どこかで見たような異世界物語

PIAS

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第十二章

第318話 出会う二人

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 拠点にSランク冒険者であるゼンダーソンが滞在して、数日が過ぎた。
 初めのうちは拠点の各所に設置されている、魔法道具や魔法装置に驚いていたゼンダーソン。

 信也達の事をいっぱしの冒険者であるとゼンダーソンも認めていたが、それでもこれだけの魔法道具を揃えるには、もっと上のランクじゃないと無理なハズだ。
 なんせこの広い拠点内のあちこちに設置されているのだから。

(実家が貴族や大富豪っちゅうもんが混じっとるんか?)

 そんな事を考えもしたが、細かい事に拘らないゼンダーソンは、すぐにそうした考えをやめる。
 それよりもゼンダーソンは、『スーパー銭湯』と名づけられた建物にある、大きな風呂に嵌っていた。

 ゼンダーソンは、信也達の訓練をみるついでに自分でも久々に本格的な訓練を行っていた。
 その訓練で汗を流した後に入る風呂が、これまた何とも言えずたまらないのだ。


 今も訓練を終えて、信也とロベルトと一緒に風呂に入っていたゼンダーソン。
 最初に教えられた、"浴槽に入る前にきっちり体を洗う"という教えもちゃんと守り、オッサン臭い声を上げながら湯船に浸かっている。

「ふいいいいぃぃ。タマランなー、これは」

「すっかり気に入ったようだな」

「ああ。最初は湯に浸かるなんて何を言うとるんやって思たけど、慣れると癖になるわあ。こりゃあ、ウチ帰ったら早速作らせとかんとな」

「ほぁー、流石ッスね。蒸気式の風呂ならともかく、こんなお湯を大量に使う風呂なんて、一般家庭じゃまず出来ないッスからね」

 今は特に冬場な事もあって、暖かい湯に浸かるという行為が更に体を芯まで温めてくれて心地良い。

 初めの頃はSランク冒険者ということで、どこか緊張した部分があった信也達も、今ではこうして一緒に風呂に浸かって駄弁るくらいに慣れていた。
 それもゼンダーソンの持つ裏表のない性格と、相対していると感じられるカリスマ的な魅力のせいだろう。

 そう言った意味では、現在現役で活動してる四人のSランク冒険者の中では、一番社交的だといえた。

「むっ?」

 そのゼンダーソンが、不意に湯船の中で立ち上がる。
 二メートル以上の巨体の持ち主であるゼンダーソンが立ち上がると、座っている信也らからすると巨大な壁のように見える。

「どうしたんだ?」

「何人か、この拠点内に入ってきたもんがおるな」

「何人か? ホージョーさん達ッスかね?」

 この『スーパー銭湯』は、拠点の東門から入ってすぐの位置にあった。
 その為、北条たちがダンジョンから帰ってきたとするなら、位置的に気づいてもおかしくはない。

「そこまで離れてる訳でもないんだが、この距離でも気づくんだな」

「一つだけみょーーな気配があったからなあ」

「あー、多分ソレがホージョーさんッスね」

「ほおう。ほなら、すぐに風呂出て会いにいこか」

「そうだな。もう十分湯には浸かったし丁度いい」

 そう言って男衆は風呂を出る。
 ちなみに女衆はまだ訓練場にいる筈だ。
 拠点に家が完成し、冬になって気温が下がっていくにつれ、町の方へ出かける回数も減っていた。
 今では拠点にも人が増えたので、代わりにそうした人たちとの交流も行うようになっている。


 信也らが風呂を出て中央館の方へ向かうと、入り口のドアの近くでは北条たち『サムライトラベラーズ』の面々と、訓練場で訓練していた由里香らの姿が勢揃いしていた。
 信也達も、ほっかほかと体から湯気を発しながら、その集団に向かって歩いていく。

 その距離が百メートルを切った辺り。そこで一度ゼンダーソンの足が止まる。

「どうしたんッスか?」

「いや、なんでもあらへん」

 ロベルトの問いにそう答えるゼンダーソンであったが、明らかに何かがあったのは反応からも窺える。

(今のは……何や? "鑑定"をされた時の感じに似てたが、〈防鑑のアミュレット〉は何も反応してへん)

 ゼンダーソンは反射的に首にかけられているアミュレットに触れるが、普段となんら変わった様子は見られない。
 その事を気にしつつも、信也らがみんなのいる中央館前に到達すると、すでに由里香らの口からゼンダーソンについての軽い説明は済んでいたようだった。

「いよぅ。話は聞いたぞぉ。そっちのがSランク冒険者のゼンダーソンだなぁ?」

「ああ、そうや」

「俺ぁ『サムライトラベラーズ』のリーダーをしている北条だぁ。そしてこっちが龍之介で――」

 そう順番にメンバーを紹介していく北条であったが、正直ゼンダーソンはその説明にあまり注意を払う事が出来なかった。
 目の前にいる男から、強烈な違和感のようなものを感じていたからだ。

(この男……ホージョーと言ったか。なんや、これは……)

 思わずジッと北条を見つめるゼンダーソン。
 北条の方はそのまま仲間の紹介をしていき、そのたびに紹介された側も一言二言、挨拶の言葉を述べていく。

(強いのか弱いのか、それすらもさっぱり分からへん。まるでホージョーのいるとこだけ暗闇に閉ざされてるような、妙な感じや……)

 戦いを生業にする者にとって、相手の強さを量る能力というのは重要だ。
 そういった能力は、冒険者として様々な経験を積んでいくうちに身に付いていくものだ。
 Sランク冒険者であるゼンダーソンともなると、その能力は研ぎ澄まされている。

 だというのに、目の前の男がどれほどの力量なのかさっぱり見えてこない。
 それはSランクであるゼンダーソンをしてみれば、警戒のシグナルを鳴らすのに十分であった。

「あの……ゼンダーソンさん?」

 挨拶の途中で、そうしたゼンダーソンの様子に気づいたメアリーが、気づかわし気な口調でゼンダーソンに呼び掛ける。

「あ、ああ。スマンなあ。ちとばかしボーっとしてたみたいや」

 慌てて返事をしたゼンダーソンは、体に余分な力が入っていることにようやく気付き、一息ついてから体の力を徐々に抜いていく。

「そうですか……。先ほども言いましたが、私はメアリーといいます。見ての通り、このメイスと"回復魔法"の使い手です」

「なかなか厳つい武器を使う嬢ちゃんやな。よろしくなあ」

 こうして自己紹介は進んでいき、最後に慶介の紹介が終わると、注目の視線がゼンダーソンに集まる。

「あー、ちょっと話は聞いたようやけど、俺の名はゼンダーソン。『ユーラブリカ』で冒険者パーティー『バスタードブルース』を率いとるSランク冒険者や」

 冒険者の中でも最高ランクとされ、現在は四人しかいないというSランク冒険者を前にして、龍之介は興奮を隠せないでいる。
 カタリナや慶介はどこか恐縮した面持ちであるし、楓はそっと北条の背後に隠れるように位置を変える。

「ここへは新たにごついダンジョンが見つかったゆうんで、飛んで来たんやけど……」

 ここでゼンダーソンが再び北条へと視線を向ける。

「偶然ギルドでシンヤ達と会うてな。ほんでホージョーの話を聞いて、気になったから、ここで待たせてもろたんや」

「あ、その前に、ゼンダーソンさんには危ない所を助けてもらったのよ」

 陽子が肝心な所に補足を加える。
 それを聞いて、北条たちも納得の表情を浮かべた。

「別にあの程度、助けた内にも入らへんけどな」

「そんな事ないですよ! だって相手はAランクでしたし」

「Aランク……。もしかしてあの『勇者』と揉めたのかぁ?」

「あの……、ギルドでしつこく絡まれちゃって……」

 あの時の事を思い出し、口惜しさがこみあげてくる咲良。
 "恐怖耐性"が仕事をしているのか、ああいった目にあったというのに、シルヴァーノに対して恐怖心は抱いていないようだ。

「勇者ぁ? そう言えばそないな事もいってたな。まああんな胸糞勇者の話はどうでもええ。それよりホージョー。あんたの事の方がよっぽど気になる」

 そう言って北条に強い視線を送るゼンダーソンは、少し興奮しているようだ。

(何ぞよく分らへんが、この男が只者やない事は確かや。是非ともホージョーとは拳を交えてみたい!)

 最初こそ強弱のハッキリしない北条の不気味な雰囲気に、押された形になっていたゼンダーソンであったが、今ではそれならそれだとばかりに、戦意が膨れ上がっていた。

「そ、そうかぁ。だがまあなんにせよ、一先ず中に入ろう」

「ほなら、その後に俺とやり合おうか」

 すっかりバトルモードのスイッチが入った様子のゼンダーソンは、北条が提案を断って来るなど微塵も思っていないようだ。

 そんなゼンダーソンの様子に、北条は少し困惑した様子だが、龍之介や陽子などは、この二人が戦ったらどうなるのか、興味津々といった様子。

「はぁ……。ま、後でなぁ」

 そうした空気を感じ取った北条は、そう言いつつ館の中へと入っていくのだった。



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