上 下
46 / 409
パンケーキデート

シェアとかどう?

しおりを挟む
「ざーんねん。大我たいがちゃん、一緒に食べないって~」

 走り去っていくプレマシーを見送りながら、わざとらしく眉根を寄せる奏芽かなめにいを、私も温和はるまさも無言で見つめた。

 まさか奏芽かなめにいが同性相手にあそこまでするとは思わなくて驚いたけれど、でも……案外お兄ちゃんらしいな、とも思ってしまって。

「あ、あのっ。奏芽かなめにい、ありがとう」
 鶴見つるみ先生がいなくなって、やっと温和はるまさが腕の力を緩めてくれたので、私は奏芽かなめにいの方を向いてお礼を言った。

 そんな私に奏芽かなめにいは、怖い顔をすると「本当お前はバカだな! ホイホイ男について行って、なに簡単に泣かされてんだよ」と鼻をギュッとつまんでくる。
 そのつまみ方があまりに痛くて、思わず涙目になった私に満足したように、カナにいが目を細めた。

 私は涙に潤んだ目で奏芽かなめにいをじっと見上げてから、「そういえばさっき、鶴見先生の耳元で何て言ったの?」と問いかけた。
 温和はるまさも気になっていたみたいで「俺もそれ気になってた」と言って。
 奏芽かなめにいはそんな私たちを見て、「ああ、あれね。別に大したことじゃないよ」と前置きをしてから。
「犯すよ?って言っただけ」
 とんでもない告白をしてくれる。

 奏芽かなめにいが言うと冗談に聞こえないのが怖かった。

***

 パンケーキ屋さん、結局あの後すぐに来てしまった。
 お腹、空いていないけれど、甘いものは別腹だし、この二人となら変に気も遣わないで済むからいけそうな気がする。
 というより、お昼を抜いてでも好きなのを食べたいっ!と思えるようなメニュー一覧に、一人目がハートになってしまう。

「どれもめちゃくちゃ甘そうだな」
 奏芽兄かなめにいがパンケーキ食べに来てそれ言っちゃう?というぼやきと共にメニューと睨めっこしているのを正面に、私は温和はるまさと横並びの席に着いている。

「あ、でもこれとか良くね!? パンケーキとキノコチーズオムレツ! あ、ふわとろオムレツも捨て難いな。なぁ、ハルならどれにする?」
 メニューを指差しながらカナにい温和はるまさの意見を聞く。

「あ? 俺はどれでも構わねぇけど……」

 気のない返事をする温和はるまさをちらりと盗み見て、私、恐る恐る提案をしてみる。

「あの、みんなで気になるの頼んで、シェアとかどう?」

 言った途端、奏芽兄かなめにいが「あらっ。音芽おとめちゃんのエッチ!」と言ってきて。
 びっくりして「え!? 何が!?」と聞いたら、「だって、アンタ、お兄ちゃんたちと間接キッスしてやろうって目論もくろんでるってことでしょう?」ってニヤニヤするの。

 もう、いい加減そのおネエ言葉やめてよ。落ち着かないじゃない。

 そう思って睨む私を横目に、「いやーん、もうふしだらな妹でお兄ちゃん、恥ずかしいっ!」とかクネクネするのを、絶対わざとからかっているだけだと分かっていながら、思わずムキになってしまう。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:589pt お気に入り:134

A&R

経済・企業 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:95,716pt お気に入り:3,171

あなたを破滅させます。お父様

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:134

ts転生吸血姫さんは灰になりたい!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:3

処理中です...