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(4)下心はありません! 純粋な人助けです!(多分)
下心はありません!
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「すみません。早く思い出せたらいいんですけど……」
日和美の言葉に、不破が申し訳なさそうな様子で小さく吐息を落とすから、前方を見据えたまま日和美は慌てて彼の愁いを否定した。
「そっ、そこはもう、全然お気になさらず! むしろこのまま記憶のない不破さんとずっとずぅーっと一緒にいられたらな!って思っちゃってるくらいです!」
思わず力説してしまってから、それではまるで彼に記憶が戻らないことを願っているみたいではないかと気が付いて。
「あっ。ごめんなさい。私、こんな酷い事。そうじゃなくてっ、ただ……えっと」
言えば言うほど墓穴を掘りそうで、ハンドルを握る手に変な汗がにじんできてしまう。
焦る余り泣きそうになった日和美の肩に、不破の手がそっと載せられて。
「そんな泣きそうな顔しないで? 大丈夫です。貴女のおっしゃりたいことはちゃんと理解しているつもりです。それよりもむしろ……こんな得体の知れない男のことをそんな風に気遣ってくださって、本当に有難うございます。――記憶が戻っても、僕は日和美さんから受けたご恩を絶対忘れないでいたいです」
肩に感じる不破の手が、思いのほか男性らしく大きなことに、日和美は胸の高鳴りを抑えられない。
そのことがとっても不純に思えてしまって。
(不破さん。私……)
――下心はありません! 純粋な人助けです!(多分)
心の中、自分に言い聞かせるみたいにそう宣言してから、〝多分〟と付けてしまう時点で、本当は下心まみれなんだよねという本心に気が付いた日和美は、それにきっちりと蓋をして、そっと心の奥底深くに仕舞い込んだ。
***
和洋中、色々食べられる庶民の味方。ファミリーレストラン『ガストン』でチーズハンバーグセットを頼もうと決めた日和美は、不破が何を選ぶのか興味津々。
目の前に座ってメニューを眺める不破をちらちら・ソワソワと見つめた。
不破は洋食セットの箇所を素通りすると、定食がずらりと並んだページをじっと眺めていたのだけれど。
やがて、「僕は焼き魚定食にします」と、日和美的に見て何だかすっごくイメージに合わないものを指さした。
「えっ? 本当にそれでいいいんですか?」
余りにも意外すぎて思わず聞いてしまった日和美に、「はい。これがいいんです」とにっこり。
(そうかそうか。王子様は日本の食文化に触れてみたいのですねっ? かしこまりなのです!)
などと勝手なことを思わないと、不破の王子様的イメージとのギャップに脳みそが付いていけそうにない日和美だ。
何故なら不破が指さした焼き魚定食は鮭の塩焼き、豆腐とワカメの味噌汁、キュウリとナスの浅漬け、切り干し大根の煮つけ、ご飯がセットになった定食で。
いかにもザ・日本の朝食!と言った雰囲気だったから。
(いや、ランチなんですけどね)
テンパる余りどうでもいいツッコミを脳内で入れながら、日和美は呼び出しボタンを押したのだった。
日和美の言葉に、不破が申し訳なさそうな様子で小さく吐息を落とすから、前方を見据えたまま日和美は慌てて彼の愁いを否定した。
「そっ、そこはもう、全然お気になさらず! むしろこのまま記憶のない不破さんとずっとずぅーっと一緒にいられたらな!って思っちゃってるくらいです!」
思わず力説してしまってから、それではまるで彼に記憶が戻らないことを願っているみたいではないかと気が付いて。
「あっ。ごめんなさい。私、こんな酷い事。そうじゃなくてっ、ただ……えっと」
言えば言うほど墓穴を掘りそうで、ハンドルを握る手に変な汗がにじんできてしまう。
焦る余り泣きそうになった日和美の肩に、不破の手がそっと載せられて。
「そんな泣きそうな顔しないで? 大丈夫です。貴女のおっしゃりたいことはちゃんと理解しているつもりです。それよりもむしろ……こんな得体の知れない男のことをそんな風に気遣ってくださって、本当に有難うございます。――記憶が戻っても、僕は日和美さんから受けたご恩を絶対忘れないでいたいです」
肩に感じる不破の手が、思いのほか男性らしく大きなことに、日和美は胸の高鳴りを抑えられない。
そのことがとっても不純に思えてしまって。
(不破さん。私……)
――下心はありません! 純粋な人助けです!(多分)
心の中、自分に言い聞かせるみたいにそう宣言してから、〝多分〟と付けてしまう時点で、本当は下心まみれなんだよねという本心に気が付いた日和美は、それにきっちりと蓋をして、そっと心の奥底深くに仕舞い込んだ。
***
和洋中、色々食べられる庶民の味方。ファミリーレストラン『ガストン』でチーズハンバーグセットを頼もうと決めた日和美は、不破が何を選ぶのか興味津々。
目の前に座ってメニューを眺める不破をちらちら・ソワソワと見つめた。
不破は洋食セットの箇所を素通りすると、定食がずらりと並んだページをじっと眺めていたのだけれど。
やがて、「僕は焼き魚定食にします」と、日和美的に見て何だかすっごくイメージに合わないものを指さした。
「えっ? 本当にそれでいいいんですか?」
余りにも意外すぎて思わず聞いてしまった日和美に、「はい。これがいいんです」とにっこり。
(そうかそうか。王子様は日本の食文化に触れてみたいのですねっ? かしこまりなのです!)
などと勝手なことを思わないと、不破の王子様的イメージとのギャップに脳みそが付いていけそうにない日和美だ。
何故なら不破が指さした焼き魚定食は鮭の塩焼き、豆腐とワカメの味噌汁、キュウリとナスの浅漬け、切り干し大根の煮つけ、ご飯がセットになった定食で。
いかにもザ・日本の朝食!と言った雰囲気だったから。
(いや、ランチなんですけどね)
テンパる余りどうでもいいツッコミを脳内で入れながら、日和美は呼び出しボタンを押したのだった。
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