391 / 398
第十三章
第342話 北条のCランク昇格
しおりを挟む「いよう、久しぶりだな! リューノスケ」
「お、ムルーダじゃねえか。これからダンジョンか?」
「そうだ。その前にちょっとこっちに顔出してこうと思ってな」
シルヴァーノの襲撃から二週間ほど拠点に引きこもり、そろそろ活動再開しようかといった所に訪れた、ゼンダーソンの冒険者仲間たち。
しかしゼンダーソンのように拠点に長居する事はなく、その日の内にゼンダーソン共々町へと帰っていった。
なんでもこれから四人でダンジョンに潜ってくるらしい。
ムルーダらが拠点を訪れたのは、その次の日の事。
昨日はなんだかんだでダンジョンに向かう事はなかったのだが、今日こそは! と意気込んでいた所への訪問だった。
彼ら『ムスカの熱き血潮』も、今や全員Eランクになっている。
初めの頃はレベルが上がりやすいとはいえ、これは少し早いペースだ。
というのも、これも単に無理をしない程度に頻繁にダンジョンに潜っているせいだった。
他の冒険者のように、一山当てたからといって一か月休みにするような事はしていない。
ダンジョンの探索に関しても、異世界人の称号を持つツヴァイが、前衛兼ヒーラーとして仲間をフォローしているので、安定感を保ちつつダンジョンの探索に励んでいるようだ。
「ちょっと、ムルーダ」
「ん? ああ……。そうだ、忘れてた。ギルドの方から伝言があったんだった」
再開の挨拶の後、互いの近況を話し合っていたムルーダと龍之介の間に、シィラが割り込んでくる。
久々のライバルとの会話に花を咲かせていたムルーダは、今思い出したといった表情になる。
「ああん、伝言?」
「つっても、お前宛てじゃないけどな。お前んとこにホージョーさんっているだろ? その人にギルドまで来てほしいって連絡頼まれたんだよ」
「オッサンに? ああ、分かった。後で伝えとくわ」
「んじゃ、頼んだぜ。じゃあ、俺らもそろそろダンジョンいってくらあ」
「おう、またなー!」
最後に挨拶を交わすと、ムルーダらは拠点を後にした。
それを見送った龍之介は、元居た訓練場の方へと戻っていく。
そこには由里香や芽衣、信也などの姿があり、久々のダンジョン探索の前に軽く運動をしていた所だった。
中でも信也はシルヴァーノに背後から斬られてしまった鎧を、この引きこもり期間中に修理してもらっており、その鎧の感覚を確かめるかのように、体を捻ったり可動域を確かめている所だった。
「龍之介。彼らはこれからダンジョンに向かう所か?」
「みたいだぜ。ここへは久々に会いに来たってのと、伝言を頼まれてきたみてーだ」
「伝言?」
「なんでも、オッサンにギルドへ顔を出して欲しいって連絡を頼まれたとか」
「ギルド……か。今日はこの後全員でダンジョンに向かう予定だったが、一緒にギルドにも顔を出していくか」
すでにシルヴァーノの脅威は去ったと見ていい頃合であるが、直近の事もあって、少しナーバスな空気が信也らの間には流れていた。
そのためダンジョンまでは全員で移動する予定で、今その準備をしている所だ。
「そーだな。ま、そんな遠くもないし」
この異世界での生活に慣れ、身体能力も強化されていった異邦人たちは、もはや徒歩三十分程度は近いという認識になっている。
それに時間に縛られる事のない生活を送っているので、時間に関して少しルーズになっているのかもしれない。
それから龍之介らが訓練場で体を動かしていると、残りのメンバーも続々と訓練場へと集まってきた。
北条に伝言を伝え、全員でギルドを訪ねる事になった信也たちは、全員でぞろぞろとギルドへと向かう。
そしてギルドへ到着すると慣れた様子で建物へと入り、受付で用件を伝えると、受付嬢は北条にCランクへの昇格を告げた。
「Cランク、かぁ」
「北条さんおめでとう」
「えー、俺たちはー? 昇格したのオッサンだけか?」
「ええと、はい。ギルマスからはホージョーさんだけと窺っております」
「まあ、元々北条さんはDランクになるのも一歩早かったしね」
「そーよ。リューノスケはちょっと図々しいのよ」
「な、カタリナ。てめー」
カタリナが仲間に加わって以降、咲良以外の天敵が一人増えたことで、龍之介はツッコミを入れられる事が増えてきた。
ただ最近は、咲良よりもカタリナからのツッコミが多くなってきている。
「あの……ギルド証を更新致しますので、提示をお願いします」
「おお、そうだったぁ。……ほいよぉ」
龍之介のやり取りに少し気を取られていた北条は、〈魔法の小袋〉からギルド証を取り出し、受付嬢へと渡す。
「はい、では少々お待ちください」
ギルド証を受け取った受付嬢は、奥の部屋へと消えていく。
ギルド証はランクによって色や素材が変化するので、ランクが上がった際にはその度に再発行される。
更新自体は、カードの情報をそのまま移行するだけなので、然程時間は必要としない。
五分もしない内に、部屋の奥から受付嬢が戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがCランクのギルド証になります。Cランクのギルド証は魔鋼製でして、紛失した場合は再発行に金貨一枚が経費としてかかります」
受付嬢から手渡された新しいギルド証は、黄色をしていた。
素材が魔鋼製との事だが、前のと比べても触れた感じでは違いは分からない。
「それとCランクになりますと、指名依頼を受けられるようになります。これは必ずしも受注しないといけない訳ではありませんが、受けておけば依頼者とのコネクションが出来るのでお勧めですよ」
この指名依頼には、依頼者が直に指名してくる場合と、依頼者がこれこれこういう人材を求めてるという相談をギルドにして、その内容からギルド側が依頼相手を見繕うケースがあるようだ。
「それからCランクになりますと、クランを結成する事が出来ます。Cランク以上の代表者と、代表者を含めて十名以上のメンバー。それから登録時に金貨一枚をお支払いいただくことで、クランを結成する事が出来ます」
「ああ、その辺の話は聞いている。仕事を回してもらったり、冒険者を紹介してくれたりするんだったなぁ」
「ええ。他にもギルドの保有する情報を提供される事もあります。大きなメリットという程のものはありませんが、年会費などはかからないので、大人数で活動するなら作っておいた方が良いかと思います」
「ああ、分かったぁ。検討しておこう」
最後にそう言ってカウンターから離れる北条。
一緒についてきた他のメンバーも、ギルドに特に用事はないのでそのまま北条と一緒にギルドの建物を後にした。
▽△▽
「それにしてもCランクかあ……」
「なんかついこないだまでFランクとかだった気がするっす」
「Cランクになったのはまだ北条さんだけだよ~、由里香ちゃん」
「いや、それにしても早いわよ。ホージョーはともかく、アンタ達だって登録してから一年も経たずにDランクなのよね?」
「ヘヘン、まあ俺様にかかればトーゼンよ」
「ぐ……。何か言い返してやりたいけど、事実は事実だから何も言い返せないわね」
ギルドでの用事を済ませダンジョンに向かう道中、信也達は世間話に花を咲かせていた。
「Dランクまでは実力次第ではサクッと上がる人は時折いるッスけど、Cランクへの早期昇格は少し異例な事ッスね」
「そうね。Cランク昇格には人柄とかギルドへの貢献度も考慮されるから、そう簡単には昇格できないハズなんだけどね」
この人事の裏には、《ジャガー町》冒険者ギルドマスター、ナイルズの思惑が絡んでいた。
北条の実力はすでにCランクで収まるレベルではなく、村長救出や悪魔討伐など、実績もある。
冒険者の数は日に日に増えてはいるが、他所からきた高ランク冒険者より、身近で接してきた北条の方が、ナイルズとしてもまだ使いやすい。
だというのに肝心のその相手がDランクのままでは、ギルドから指名依頼を出すことも出来ないのだ。
そのため、少々強引に北条のCランク昇格を決めたという経緯があった。
「まあオッサンがCランクになったのはいーけど、指名依頼ってなんかめんどくさそーじゃね?」
「何言ってるのよ。受付の人も言ってたけど、商人や上手くいけば貴族なんかとも縁が持てる可能性があるのよ?」
「えー? でも、貴族っていうならすでにここの領主のオッサンと、その娘とは繋がりはあるだろ?」
「う、そ、それもそうね……」
そもそもここはダンジョンが近くにあるので、商人などと関係を深めなくても、ダンジョンに潜るだけで生活費を稼ぐことは可能だ。
まあとはいえ、少しでもそういった人脈を築く事は、悪い事ではないだろう。
「俺ぁ指名依頼の事よりも、クランの事の方が気になるなぁ」
Cランク昇格による特典として、受付嬢が口にしていたクランに関する話。
どうやら北条はそちらの方が気になるようで、話題はクラン関連へとシフトしていった。
0
あなたにおすすめの小説
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる