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第12話 勇者の望みは
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「とりあえず今日は休んで、明日王宮へ来いってさ。ほんと、人使い荒いよね~!」
イラの通信魔法で魔王の討伐を報告すると、返事はすぐに帰ってきた。核を封印したことで減った瘴気の影響は、すぐさま王都まで伝わったらしい。
「では各自自由に休みましょうか」
「では俺はアヤト殿についているよ」
「うん。兄さんをよろしく」
綾斗は未だ目を覚ましていない。足速に去っていくベルトランを、優斗は穏やかな笑顔で見ていた。
エデュアルドは複雑な思いだった。ベルトランは綾斗を好いている。それはエデュアルドから見ても明らかだった。優斗が気付いていないはずはないだろう。このまま兄の幸せを思って身を引くのだろうか。
「ユート、ちょっと良いか?」
「エディ? どうしたの?」
部屋に戻ろうとする優斗を呼び止め庭に誘った。瘴気が晴れて澄み渡った空を、夕陽が鮮やかな赤に染めていた。
「ユートはこのまま身を引く気なのか?」
「えっ」
優斗が驚いた様に顔を上げる。私に気付かれていないと思っていたのだろう。
「魔王討伐を成功させた勇者は褒美が貰える。聞いているだろう?」
「ああ、そういえば……」
「だからその時に」
出来る事なら、私とーー
そう伝えてしまいそうになるのをどうにか堪えて笑みを作る。
「ユートの気持ちを主張すべきだと思う。それくらいの権利が十分あるほどに、ユートは頑張ってきたのだから。誰から何と言われても、私はユートの味方をしよう」
優斗は大きな目を更に大きく開くと、瞳を輝かせた。
「……ほんと?」
「ああ。約束する」
エデュアルドがしっかりと頷くと、優斗は花が咲く様に笑った。
準備があるからと去っていった優斗を見送って、エデュアルドは庭のベンチに腰を下ろした。薄暗い中庭をぼんやりと眺めながら、失ってしまった右腕の紋様に思いを馳せる。思えば最初から、優斗とエデュアルドを結ぶものはそれくらいしかなかった。今はそれすら消えてしまった。もう体をつなげる建前も無い。
最後くらい素直に気持ちを伝えるべきだったのだろうか。情けなく泣きつけば、絆されてくれたかもしれない。
それでも、エデュアルドは自分の選択に後悔していなかった。自分との運命が交わらなくても、好きな人が幸せになれるのならそちらの方が良い。そう胸に刻んで見上げた空には、滲んだ星が浮かんでいた。
翌朝、目を覚ました綾斗も加えた6人で王都に向かった。オルタンシア領は辺境ながらなかなかに規模が大きく、街の中心にある神殿には王都と繋がる常設の転移陣が設置されている。それを潜り抜ければあっという間に王都の神殿だ。
「勇者様と盾様のご帰還だ!!」
「魔王討伐おめでとうございます!!!」
王都に着いた瞬間歓声に包まれ、エデュアルドはその勢いにたじろいだ。神官と思しき多くの人が拍手をしながら満面の笑みを浮かべている。中でも一際大きな杖を持った人物が、前に進み出てきた。
「フォリオ様! 無事のご帰還、お喜び申し上げます!」
「ふふ、歓迎ありがとう」
副神官長だというその男性はエデュアルド達を見渡し深々と頭を下げた。
「さあ、皆様こちらへ。王宮へお連れします」
そう促された先には豪華な馬車が用意されていた。優斗に続き、エデュアルド、イラ、フォリオと馬車に乗り込む。最後に乗り込んだベルトランが綾斗に手を差し伸べたが、綾斗はその手を取らずに一歩下がった。
「僕には王宮へ行く資格はありません。勇者でも盾でも無いですから。むしろ――」
「全く関係ない訳ではないのだから、良いじゃないか。あなたの事を国王――父上にも紹介したいし」
綾斗の言葉を遮ると、ベルトランは腰に手を回してやや強引に馬車に引き連れた。
街に出た馬車を待っていたのは、民衆の更なる大歓声だった。
「勇者様!! 盾様!! よくぞ戻ってこられました!!」
「勇者様万歳!!」
「魔王討伐おめでとうございます!!!」
口々に声援を送る人々に、優斗はニコニコと手を振って応えている。その横ではベルトランが綾斗に寄り添って手を振っていた。それを優斗の視界に入れない様にさり気なく間に割って入ると、優斗はエデュアルドを見上げてにこりと笑った。
「この度は、魔王討伐、まことにご苦労であった。まさか先代の勇者殿が魔王になっていたとは……」
王宮へ向かうとすぐに謁見の間へと通され、国王陛下から労いの言葉を受けた。普段のエデュアルドなら緊張で固まっていたのだろうが、今は他の――優斗の事が気になっていてそれどころではなかった。
「して、今代の勇者殿よ。最初の約束通り褒美を与えよう。財宝でも、地位でも、なんでも申してみよ」
ユート……
チラリと隣を伺うと、優斗はエデュアルドを見て小さく頷いた。それに頷き返してエデュアルドは真っ直ぐ前を向く。
ユートが幸せなら、私は――
「婚姻の許可を頂きたいんです。俺と――」
右隣にいる優斗の気配が動く。次の瞬間、腕に温もりを感じてエデュアルドは身を硬くした。
「エデュアルドの」
「えっ?」
「え?」
優斗の口から放たれた言葉に理解が追いつかず、エデュアルドはぽかんと優斗を見た。優斗もまた呆気に取られた様子でエデュアルドを見返していた。
「な、なぜ今そんなふざけた事を言うんだ! 君が好きなのはベルだろう!?」
「えっ、俺が好きなのはエディだけど……」
そこまで言って優斗は口を噤んだ。沈黙が謁見の間に落ちる。
「ぷ、……くっくっ……」
それを切り裂く様に、小さな笑い声が響いた。見れば優斗の横に立っていたイラが、肩を震わせて必死に笑いを堪えている。しかしイラの笑い声は次第に大きくなり、やがて腹を抱えて笑い出した。
「あーっはっはっは! もーだめ! 耐えられないよ!」
「くくっ……駄目ですよ、イラ。国王陛下の御前です」
イラが大口を開けて笑う。フォリオも言葉でたしなめてはいるが、肩を震わせながら笑っている。その隣でベルトランも口元を隠しながら満面の笑みを浮かべている。そんな中で綾斗だけは困惑したようにキョロキョロと周りを見ていた。
「あーおかしー! ユートがベルを好きだなんて、何でそんな勘違いしちゃったのさ!」
「何故って――」
あの時盗み見た2人の行為を思い出し、思わず赤面する。それを見て何か勘づいたのか、フォリオがため息をついた。
「大方ろくでもない勘違いなのでしょうが、ユートの気持ちは私から見ても嘘ではないようですよ」
その言葉にイラとベルトランも深く頷く。
「エディ」
向かい合った優斗の真剣な表情に心臓がうるさいほどに高鳴った。熱の籠ったその瞳は、真っ直ぐにエデュアルドだけを捉えている。
「信じてもらえないかもしれないけどさ、俺はエディの事を愛してる。だから、」
そう言いながら優斗はポケットから小さな箱を取り出して開いた。
「俺と結婚してください!」
その中に入っていたのはシンプルな白金の指輪だった。
「わ、私は……」
指輪を見つめながら、エデュアルドの頭の中を様々な感情が駆け巡った。一度は諦めようとした恋心。それがこんな風に叶うなんて。嬉しいような、信じられない様な、胸が張り裂けそうなほどの幸福感が溢れてきて視界が滲む。
その表情を見て、優斗は不安げに瞳を揺らした。
「エディは嫌? 俺と結婚するの」
エデュアルドが勢いよく首を振って否定すると、優斗はほっとした様子で微笑んだ。
「じゃあ俺と、結婚してくれますか?」
「――はい」
嬉しそうに破顔した優斗がエデュアルドの左手をとり、薬指に指輪をはめる。それはまるで最初からそこにあったかのようにぴったりと収まった。
「話はまとまったようだの」
玉座から声が聞こえ、エデュアルドはハッとしてそちらを振り向く。そこには目を細めて満足げに笑う国王の姿があった。
「勇者殿の望み通り、勇者殿――ユート・アカサキと勇者の盾――エデュアルド・オルタンシアの婚姻を認めよう」
国王は厳かに宣言した後、ふたりを順に見て笑みを深めた。
「次期辺境伯が相手だからな。勇者殿には辺境伯の婿に見合うだけの爵位も与えよう。もちろん結婚の祝い金もな」
「ありがとうございます!!」
エデュアルドは最上級の礼をとる。優斗も慌ててそれに倣った。
「ユート、エデュ、おめでとう!」
「最後までハラハラさせられちゃったよ~! 末永くお幸せにね!」
「婚姻の儀は私にお任せください。最高の式にして差し上げますよ」
「みんな、ありがとう」
謁見の間を出てすぐ、エデュアルドと優斗は仲間たちに囲まれ祝福された。皆一様に笑顔で結婚を喜んでくれていた。
「エデュアルドさん」
綾斗がエデュアルドの前に進み出た。こうして向き合うのは初めてかもしれない。改めてまじまじと見た綾斗は少し優斗の面影があった。
「優斗の事、よろしくお願いします」
綾斗は姿勢を正すと、エデュアルドに向かって深々と頭を下げた。
「はい。必ず幸せにいたします」
決意を胸に肩を抱き寄せると、優斗は強く抱き返してきた。
「エディが俺を幸せにする、じゃないよ」
「っ、」
反論しようと開いた口はキスで塞がれてしまう。小さなリップ音を立てて唇が離れると、ふわりと笑って優斗が言葉を続けた。
「俺たちふたりで幸せになるんだろう?」
「――そうだな」
エデュアルドも優しく微笑み返した。
ふたりで、最高の人生を――
優斗の手を取って心に誓う。その左手には、白金の指輪が輝いていた。
イラの通信魔法で魔王の討伐を報告すると、返事はすぐに帰ってきた。核を封印したことで減った瘴気の影響は、すぐさま王都まで伝わったらしい。
「では各自自由に休みましょうか」
「では俺はアヤト殿についているよ」
「うん。兄さんをよろしく」
綾斗は未だ目を覚ましていない。足速に去っていくベルトランを、優斗は穏やかな笑顔で見ていた。
エデュアルドは複雑な思いだった。ベルトランは綾斗を好いている。それはエデュアルドから見ても明らかだった。優斗が気付いていないはずはないだろう。このまま兄の幸せを思って身を引くのだろうか。
「ユート、ちょっと良いか?」
「エディ? どうしたの?」
部屋に戻ろうとする優斗を呼び止め庭に誘った。瘴気が晴れて澄み渡った空を、夕陽が鮮やかな赤に染めていた。
「ユートはこのまま身を引く気なのか?」
「えっ」
優斗が驚いた様に顔を上げる。私に気付かれていないと思っていたのだろう。
「魔王討伐を成功させた勇者は褒美が貰える。聞いているだろう?」
「ああ、そういえば……」
「だからその時に」
出来る事なら、私とーー
そう伝えてしまいそうになるのをどうにか堪えて笑みを作る。
「ユートの気持ちを主張すべきだと思う。それくらいの権利が十分あるほどに、ユートは頑張ってきたのだから。誰から何と言われても、私はユートの味方をしよう」
優斗は大きな目を更に大きく開くと、瞳を輝かせた。
「……ほんと?」
「ああ。約束する」
エデュアルドがしっかりと頷くと、優斗は花が咲く様に笑った。
準備があるからと去っていった優斗を見送って、エデュアルドは庭のベンチに腰を下ろした。薄暗い中庭をぼんやりと眺めながら、失ってしまった右腕の紋様に思いを馳せる。思えば最初から、優斗とエデュアルドを結ぶものはそれくらいしかなかった。今はそれすら消えてしまった。もう体をつなげる建前も無い。
最後くらい素直に気持ちを伝えるべきだったのだろうか。情けなく泣きつけば、絆されてくれたかもしれない。
それでも、エデュアルドは自分の選択に後悔していなかった。自分との運命が交わらなくても、好きな人が幸せになれるのならそちらの方が良い。そう胸に刻んで見上げた空には、滲んだ星が浮かんでいた。
翌朝、目を覚ました綾斗も加えた6人で王都に向かった。オルタンシア領は辺境ながらなかなかに規模が大きく、街の中心にある神殿には王都と繋がる常設の転移陣が設置されている。それを潜り抜ければあっという間に王都の神殿だ。
「勇者様と盾様のご帰還だ!!」
「魔王討伐おめでとうございます!!!」
王都に着いた瞬間歓声に包まれ、エデュアルドはその勢いにたじろいだ。神官と思しき多くの人が拍手をしながら満面の笑みを浮かべている。中でも一際大きな杖を持った人物が、前に進み出てきた。
「フォリオ様! 無事のご帰還、お喜び申し上げます!」
「ふふ、歓迎ありがとう」
副神官長だというその男性はエデュアルド達を見渡し深々と頭を下げた。
「さあ、皆様こちらへ。王宮へお連れします」
そう促された先には豪華な馬車が用意されていた。優斗に続き、エデュアルド、イラ、フォリオと馬車に乗り込む。最後に乗り込んだベルトランが綾斗に手を差し伸べたが、綾斗はその手を取らずに一歩下がった。
「僕には王宮へ行く資格はありません。勇者でも盾でも無いですから。むしろ――」
「全く関係ない訳ではないのだから、良いじゃないか。あなたの事を国王――父上にも紹介したいし」
綾斗の言葉を遮ると、ベルトランは腰に手を回してやや強引に馬車に引き連れた。
街に出た馬車を待っていたのは、民衆の更なる大歓声だった。
「勇者様!! 盾様!! よくぞ戻ってこられました!!」
「勇者様万歳!!」
「魔王討伐おめでとうございます!!!」
口々に声援を送る人々に、優斗はニコニコと手を振って応えている。その横ではベルトランが綾斗に寄り添って手を振っていた。それを優斗の視界に入れない様にさり気なく間に割って入ると、優斗はエデュアルドを見上げてにこりと笑った。
「この度は、魔王討伐、まことにご苦労であった。まさか先代の勇者殿が魔王になっていたとは……」
王宮へ向かうとすぐに謁見の間へと通され、国王陛下から労いの言葉を受けた。普段のエデュアルドなら緊張で固まっていたのだろうが、今は他の――優斗の事が気になっていてそれどころではなかった。
「して、今代の勇者殿よ。最初の約束通り褒美を与えよう。財宝でも、地位でも、なんでも申してみよ」
ユート……
チラリと隣を伺うと、優斗はエデュアルドを見て小さく頷いた。それに頷き返してエデュアルドは真っ直ぐ前を向く。
ユートが幸せなら、私は――
「婚姻の許可を頂きたいんです。俺と――」
右隣にいる優斗の気配が動く。次の瞬間、腕に温もりを感じてエデュアルドは身を硬くした。
「エデュアルドの」
「えっ?」
「え?」
優斗の口から放たれた言葉に理解が追いつかず、エデュアルドはぽかんと優斗を見た。優斗もまた呆気に取られた様子でエデュアルドを見返していた。
「な、なぜ今そんなふざけた事を言うんだ! 君が好きなのはベルだろう!?」
「えっ、俺が好きなのはエディだけど……」
そこまで言って優斗は口を噤んだ。沈黙が謁見の間に落ちる。
「ぷ、……くっくっ……」
それを切り裂く様に、小さな笑い声が響いた。見れば優斗の横に立っていたイラが、肩を震わせて必死に笑いを堪えている。しかしイラの笑い声は次第に大きくなり、やがて腹を抱えて笑い出した。
「あーっはっはっは! もーだめ! 耐えられないよ!」
「くくっ……駄目ですよ、イラ。国王陛下の御前です」
イラが大口を開けて笑う。フォリオも言葉でたしなめてはいるが、肩を震わせながら笑っている。その隣でベルトランも口元を隠しながら満面の笑みを浮かべている。そんな中で綾斗だけは困惑したようにキョロキョロと周りを見ていた。
「あーおかしー! ユートがベルを好きだなんて、何でそんな勘違いしちゃったのさ!」
「何故って――」
あの時盗み見た2人の行為を思い出し、思わず赤面する。それを見て何か勘づいたのか、フォリオがため息をついた。
「大方ろくでもない勘違いなのでしょうが、ユートの気持ちは私から見ても嘘ではないようですよ」
その言葉にイラとベルトランも深く頷く。
「エディ」
向かい合った優斗の真剣な表情に心臓がうるさいほどに高鳴った。熱の籠ったその瞳は、真っ直ぐにエデュアルドだけを捉えている。
「信じてもらえないかもしれないけどさ、俺はエディの事を愛してる。だから、」
そう言いながら優斗はポケットから小さな箱を取り出して開いた。
「俺と結婚してください!」
その中に入っていたのはシンプルな白金の指輪だった。
「わ、私は……」
指輪を見つめながら、エデュアルドの頭の中を様々な感情が駆け巡った。一度は諦めようとした恋心。それがこんな風に叶うなんて。嬉しいような、信じられない様な、胸が張り裂けそうなほどの幸福感が溢れてきて視界が滲む。
その表情を見て、優斗は不安げに瞳を揺らした。
「エディは嫌? 俺と結婚するの」
エデュアルドが勢いよく首を振って否定すると、優斗はほっとした様子で微笑んだ。
「じゃあ俺と、結婚してくれますか?」
「――はい」
嬉しそうに破顔した優斗がエデュアルドの左手をとり、薬指に指輪をはめる。それはまるで最初からそこにあったかのようにぴったりと収まった。
「話はまとまったようだの」
玉座から声が聞こえ、エデュアルドはハッとしてそちらを振り向く。そこには目を細めて満足げに笑う国王の姿があった。
「勇者殿の望み通り、勇者殿――ユート・アカサキと勇者の盾――エデュアルド・オルタンシアの婚姻を認めよう」
国王は厳かに宣言した後、ふたりを順に見て笑みを深めた。
「次期辺境伯が相手だからな。勇者殿には辺境伯の婿に見合うだけの爵位も与えよう。もちろん結婚の祝い金もな」
「ありがとうございます!!」
エデュアルドは最上級の礼をとる。優斗も慌ててそれに倣った。
「ユート、エデュ、おめでとう!」
「最後までハラハラさせられちゃったよ~! 末永くお幸せにね!」
「婚姻の儀は私にお任せください。最高の式にして差し上げますよ」
「みんな、ありがとう」
謁見の間を出てすぐ、エデュアルドと優斗は仲間たちに囲まれ祝福された。皆一様に笑顔で結婚を喜んでくれていた。
「エデュアルドさん」
綾斗がエデュアルドの前に進み出た。こうして向き合うのは初めてかもしれない。改めてまじまじと見た綾斗は少し優斗の面影があった。
「優斗の事、よろしくお願いします」
綾斗は姿勢を正すと、エデュアルドに向かって深々と頭を下げた。
「はい。必ず幸せにいたします」
決意を胸に肩を抱き寄せると、優斗は強く抱き返してきた。
「エディが俺を幸せにする、じゃないよ」
「っ、」
反論しようと開いた口はキスで塞がれてしまう。小さなリップ音を立てて唇が離れると、ふわりと笑って優斗が言葉を続けた。
「俺たちふたりで幸せになるんだろう?」
「――そうだな」
エデュアルドも優しく微笑み返した。
ふたりで、最高の人生を――
優斗の手を取って心に誓う。その左手には、白金の指輪が輝いていた。
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