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第一章
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しおりを挟む「僕と君の婚約は今をもって破棄したい」
「……理由を聞いても?」
「結婚は義務だ。だけど、どうせ必ずしなければいけないのなら、僕は僕の希望も通したい」
「どんな?」
「君は確かに可愛い。だけど、もっと他にも……その、身体が細い子がいる。僕はそっちの方がいい」
「つまり、私との婚約を破棄して、他の線が細い子と婚約を結びたい、と」
「そ、そう」
ぷつり、と。
私の頭のどこかで何かが切れた音がした。
えぇえぇ、そうでしょうとも。神様は前世の記憶は与えてくれても、それを実行した上でのチート、“何を食べても太らない”は与えてくれませんでしたよ? だからこそ美味しいものをたーくさん食べれるようになった上に幼馴染が相撲取り並みに食事をとるなんてなったら、体型が他の令嬢よりも多少ふくよかなのも無理ないでしょ。
だいたい、私は私だけで食べてる分にはある程度コントロールできてたわ。貴方が自分だけ食べているのは嫌だからと私にも寄越してきたんでしょうが。それに、確かに私もぽっちゃりだけど、標準より少し大きめかなってくらいですんでるのよ! むしろふくよかな女性の方が家の財力があったり、元気な子供を産めそうっていうのがこの世界の美意識よ。言っときますけど、男性はそんなことないからね!
しかも、言うに事欠いて、貴方、自分の体型を完全に棚に上げて……。
「……分かったわ。婚約破棄、しましょう」
「……本当に? 破棄、するのか? できるのか?」
「えぇ。さすがにこの場でとはいかないけど、陛下とお父様のお許しがでるまで二人でお願いしましょう」
「……あぁ」
……ちょっと。こちらがいいと言っているにも関わらず不満そうにするのはどうしてか理解に苦しむのだけど。
ベルナールは苦虫をすりつぶしたような顔をして、そのまま部屋を去っていこうとした。
「ちょっと待って」
すれ違い様に手を取り、足を止めさせた。
「なんだ?」
「私の話はまだ終わってないわ」
「……やっぱりやめたいのか?」
「何を?」
「何をって……婚約破棄の件しかないだろう」
「それはもう話がついたでしょう? 私が言いたいのは別よ」
話がついたと私が断じた瞬間、ベルナールの肩が僅かに震えた。今度は今にも泣きだしそうな顔をし始めた。駄目だ。私はこの顔に笑顔の次に弱い。自分の弱点をよく理解しているので、あえて目をそらし、背を向けた。
「明日から私と貴方で痩せるために色々やるわよ。陛下への婚約破棄のお願いはその後、無事に二人とも痩せられたら、よ!」
この時、私は背を向けていたからベルナールがどんな表情をしていたか知ることはできなかった。
「……いいだろう。また明日、王宮で話し合おう」
「えぇ、また明日」
「見送りはここでいい。外に護衛も待たせてある。ヴィーは早速だが明日からどんな方法でやるか考えてくれ」
「そう。分かったわ。……じゃあ、ごきげんよう」
「あぁ」
口元を隠して足早に去るベルナールに軽くお辞儀をして部屋から見送った。
まさか婚約破棄を言ってくるとは思わなかったけれど、その理由にはもっと驚かされた。完全にお前が言うかってやつだ。
でも、何だろう。何かに胸のあたりを軽く刺されたような。そんな痛みがしばらくの間続いた。
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