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その日から、僕の境遇は目まぐるしく変わった。
まずラルフ様は薬の開発者が僕であることを公表した。
僕みたいな色無しが作った薬だなんて聞いたらみんな気持ち悪がって使われないのではないかと思っていたが、ラルフ様が広告塔となり率先して使ってくれている為、それなりに使われているようだ。
先日もラルフ様御用達の薬ということで僕のハイポーションが新聞に取り上げられていた。
その記事では、僕の事を白の薬師様なんて書いてあってこそばゆかった。
それから、フードを被らずに街に出れるようになった。
これもラルフ様のお陰だ。
ラルフ様が僕を引き連れ、色無しは忌むべきものではないと根気よく説明してくれたからだ。
全く遺恨がない訳ではないだろうが、少なくとも表面的には普通に接してくれるようになった。
兄様は偽フェロモンを使った罪で投獄された。
僕の偽フェロモンを作るために、あの時の僕の血を使ったらしい。
僕があの時血を渡さなければ、兄様は偽フェロモンを作れなかった。
ならこれは僕の責任ではないのか。
ラルフ様にそう言ったが、ノアは悪くないと言われ抱きしめられるだけだった。
久々に父に会った。
父は、僕を見るたびに母様を思い出して見ていられなかった。色無しの子供が外に出ると辛い目に遭うと分かっていたから家に閉じ込めておきたかったと涙を流しながら話していた。
僕はただただ困惑した。
色無しの子供を生かしてくれた事だけでもありがたいし、薬の研究も出来たから僕はあの生活に概ね満足していた。
だから謝ることなんて何も無い。
僕は何とも思わなかったが、ラルフ様は大層怒っており、協議の結果ヘッドリー伯爵家は爵位を返上し、事実上取り潰しになる事が決まった。
僕は住む所が無くなってしまったのでラルフ様にお世話になっている。
ラルフ様は屋敷に温室を移築してくれ、薬の研究室まで作ってくれた。
ラルフ様の屋敷で暮らすようになって、僕はだんだんと健康的になっていった。
ラルフ様は僕が18歳だと聞いてとても驚いたようで、とにかく食べろと美味しいものを沢山くれた。
毎日美味しいものを食べ、自由に研究をし、柔らかく暖かいベッドで眠らせてもらえる生活。
僕はどうやってこの恩を返せば良いのだろう。
ラルフ様にそう聞いたら健やかに生きる事が一番の恩返しだと言われてしまった。
それから、冬が来て春になり、夏が来て再び秋になった。
健康的な生活を続けた事で体重は増えたし、背も少し伸びた。
今は年相応の見た目に近付いたと思う。
白の薬師様なんていう小っ恥ずかしい二つ名も、もうすっかり定着した。
今日は感謝祭。去年は行けなかったけど、今年は——
「ノア、準備は出来たか?」
「うん、準備ばっちりだよ、ラルフ」
くるりと回って薄手のコートを翻す。
「よく似合ってる」
蕩けるような笑顔で言われたのが恥ずかしくて、思わずぎゅっと抱きつくと、ラルフも抱きしめ返してくれた。
「僕、お祭りは初めてだから楽しみだな」
「しっかりエスコートさせて貰うさ」
ラルフの手を取って外へ出る。
今日の感謝祭は街中が華やかな雰囲気に包まれていた。
露店を巡りながら道端の大道芸人を観たり、騎士団の剣技を観たり、露店で買ったものを食べたりした。
時折知り合いが声をかけてくれる。
ラブラブだね、なんて言われる度に赤面してしまう。
体は健康になったが体力はまだまだ少ない。
歩き疲れた僕を気遣って、ラルフは木陰のベンチへ腰を下ろした。
「去年の感謝祭はこんな風になるなんて思っても見なかったよ。今でも夢見てるみたいだ……」
不意に頬に柔らかい感触を感じる。
横を向くとラルフの精悍な顔があった。
「ラ、ラルフ……!」
「夢じゃないって分かっただろう?」
ラルフはこの1年間、いつもこうして僕に愛を囁いてくれている。
そのおかげで僕は少しずつ、自分を好きになれる様になってきた。
今ではこの白い髪も……それ程嫌いではない。
だって、ラルフが好きって言ってくれるから。
「ラルフ、僕は今人生で一番幸せだよ」
「甘いな。今が霞むくらいこれからもっと幸せになるんだ。ふたりで」
先のことは誰にも分からない。
だけど、ラルフとなら幸せになれると確信できた。
じっと見つめられるのが気恥ずかしくて、ベンチから立ち上がる。
「もう休憩は良いから、お祭りを回ろう!」
ラルフの手を取り、歩き出す。
僕たちの頭上には、爽やかな秋晴れが広がっていた。
まずラルフ様は薬の開発者が僕であることを公表した。
僕みたいな色無しが作った薬だなんて聞いたらみんな気持ち悪がって使われないのではないかと思っていたが、ラルフ様が広告塔となり率先して使ってくれている為、それなりに使われているようだ。
先日もラルフ様御用達の薬ということで僕のハイポーションが新聞に取り上げられていた。
その記事では、僕の事を白の薬師様なんて書いてあってこそばゆかった。
それから、フードを被らずに街に出れるようになった。
これもラルフ様のお陰だ。
ラルフ様が僕を引き連れ、色無しは忌むべきものではないと根気よく説明してくれたからだ。
全く遺恨がない訳ではないだろうが、少なくとも表面的には普通に接してくれるようになった。
兄様は偽フェロモンを使った罪で投獄された。
僕の偽フェロモンを作るために、あの時の僕の血を使ったらしい。
僕があの時血を渡さなければ、兄様は偽フェロモンを作れなかった。
ならこれは僕の責任ではないのか。
ラルフ様にそう言ったが、ノアは悪くないと言われ抱きしめられるだけだった。
久々に父に会った。
父は、僕を見るたびに母様を思い出して見ていられなかった。色無しの子供が外に出ると辛い目に遭うと分かっていたから家に閉じ込めておきたかったと涙を流しながら話していた。
僕はただただ困惑した。
色無しの子供を生かしてくれた事だけでもありがたいし、薬の研究も出来たから僕はあの生活に概ね満足していた。
だから謝ることなんて何も無い。
僕は何とも思わなかったが、ラルフ様は大層怒っており、協議の結果ヘッドリー伯爵家は爵位を返上し、事実上取り潰しになる事が決まった。
僕は住む所が無くなってしまったのでラルフ様にお世話になっている。
ラルフ様は屋敷に温室を移築してくれ、薬の研究室まで作ってくれた。
ラルフ様の屋敷で暮らすようになって、僕はだんだんと健康的になっていった。
ラルフ様は僕が18歳だと聞いてとても驚いたようで、とにかく食べろと美味しいものを沢山くれた。
毎日美味しいものを食べ、自由に研究をし、柔らかく暖かいベッドで眠らせてもらえる生活。
僕はどうやってこの恩を返せば良いのだろう。
ラルフ様にそう聞いたら健やかに生きる事が一番の恩返しだと言われてしまった。
それから、冬が来て春になり、夏が来て再び秋になった。
健康的な生活を続けた事で体重は増えたし、背も少し伸びた。
今は年相応の見た目に近付いたと思う。
白の薬師様なんていう小っ恥ずかしい二つ名も、もうすっかり定着した。
今日は感謝祭。去年は行けなかったけど、今年は——
「ノア、準備は出来たか?」
「うん、準備ばっちりだよ、ラルフ」
くるりと回って薄手のコートを翻す。
「よく似合ってる」
蕩けるような笑顔で言われたのが恥ずかしくて、思わずぎゅっと抱きつくと、ラルフも抱きしめ返してくれた。
「僕、お祭りは初めてだから楽しみだな」
「しっかりエスコートさせて貰うさ」
ラルフの手を取って外へ出る。
今日の感謝祭は街中が華やかな雰囲気に包まれていた。
露店を巡りながら道端の大道芸人を観たり、騎士団の剣技を観たり、露店で買ったものを食べたりした。
時折知り合いが声をかけてくれる。
ラブラブだね、なんて言われる度に赤面してしまう。
体は健康になったが体力はまだまだ少ない。
歩き疲れた僕を気遣って、ラルフは木陰のベンチへ腰を下ろした。
「去年の感謝祭はこんな風になるなんて思っても見なかったよ。今でも夢見てるみたいだ……」
不意に頬に柔らかい感触を感じる。
横を向くとラルフの精悍な顔があった。
「ラ、ラルフ……!」
「夢じゃないって分かっただろう?」
ラルフはこの1年間、いつもこうして僕に愛を囁いてくれている。
そのおかげで僕は少しずつ、自分を好きになれる様になってきた。
今ではこの白い髪も……それ程嫌いではない。
だって、ラルフが好きって言ってくれるから。
「ラルフ、僕は今人生で一番幸せだよ」
「甘いな。今が霞むくらいこれからもっと幸せになるんだ。ふたりで」
先のことは誰にも分からない。
だけど、ラルフとなら幸せになれると確信できた。
じっと見つめられるのが気恥ずかしくて、ベンチから立ち上がる。
「もう休憩は良いから、お祭りを回ろう!」
ラルフの手を取り、歩き出す。
僕たちの頭上には、爽やかな秋晴れが広がっていた。
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