8 / 169
(2)ふわふわさん、拾いました!
現実の人じゃないみたい
しおりを挟む
「うわー。三次元にこんな綺麗なお顔の人がいたなんて♥」
(なんて悠長に感心している場合ではない! そんなこと分かってる。分かってはいるんだけどぉぉぉ!)
その男性の顔を目にしたら、きっと誰もが思わず見惚れずにはいられない程、道路に倒れて気絶している男の顔は整いまくっていた。
ましてやいま彼を見下ろしているのは、今年大学を卒業したばかりのうら若き乙女。
実は彼女、アニメや漫画や小説と言った二次元男子にハマりすぎて、今までいくら男性から告白されて「じゃあ、(とりあえず?)よろしくお願いします」とお付き合いしてみても、どうもしっくりこないと言う、グダグダな恋愛スキルの持ち主なのだ。
敗因は彼氏のことを好きになりきれない自分のせいなのか、はたまたドリーマー過ぎて二次元キャラがサラリとするような突飛なことを三次元彼氏に要求しまくってしまうせいなのか。
兎にも角にも初めて自主的に三次元――現実世界――で日和美自身が心の底からかっこいいと思える相手に出会えたのに、ときめくなという方が無理だった。
色素薄めのふわっふわの癖っ毛は、前髪がセンターパートに分けられた、少し長めのマッシュ。
横向きに倒れているので後頭部付近も見えているけれど、そこは綺麗に刈り上げられていた。
その辺りもふわふわの髪質と変わらぬ、透け感のある薄い毛色――ともすると金髪に見えちゃうくらい――なところを見ると、彼のこの髪色は生まれつきのモノなのかも知れない。
そう思ってみれば、閉じられたままの目元を縁取る長いまつ毛も、その上で綺麗な曲線を描いている眉も同色。
涎を垂らさんばかりの勢いでうっとりとそんな彼に見惚れていた日和美だったけれど。
(とっ、とりあえずっ!)
テンパった人間というのは何をするか分からない。
彼を気絶させた元凶とも言える重たい掛け布団を道路に丁寧に広げると、美形男性の身体をグッと押して、その上にゴロリと転がした。
敷布団と違って寸足らずな印象が否めないけれど、ここはまぁアスファルトの上に直に寝そべっているよりはマシだと思うことにする。
「よし! これで痛くない!」
などと勝手なことをつぶやいて再度彼を見下ろすと、転がしたことで仰向けになったご尊顔が、先ほどよりさらにしっかりと見えて。
「ホント現実の人じゃないみたい……」
まるでおとぎ話の挿絵から抜け出たみたいな男性に見惚れて、無意識につぶやいてほぅっと吐息混じり。
彼の上に馬乗りにでもなるかのように、顔の両サイドに腕をついて美貌を間近で観察していたら、「んっ」という声とともに目が開いて、色素薄めなブラウンアイとバッチリ目が合ってしまった。
「ひえぇっ!」
日和美が驚いて思わず奇声を発して仰け反ったら、「……キミは……誰?」と耳馴染みのいい爽やかボイスが困り顔をともなって投げ掛けられる。
高過ぎず低過ぎずなその声質は、〝爽やかな青年イケボ〟と称するのがピッタリに思えた。
「わ、私は……山中日和美です」
「日和美、さん……。……僕の名前は――」
誰かと問われたので日和美が思わず名乗ったら、眼前の彼がそれにつられて自分も名乗ろうとして。
戸惑いに揺れる泣きそうな視線を日和美に向けると、苦しそうに眉根を寄せた。
「僕は……。えっと……確か僕は――」
半身を布団の上に起こしながらそこまで言って、黙り込んでしまう。
(なんて悠長に感心している場合ではない! そんなこと分かってる。分かってはいるんだけどぉぉぉ!)
その男性の顔を目にしたら、きっと誰もが思わず見惚れずにはいられない程、道路に倒れて気絶している男の顔は整いまくっていた。
ましてやいま彼を見下ろしているのは、今年大学を卒業したばかりのうら若き乙女。
実は彼女、アニメや漫画や小説と言った二次元男子にハマりすぎて、今までいくら男性から告白されて「じゃあ、(とりあえず?)よろしくお願いします」とお付き合いしてみても、どうもしっくりこないと言う、グダグダな恋愛スキルの持ち主なのだ。
敗因は彼氏のことを好きになりきれない自分のせいなのか、はたまたドリーマー過ぎて二次元キャラがサラリとするような突飛なことを三次元彼氏に要求しまくってしまうせいなのか。
兎にも角にも初めて自主的に三次元――現実世界――で日和美自身が心の底からかっこいいと思える相手に出会えたのに、ときめくなという方が無理だった。
色素薄めのふわっふわの癖っ毛は、前髪がセンターパートに分けられた、少し長めのマッシュ。
横向きに倒れているので後頭部付近も見えているけれど、そこは綺麗に刈り上げられていた。
その辺りもふわふわの髪質と変わらぬ、透け感のある薄い毛色――ともすると金髪に見えちゃうくらい――なところを見ると、彼のこの髪色は生まれつきのモノなのかも知れない。
そう思ってみれば、閉じられたままの目元を縁取る長いまつ毛も、その上で綺麗な曲線を描いている眉も同色。
涎を垂らさんばかりの勢いでうっとりとそんな彼に見惚れていた日和美だったけれど。
(とっ、とりあえずっ!)
テンパった人間というのは何をするか分からない。
彼を気絶させた元凶とも言える重たい掛け布団を道路に丁寧に広げると、美形男性の身体をグッと押して、その上にゴロリと転がした。
敷布団と違って寸足らずな印象が否めないけれど、ここはまぁアスファルトの上に直に寝そべっているよりはマシだと思うことにする。
「よし! これで痛くない!」
などと勝手なことをつぶやいて再度彼を見下ろすと、転がしたことで仰向けになったご尊顔が、先ほどよりさらにしっかりと見えて。
「ホント現実の人じゃないみたい……」
まるでおとぎ話の挿絵から抜け出たみたいな男性に見惚れて、無意識につぶやいてほぅっと吐息混じり。
彼の上に馬乗りにでもなるかのように、顔の両サイドに腕をついて美貌を間近で観察していたら、「んっ」という声とともに目が開いて、色素薄めなブラウンアイとバッチリ目が合ってしまった。
「ひえぇっ!」
日和美が驚いて思わず奇声を発して仰け反ったら、「……キミは……誰?」と耳馴染みのいい爽やかボイスが困り顔をともなって投げ掛けられる。
高過ぎず低過ぎずなその声質は、〝爽やかな青年イケボ〟と称するのがピッタリに思えた。
「わ、私は……山中日和美です」
「日和美、さん……。……僕の名前は――」
誰かと問われたので日和美が思わず名乗ったら、眼前の彼がそれにつられて自分も名乗ろうとして。
戸惑いに揺れる泣きそうな視線を日和美に向けると、苦しそうに眉根を寄せた。
「僕は……。えっと……確か僕は――」
半身を布団の上に起こしながらそこまで言って、黙り込んでしまう。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
夫のつとめ
藤谷 郁
恋愛
北城希美は将来、父親の会社を継ぐ予定。スタイル抜群、超美人の女王様風と思いきや、かなりの大食い。好きな男のタイプは筋肉盛りのガチマッチョ。がっつり肉食系の彼女だが、理想とする『夫』は、年下で、地味で、ごくごく普通の男性。
29歳の春、その条件を満たす年下男にプロポーズすることにした。営業二課の幻影と呼ばれる、南村壮二26歳。
「あなた、私と結婚しなさい!」
しかし彼の返事は……
口説くつもりが振り回されて? 希美の結婚計画は、思わぬ方向へと進むのだった。
※エブリスタさまにも投稿
小野寺社長のお気に入り
茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。
悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。
☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる