるが、本人が余り乗り気ではない事は薄っすらと伝わってくる。
そんな咲良の様子を見て、陽子もいい加減慶介に拘るのを諦めたようだ。
「ふぅ……。じゃあ、今決まった編成は、『サムライトラベラーズ』が北条さん、龍之介、楓さん、慶介君、細川さん、カタリナ。『プラネットアース』は残りの六人って事で、どうかしら?」
「オレはいいぜ!」
「わ、私も……」
最初の希望通りのパーティーに入れた事で、満足気味の龍之介と楓。
しかし、ロベルト兄妹を除く他の者たちは、皆どこかしら渋い顔をしている。
バランスなどを重視して、感情面を排したパーティー編成だったので、それも仕方ないだろう。
「……良し。ではそういう事で、これからはこの二つのパーティーで分散してエリア攻略に向けて挑もう」
最後に信也が場をまとめると、それでも一応全員が了承の意を表す。
こうしてパーティー再編成が終わると、今度は具体的な話に移っていく。
「ところで、エリア制覇が目的なのはいいけど、私たちってまだEランクよね? そんなんで制覇できるとこなんてあるの?」
「そうね。確かにEランクでは厳しいけど、場所によってはEランクでも突破できるようなダンジョンはあるわ。まあそういうのは規模の小さいダンジョンだったりするけど」
「確かここって、かなり規模が大きいダンジョンなんですよね? 大丈夫なのかな……?」
「絶対とは言わないけど、大丈夫じゃない? あなた達だってもうみんなレベル三十を超えてるんだし」
陽子とカタリナの会話に、不安そうな声で加わる咲良。
それに対しカタリナは心配は余り抱いていないらしい。
先輩冒険者のそうした様子を見て、咲良の中の不安も少しずつ取り除かれていく。
実際にレベル三十といえば、Dランク冒険者になるための目安とされるレベルである。
余りにランクアップのペースが速いので、未だに北条を除く異邦人たちのランクはEランクのままであるが、レベル的には既にDランク下位相当だった。
「なあに。別に今すぐエリア攻略をしようって訳じゃあないんだ。時間をかけて攻略しつつ、レベルも上げていけばそこまで問題も起こらんさ」
とどめとばかりの北条の言葉に、一同は具体的にエリア攻略の可能性を見出し、しっかりと目標地点を見定める事が出来ていく。
となれば、あとはどのパーティーがどこを探索するのかである。
その後もダンジョン攻略についての話し合いは続き、一通りの方針が定まった所で解散となった。
次のダンジョン探索は、一日休みを挟んで明後日。
『スーパー銭湯』に入って入浴を楽しんだ後は、ぐっすりと眠って疲れを癒すのだった。
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