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■呼び出し!?/オマケ的SS②-1

知り合いに聞かれてませんように!

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「ったく、どこ行ったんだよ……あいつら!」

 女と言うやつは、なんだって店に来ると年齢関係なく目の色が変わるんだろう。

 たまには家族サービスをと思った俺だったが、休日ということもあって、多くの人でごった返したショッピングモールの様子に、正直辟易していた。
 山とか川とか海とか……人の少ないトコへ連れて行きゃーよかったぜ、と思ったりしたけれど、2人からのリクエストがモールここだったのだから仕方ない。

 33の身には、この雑踏は堪えますね、音芽おとめさん。
 思いはするけれど、嬉しそうな妻と娘の顔を見ていたら、まぁ、こう言うのもたまには悪くねぇか、とも思えてきて。


***


「なぁ、ちょっと俺、トイレ行ってくるからこの店から動かずにいてくれるか?」

 たくさんの雑貨小物に目をキラキラさせている音芽おとめと、今年小学校に上がったばかりの娘の和音かずねにそう告げて傍を離れたのは、ほんの数分前のことだ。

「音芽のやつ、ちゃんと“分かった”って返事したよな!?」

 何のことはない。2人と別れた店に戻ってみたら、あいつらいなくなってやがんの。

 動くなっつっただろ!

 心の中で盛大に毒付きながら、スマホを取り出したら……。
「マジか!」
 スマホ、電池切れてんじゃねぇか。
 そういや、昨夜、音芽を抱いて……そのまま寝落ちして……充電、し忘れてた……。

 ハァーーー、っと思い切りため息をついてから、周りを見回す。

 右をみても左を見ても人、人、人。
 絶対こん中からあいつら見つけんの、無理だろ……。

 どうするよ、と迷った俺は、和音かずねも一緒だし……と思って「迷子センター」に向かうことにした。
 そこで事情を話して……“和音かずねの”呼び出しの放送でもかけてもらおう。
 そうすりゃ音芽おとめも一緒に来んだろ。

 音芽は結構な方向音痴だが、和音かずねが生まれてからはこのショッピングモールの“迷子センター”の位置しっかり頭に叩き込んでいる。
 俺が一緒にいないとき、万が一があったら……と2人で話して覚えさせた。

 そこになら何処にいたって辿り着けるはずだ。

 よし!

 そう思って歩き出した俺の耳に、ピンポンパンポーンという、ドミソドの音階に則ったコールサインが聴こえてくる。
 次いで、「迷子のお知らせです」と言う女性の声が流れてきて。

 ま、こんだけ人が多けりゃな……と自分の現状を棚上げして思った俺だったが――。

「○○市からお越しの霧島きりしま温和はるまささん、お連れ様がお待ちです、至急B館1階迷子センターまでお越しください」

 とかっ!

 なんで俺!!

 おーとーめぇー!!!って思ったけれど……多分これ、和音かずねの入れ知恵だ。
 普通「お客様のお呼び出しを~」のところが「迷子」になってんのも和音子どもの浅知恵っぽいし。

 歳の割にやけにませたこまっしゃくれたところのある娘だ。
 奏芽かなめに月1で預けてる影響かも知んねぇけど、今はそんなことどうでもいい。

 スマホの電池が切れていることを思いっきり呪いながら、俺は懸命に人混みをかき分けて「迷子センター」を目指した。

 この館内放送、知り合いに聞かれてませんように!と祈りながらっ!

 あまり遅くなったら……また呼び出されるかも知れねぇだろ?


   END(2020/08/29)
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