344 / 398
第十二章
第302話 アルファ誕生
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇◆◇◆
北条が試作品を作る、と言い出して"アイテムボックス"から取り出したもの。
それは肝心要となるゴーレムの核だった。
次に取り出したのはベルムホルト鋼とアーダル鋼を主とする合金で、北条が試行錯誤しながら各金属の比率を調整して作ったものなので、この合金自体に名前はない。
アーダル鋼は魔力浸透率と硬度に優れているのだが、その分弾性がなくて剣を作ってもポッキリと折れやすい。
それをベルムホルト鋼と幾つかの金属を混ぜ合わせる事で、弾性問題を解決し、更に魔力浸透率や硬度も向上させる事に成功していた。
それから他にも北条お手製の〈魔水晶〉や、雷晶石、水晶石などの各属性の力を秘めた水晶のような石。
ダンジョンの魔物からドロップした素材となる品々。
全て使用するのではないかもしれないが、見た目的には結構な量だ。
「おおー。それ全部使うのか?」
「んー、まぁ全部使うことはないだろぅ」
最後に何か石の板のようなものを三枚ほど取り出しながら、北条が答える。
その三枚の石板には記号や魔方陣などの他に、上位魔法文字と思しき文字も刻まれていた。
「うわぁ……。これ私にもよくわからないけど、上位魔法文字よね? この石板はどっかで仕入れたの?」
「この石板は俺の自作だぁ。こいつがまあ、ゴーレムを作る設計図……というか、原版みたいなもんだなぁ」
「えーと、三つあるということは、三種類のゴーレムが作れるという訳ね」
「あー、それはちょっと違う。種類という意味で言えば、原版よりもゴーレム錬成時に一緒に使用する素材によって、出来上がりが大きく変わって来る。この原版は姿形や基本性能の違いによって使い分けるもんだぁ」
北条はそう言うと、一つの原版となる石の板を手に取る。
それから一面に置かれた素材を吟味しながら選んでいく。
ただそれだけの場面のはずなのだが、最後にででんと置かれた大きな金属の塊を、まるで粘土を捏ねるかのように千切り取っていく北条の姿は異様だった。
「んー、これ位かぁ?」などと言いつつ、一抱えするような大きさの金属を切り離しているのだ。
「え、お、オッサン。その金属ってそんなやーらかいのか?」
「あぁ? 何言ってるんだぁ、龍之介。この合金にはアーダル鋼が多く含まれている。柔らかい訳ないだろぉ」
「いや、だって、なあ?」
仲間を求めるかのようにカタリナを見る龍之介だが、カタリナはカタリナで私に振られても……という感じで視線を逸らす。
そんなやり取りをしてる間にも、北条はちゃきちゃきとゴーレム錬成の手筈を整えていく。
少し離れた地面に原版を置き、原版に描かれた図に合わせるように、ゴーレムの核を原版の上に置く。
「よし、じゃあお前たちはちょっと離れててくれぃ」
「ええ、分かったわ」
「お、おう。もう早速おっぱじめんのか」
二人が離れるのを確認した北条は、原版に魔力を込める。
すると原版を中心に、光の線で出来た魔方陣が展開され始める。
この光の線は若干赤みを帯びた白い光を発していて、紙にペンを走らせるかのように、予め設定された魔方陣を徐々に形作っていく。
「わぁ……。ゴーレムを生み出す瞬間に立ち会うなんて生まれて初めてよ」
「てかオッサンはなんでゴーレムなんて作れんだ?」
ゴーレム錬成の作業に集中している北条は、二人の声に答える事はない。
今も展開が終わった半径五メートル程の魔方陣あちこちに、先ほど選別した素材を配置している。
どこに何を置くかも決まっているようで、指さし確認しながら慎重に北条は素材を置いていく。
「ふう、最後の仕上げ、いくぞぉ」
最後に北条は魔方陣のサークル内から外に出ると、誰に声をかけるでもなく、自分自身に発破をかけるように呟く。
それから最後に目を閉じ強く集中しながら、ゴーレムが生成されていくイメージを固め、魔力を魔方陣へと送り込んでいく。
「…………ンンッッ! ゴーレム錬成!」
北条がそう言葉を発すると、魔方陣の中にバラバラに置かれていた各種素材が、流体のような光へと変化していく。
それら光の流体は、魔方陣の中央部に集まっていくと、バラバラだった光の流体は一つの塊となってひとつの形に成形されていく。
流体そのものは光を放っているので、サングラスでもかけるか"閃光耐性"でもないと、蠢く流体のハッキリした動きは掴めない。
龍之介もカタリナも、眩しさの余り手で目を覆っているほどだ。
しかしそうした眩しい光も、流体が一つの形としてまとまり、完成形となる形へと成形されていくと、徐々に光も弱まっていく。
時間としては一分、二分といった短い時間であったが、光が完全に消え失せるとそこには身長二メートルちょっとの人型の物体が立っていた。
「おおおぉぉ……」
「わ……」
その人型の物体は、これまでの話の流れからしてゴーレムなのだと思われたが、見た目はダンジョンで出て来たゴーレムとは大分違っている。
体全体が角ばっておらず、流線型の滑らかなフォルムをしているのだ。
手足の関節部分も球体関節の人形とか、ヒンジのような構造にはなっておらず、見た感じ普通の人間と変わらないようにも見える。
体全体が金属でできているというのなら、あのような手足では折り曲げたり、動かしたりすることなどは出来ないはずだ。
そうした流線型のボディを基本として、その上からは近未来的なプロテクトスーツを身に纏ったような外見をしたゴーレム。
といっても、装備ではなく体の一部であろうからスーツ部分は取り外すことはできそうにない。
プロテクトスーツの形状をした胸の中央部分では、指を引っかけられそうな溝になった部分もあって、そこには何かを嵌め込めそうだ。
「ああー、ええっと、お前の名は『アルファ』だ。そして俺がお前を作り出した主だぁ。んーと、状況が理解できているなら右手を上げろぃ」
どこか戸惑った……というかどうしたらいいのか判断がついていないといった様子で、北条がゴーレムに指示を出す。
すると流線型のフォルムをしたゴーレム『アルファ』は、主である北条の言う事に従って右手を上げる。
「おおっ!」
これには製作者である北条も思わず声を上げる。
「凄い……。こちらの言ってる事が分かってるの?」
「そのハズ……だがぁ」
一言でゴーレムといっても、この世界では該当するものが複数存在している。
人型をしている無機物の魔物、或いは魔法道具などを総じてゴーレムと呼んでいるが、他にも魔法で一時的に作られるゴーレムというものも存在する。
"植物魔法"には【ウッドゴーレム】という魔法があるし、"土魔法"にも【アースゴーレム】という魔法があって、どちらもその名前通りの素材を元にしたゴーレムを生み出す魔法だ。
しかしこれらの魔法は一時的なもので、効果時間が切れるとゴーレムはチリとなって消えてしまう。
これらの魔法は、元々ダンジョンに現れるゴーレムを元にして作られたものだ。
これを一時的にではなく、恒久的に自分の配下として使えるようにと生み出されたのが、今回北条が生み出したゴーレムになる。
ダンジョンに出てくる、ゴーレム系が落とす核を元にして生み出された人造ゴーレムには、基本的な性能として知能が備えられている。
これによって簡単な命令などをこなす事も可能で、ゴーレムの核のランクによっては自律的な行動も出来るようになる。
北条が今回使用したのはストーンゴーレムの核で、ゴーレムの核としてはランクが高い方ではない。
しかし北条の持つ様々なスキルなども使い、本来以上の性能に引き上げられているため、アルファは自立思考も可能だった。
「ほう?」、「これは……」、「まさかぁ?」、などとぶつくさ言いながら、アルファの性能チェックを行っていく北条。
行っていたのはまずは基本的なチェックであり、戦闘テストはまだ行っていない。
この基本的なチェックの段階で、アルファに自立思考能力がある事が判明したからだ。
「んー、しまった。それなら発声機能をつけておくべきだったか?」
ただ命令されたことに従うだけのゴーレムには不要と、余計な機能を省いていた北条。
だが自分で考えて行動できるのなら、話が出来たほうが何かと融通も利く。
「いや、待てよ。これは早速あの機能をテストするのにもってこいだな」
アルファのチェックをしながら独り言を繰り返していた北条。
一人納得した様子で、"アイテムボックス"から小さな石の板を取り出す。
ゴーレム錬成時に使用した原版を、更に小さくしたような形状をしたものだ。
それを今度は地面に置くではなく、アルファの胸の中央部。
凹状になっている所へ、下から上に向けて石の板を差し込む。
まるで昔の家庭用ゲーム機のカセットを本体に差し込むかのように、石の板をはめ込んだ北条。
「なんかこの感触懐かしいなぁ。ま、それはそれとして……、『オーバーライド』」
北条がキーワードのようなものを唱えると、アルファの体の中を流れる魔力が活発化していく。
すると戦隊ヒーローのマスクをかぶったような頭部の口の部分が大きく変化していって、人間のそれと同じような形状に変化していく。
ちょうど口元だけ露出する、お面をかぶっているような状態だ。
そして変化が一通り完了すると、出来たばかりの口を開くアルファ。
「ハッセイキノウ、トリコミカンリョウ」
どこか人の声とは違う、抑揚のないその声は、北条や龍之介にとっては馴染のある、いわゆるロボット的な声をしていた。
0
あなたにおすすめの小説
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる