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第十二章
第304話 恋バナ
しおりを挟むあれから龍之介とアルファとの戦闘テストは行われ、何度か中断を挟みつつ、拡張ボードによる機能の追加を試していく。
その結果、メイスを手に近接戦闘を行いつつも、コアに刻まれた魔法を使って遠距離攻撃もできる、汎用的な仕上がりになった。
更には同じストーンゴーレムの核を使用し、〈魔水晶〉を多めに使用した、ゴーレムなのに魔法主体で戦う、ゴーレム二号のベータ。
軽量化した軽い身のこなしで、偵察や隠密状態を使って侵入者を排除したりする、ゴーレム三号のガンマ。
これら計三体のゴーレムを、この日北条は完成させた。
ガンマについてはストーンゴーレムではなく、サンドゴーレムの核を使用しているので一段性能は低いのだが、戦闘メインではないのでそこはとりあえず妥協してある。
三つのタイプのゴーレムを一気に完成させた北条だが、更にゴーレムを増産させようにも"ゴーレムの核"がないので、これ以上増産する事はできなかった。
とりあえずアルファ、ベータ、ガンマの三体は拠点に配置して様子を見つつ、適宜問題があったら改良していく事になった。
▽△▽△▽
「もう、北条さん。驚きましたよ!」
ゴーレムを完成させた翌日。
ダンジョンから帰還した『プラネットアース』の面々は、拠点内をうろついているアルファたちを見て、最初は反射的に武器を手にするといった反応をしていた。
それもこれも、直前で探索していたダンジョンのエリアに、ストーンゴーレムが出てきていて、何度も戦っていたからだ。
鉱山エリア十九層から続く、猿の魔物が出てくるエリア――第二地下迷宮エリアと仲間内で呼ばれるようになった所では、猿の魔物の他にストーンゴーレムも現れる事がある。
第二地下迷宮エリアを二十四層まで探索してきた『プラネットアース』は、その分だけゴーレムとも戦ってきたようだった。
「わっはは。前から拠点の防衛については考えているって言ってただろう?」
「言ってましたけど、ゴーレムとは聞いてませんよ!」
少し興奮した様子で話している咲良。
近くには他に信也や陽子もいて、二人の会話を黙って聞いていた。
「ん? そうだったかぁ?」
「そうですぅ!」
今回のダンジョン探索中、ゴーレムが数体まとめて襲い掛かってきたことがあった。
その時には前衛を突破して、後衛の咲良の元まで二体のゴーレムが襲い掛かってきていた。
陽子の気合を入れた【物理結界】と、ダンゴやマンジュウがフォローに入ったので、直接的な被害を受けることはなかったのだが、咲良にはそれが少しトラウマになったようだ。
今回拠点に戻ってきた時も、ゴーレムに一番強く反応をしていた。
「ゴーレムと言えば、レアドロップがあったよな?」
「何? もしやゴーレムの核かぁ?」
「多分それだと思うが……」
「あ、陽子さん。ちょっと"アイテムボックス"から出してもらえますか?」
「ええ、いいわよ」
信也がゴーレムのドロップについて話すと、北条がそれに強く反応を示す。
その様子を見た咲良は、陽子に頼んで現物を取り出してもらった。
「はい、これ」
「どもです。北条さん、これが欲しいんですかあ?」
「おう、それがあれば新しいゴーレムが作れるぞぉ。核以外の素材は余裕があるからなぁ」
「じゃあ、これをお渡しする代わりにちょっと付き合ってもらいたい場所があるんですけど、一緒に行ってくれますか?」
「んん? いや、ゴーレムを作るのは俺の個人的な利益ではなく、ここに住んでる人全員の為だからぁ……」
「まあ、いいじゃない。それくらい付き合ってあげたって。どうせダンジョン潜ってない時は、拠点に閉じこもってばかりなんでしょ?」
「ぬ? まあ別に構わんがぁ」
「じゃあいつにしますかっ?」
「んー、俺らはあと三日は拠点にいるから、その間ならいつでもいいぞぉ」
「三日ですね? 分かりました! それなら今からすぐでもいいですね?」
「え、あ、ゴーレムの核……」
元気よく返事した咲良は、〈ストーンゴーレムの核〉を持ったまま、部屋を出ていってしまう。
北条も少し戸惑ったように咲良の後を追って部屋を出ていく。
「……あの二人は相変わらずね」
「まあ北条さんの言い分は間違っていないと思うが」
「えぇっ? やだちょっと、リーダー。その話じゃないわよ」
「どういう事だ?」
「どういう事だも何も……。あんたも北条さん寄りの人だったのね」
「意味が……分からないんだが?」
嘘なんてつけそうにない、生真面目な顔をしている信也に、陽子はため息をつきながら答える。
「はぁ……。咲良のことよ」
「? 今川に何かあるのか?」
「慶介君はまだ子供だから別として、うちの男どもはリーダーといい、北条さんや龍之介と言い、朴念仁ばかりね」
「朴念仁? ……俺は確かにそうかもしれないが、龍之介はあんなに明るくて外交的でよく喋るぞ?」
「本来の言葉の意味の方じゃないわよ。こりゃあ、リーダーも相当のようね」
「本来の意味じゃない……? という事はつまり、今川が北条さんに懸想しているという意味か?」
「懸想ってあんた、古めかしい言葉を使うわね。でも、そういう事よ」
「それは……気づかなかったな」
一瞬ハトが豆鉄砲を食らったような顔をして、信也は驚きを表現する。
「里見さんはいつ頃から気づいていたんだ?」
「もう大分前からよ。最初は本人も自覚してなかったみたいだけど、最近はようやく自分の気持ちに気づいて、積極的に動いてるわ」
「あ、さっきの件もそういう事か」
「そうよ。自覚する前ならともかく、最近はもうあからさますぎてわざとやってるのかって位、好き好きオーラが出てたでしょ」
「うっ……、そうだったのか……」
「女子はみんな気づいてたわよ。多分こういう事に一番疎い、由里香ちゃんでもね」
陽子も別に恋愛方面に鋭いという訳でもなかったが、咲良については流石に察しがついていた。
そして、由里香や芽衣、それから楓らが北条に対し特別な想いを抱いている事も把握している。
ただそちらは恋愛感情なのかというと、そうではないんじゃないかと陽子は思っていた。
「ま、何にせよ、北条さんも罪深いわね」
陽子も「頼りになる人」という意味では、北条の名が真っ先に浮かぶ。
しかし恋愛感情を抱くかといえば、そう言った事は全くなかった。
ただ咲良たちに関しては、状況的に危ない所を助けてもらったり、そういった事を何度か繰り返していくうちに、吊り橋効果が出たんだろうなーと、納得はしている。
「ううむ。メンバーの事はちゃんと見ているつもりだったのだが、見る目が甘かったようだな」
「見る目を磨くためにも、リーダーも彼女作ったら?」
「いや、それだけはしないつもりだ」
会話のノリで信也を茶化すつもりだった陽子は、信也の硬質でハッキリとした返事を受けて、微かに驚いた。そして、自然と信也の方へ顔を向ける。
いつも生真面目な顔をしているのでわかりにくいが、そこには強い意思を感じさせる信也の姿があった。
「俺は……いつか必ず日本に帰るからな」
「……そう」
今度は茶化す事なく、静かに陽子は頷くと場に静寂が訪れる。
そのまましばらくこの静かな時間は続くかと思われたが、それを打ち破る者が現れる。
「に、日本に帰るにしても、彼女も一緒に連れていけばいい」
「えっ!?」
「……!?」
静寂を打ち破ったのは、いつのまにか近くにいた楓だった。
彼女にしては珍しく、余り言葉をつかえる事もなく、妙に力強さというか念の強さを感じるセリフを吐いていた。
そして驚いた様子の信也と陽子の様子を後目に、楓も北条の出て行った扉を開けて外に出ていく。
「…………」
「…………」
「い、いつからいたのかしら?」
「さ、さあ……?」
てっきり自分たち以外にはもう誰も残っていないと思っていた二人は、互いに目を合わせる。
少しして、落ち着いてきた陽子が信也に楓について尋ねるが、信也も寝耳に水といった感じで、まったく楓の存在に気づいてはいなかった。
(けど……、そうか。そういう考え方もあるんだな……)
普段必要のない軽口を叩くことがない楓が、わざわざあの場で言ってきたのだから、彼女にとってはそれだけの何かがあったんだろう。
信也は楓の残した言葉を思い返しながら、咲良の件と一緒にしばし物思いに耽るのだった。
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