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■ *Play with dolls/オマケ的SS 12

温和のおねだり(3)

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「あ、あのっ。お祝いのお料理っ。作ってみたの」

 一気に運ぶのは無理だったので、とりあえず温和はるまさの家のチャイムを鳴らしてケーキだけ先に渡してから。

「たくさんあるから運ぶの手伝ってくれる?」

 シチューの入ったお鍋とか、焼き立てパンが積み重ねられたバスケットとか。
 温和はるまさの好きなミニトマトを少し多めに入れた野菜サラダのボールとか。

 そういうのを温和あなたの部屋まで運ぶのを手伝って欲しいのだと、部屋の主を見上げて音芽おとめが小首を傾げたら、温和はるまさが瞳を見開いたのが分かった。

「何もしなくていいって言ったのに……。お前、ホント俺のこと好きだよな」

 意地悪くニヤリと笑われて、音芽は図星だけど恥ずかしくて真っ赤になる。

「は、温和はるまさはっ。私のこと……」
 好きじゃないの?と言いたかったのだろう。
 でも、言葉半ばで恥ずかしそうにゴニョゴニョと語尾を濁した音芽に、温和はるまさが小さく笑う。

 そうしてすぐにスッとかがみ込むようにして唇を音芽の耳元に寄せると、
「言われなくてもお前と一緒に誕生日を過ごしたいって言ってんだ。分かんだろ?」
 わざと耳孔に吐息を吹き込むみたいにささやいた。

「ひゃっ」

 途端音芽がビクッと肩を跳ねさせて、その反応に温和はるまさが満足そうにニヤリとする。

 好きだとは素直に言ってやらないくせに、いちいち音芽を振り回すような行動をとるのは温和はるまさの悪い癖だ。
 鈍感な音芽にも温和はるまさの言わんといているところは分かったけれど、だからと言って「好きだ」と言われなくていいというわけではない。
 ちゃんと言葉にして欲しいのに、それはなかなか与えてくれなくて。
 なのにこんな風にいきなり色々すっ飛ばして〝男と女〟を意識させられるようないじり方をされたら、そういうことに不慣れな音芽は堪らなく困ってしまうのだ。

 温和はるまさとそういう関係になってまだ日が浅いし、そもそも奏芽かなめ温和はるまさによって男たちを遠ざけられてきた音芽には、全くもってその辺りの耐性がない。

「い、意地悪っ」

 でも分かるからこそ言って欲しいのだ。〝俺も好きだよ〟と。
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