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(5)事実は小説よりも波乱万丈?
僕は日和美さんの事、絶対に忘れませんから
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ファミリーレストラン『ガストン』でランチを楽しんだ後、日和美は「大丈夫です」と嫌がる不破を半ば無理矢理脳神経外科へ引っ張って行った。
病院では頭に衝撃を受けたと言う事で画像検査(MRIとCT)をし、医師の問診を受けたのだけれど。
比較的大きな病院だったからだろう。
画像検査の結果は日を置くことなく一時間足らずで出て、それを見る限りでは脳の方への異常はなさそうとの事でホッとする。
不破は疾患発症前に起こった出来事を思い出せないので、逆行性健忘だろうと言われ、状況から見て外傷性記憶喪失でしょうと診断された。
外傷性記憶喪失は、普通自動車事故などで頭に強烈な打撃を受けた場合に起こるらしく、患者は意識の喪失や昏睡を経験することがあるらしい。
確かに不破も布団が降ってきてしばらくの間、意識を失っていたことを思い出した日和美は、医師にそれも告げた。
こういう場合の記憶喪失は通常一時的らしいのだが、実際にどれくらいの期間持続するかは傷害がどの程度深刻かによるそうだ。
不破は脳に異常があるわけではないし、比較的早く記憶が戻るかも?と思った日和美だ。
それはきっと不破にとっては幸せな事なのだが、記憶が戻ったら記憶障害の間に起きていた事を忘れてしまう場合もあるらしく。
それを聞いて悲しくなった日和美に、不破は「僕は日和美さんの事、絶対に忘れませんから」と言ってくれた。
気休めでもそんな風に日和美の事を気遣ってくれる不破の優しさに、日和美はじーんときてしまう。
「そうだ。日和美さんが不安ならこのあと一緒に写真を撮りませんか? その写真の裏に僕が知る限りの日和美さんの事、出会ってからの事をメモしておきます。それを僕が肌身離さず持っておいたらもしもの時にもきっと、安心ですよね?」
不破にそう言われて、うるうると涙腺の緩んだ日和美は院内であるにも関わらずほろほろと泣いてしまった。
不破はそんな日和美が周りから死角になるようにそっと抱き寄せて頭を優しく撫でてくれる。
多分、記憶を失う前の不破もこんな風に女の子に優しく出来る素敵な男性だったんだろうなと思って。
こんな不破に彼女がいないわけがない気がした日和美は、自分が思い浮かべた勝手な妄想でさらに悲しくなってしまう。
日和美の大好きなティーンズラブの展開ならば、そんな障壁の全てを乗り越えて、二人はハッピーエンドになるのだけれど……現実はそう甘くない事も知っているつもりだ。
「不破譜和さんの馬鹿ぁ……」
勝手に一人で盛り上がってこんな暴言を吐くなんて最低だと思いながら、日和美はそうつぶやかずにはいられなかった。
***
「山中さーん」
受付に名前を呼ばれて日和美はグシグシと涙をぬぐって立ち上がった。
現在絶賛記憶喪失中の不破だ。
問診票を書く際、患者氏名の欄に仮名として「不破譜和」と書こうとして。
さすがにこれはない!と躊躇った日和美は、結局「山中譜和(仮名)←記憶喪失のため」と書いてしまったのだが。
書きながら(ヤダッ。婿養子!)なんて思ったことは内緒だ。
「お会計は四万二千五百円です」
さらりと言われて、内心ヒエッ!と思ったけれど、不破に要らぬ気遣いをさせるわけにはいかない。
平常心を装って「カードでお願いします」とフルフル震える手を必死に押さえながら極力スマートに(?)財布からクレジットカードを取り出す。
病院では頭に衝撃を受けたと言う事で画像検査(MRIとCT)をし、医師の問診を受けたのだけれど。
比較的大きな病院だったからだろう。
画像検査の結果は日を置くことなく一時間足らずで出て、それを見る限りでは脳の方への異常はなさそうとの事でホッとする。
不破は疾患発症前に起こった出来事を思い出せないので、逆行性健忘だろうと言われ、状況から見て外傷性記憶喪失でしょうと診断された。
外傷性記憶喪失は、普通自動車事故などで頭に強烈な打撃を受けた場合に起こるらしく、患者は意識の喪失や昏睡を経験することがあるらしい。
確かに不破も布団が降ってきてしばらくの間、意識を失っていたことを思い出した日和美は、医師にそれも告げた。
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不破は脳に異常があるわけではないし、比較的早く記憶が戻るかも?と思った日和美だ。
それはきっと不破にとっては幸せな事なのだが、記憶が戻ったら記憶障害の間に起きていた事を忘れてしまう場合もあるらしく。
それを聞いて悲しくなった日和美に、不破は「僕は日和美さんの事、絶対に忘れませんから」と言ってくれた。
気休めでもそんな風に日和美の事を気遣ってくれる不破の優しさに、日和美はじーんときてしまう。
「そうだ。日和美さんが不安ならこのあと一緒に写真を撮りませんか? その写真の裏に僕が知る限りの日和美さんの事、出会ってからの事をメモしておきます。それを僕が肌身離さず持っておいたらもしもの時にもきっと、安心ですよね?」
不破にそう言われて、うるうると涙腺の緩んだ日和美は院内であるにも関わらずほろほろと泣いてしまった。
不破はそんな日和美が周りから死角になるようにそっと抱き寄せて頭を優しく撫でてくれる。
多分、記憶を失う前の不破もこんな風に女の子に優しく出来る素敵な男性だったんだろうなと思って。
こんな不破に彼女がいないわけがない気がした日和美は、自分が思い浮かべた勝手な妄想でさらに悲しくなってしまう。
日和美の大好きなティーンズラブの展開ならば、そんな障壁の全てを乗り越えて、二人はハッピーエンドになるのだけれど……現実はそう甘くない事も知っているつもりだ。
「不破譜和さんの馬鹿ぁ……」
勝手に一人で盛り上がってこんな暴言を吐くなんて最低だと思いながら、日和美はそうつぶやかずにはいられなかった。
***
「山中さーん」
受付に名前を呼ばれて日和美はグシグシと涙をぬぐって立ち上がった。
現在絶賛記憶喪失中の不破だ。
問診票を書く際、患者氏名の欄に仮名として「不破譜和」と書こうとして。
さすがにこれはない!と躊躇った日和美は、結局「山中譜和(仮名)←記憶喪失のため」と書いてしまったのだが。
書きながら(ヤダッ。婿養子!)なんて思ったことは内緒だ。
「お会計は四万二千五百円です」
さらりと言われて、内心ヒエッ!と思ったけれど、不破に要らぬ気遣いをさせるわけにはいかない。
平常心を装って「カードでお願いします」とフルフル震える手を必死に押さえながら極力スマートに(?)財布からクレジットカードを取り出す。
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