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第一印象は最悪で
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そんな風に斜に構える私を、いっかな気にした風もなく、「じゃあこれね」とてんこ盛りに商品が入れられたカゴを指差してから、
「ねぇ、キミ、新人さん? 今時おさげって珍しいけど……すごく似合ってると思うぜ。――あ。名前は……向井さん?」
とか。
胸に付けた名札を見られたらしい。
見られたのは名札のはずなのに、関係ない髪型のことをさらりと付け加えられたからか、胸自体を見られてしまった錯覚がして……ソワソワしてしまう。
コンビニの制服は胸元なんて開いてないんだから大丈夫なはずなのに、さすがに自意識過剰な反応だよ。
それとも眼前の男の声が思いのほか自分好みだったから、おかしくなっちゃった?
正直な話、初対面のはずなのに臆することなくガンガン話しかけられて、私は戸惑いまくりだ。
いっそ、「もう黙ってていただけますか!?」って睨みつけることができたらどんなにか楽なのに。
「あ、は、はい」
でも、彼は一応お客さんなので、これしきのことで邪険にもできないし。
「よろしくね、向井ちゃん。俺、この近所のビルで小児科医やってる鳥飼奏芽。ここには結構頻繁に買い物に来てるから、また出会うと思うよ? 覚えといて?」
なぜそこで自己紹介!?
チャラ男の思考回路はやはりさっぱり分からないです。
さっき知ったばかりの私の名前を馴れ馴れしくも「向井ちゃん」とか言ってきてるのもゾワッてするほど私とは相入れない。
「あ、は、はい……」
なんて応じるのが――というよりかわすのが――正解なのか分からなくて、私は気のない返事を返してしまう。
カゴの中の商品をひとつずつレジに通しながら、頭の中はどうしたものかという悩ましさにフル回転だ。
口ぶりからすると、彼はどうもこのコンビニの常連さんみたいだ。
だとしたら揉めるのは得策ではないし、今後も会う可能性が高いことを思うと、出来れば穏便にお帰りいただきたい。
一番の良策は……やっぱり少しでも早く会計を済ませてもらって帰ってもらうこと、だよね?
そう結論に達したのに!
なんでこの人のカゴの中、こんなにてんこ盛りなのー!?
***
無心にレジをこなしてこなしてこなして……小さな小箱をレジに通したところで「あ、それ」と声がかかった。
今度は何ですか!?
そう睨みつけたいのをグッとこらえて
「はい?」
と問いかけると、彼が私の手にした箱を指差してくる。
手元をよく見ずに作業をしていた私は、自分が手にした商品が何なのか把握していなかった。
きょとんとした顔で、馴れ馴れしくて迷惑な彼を見上げたら「目隠しとかいらないから」って何のこと?
「え?」
って声とともに手にした箱をまじまじと見て、私は思わずそれを投げ捨てたくなった。
こ、これっ。す、す、す……スキ……ンっ!?
「おっ、その反応。向井ちゃんはそれが何か知ってるんだ」
ニヤリとされて、私は真っ赤な顔で彼を睨みつける。
そ、そのぐらい私だって知ってます!
何に使うのかだって……その……い、一応っ。
ご縁がなくて実際に使ってるのとか見たことはないですけど!!
そこで谷本くんのレジで会計を済ませた女性がやってきて「鳥飼センセ、まだぁ?」と彼に腕を絡めて。
私は手にした箱と二人を見て、妙な生々しさを感じて即刻この場から立ち去りたい衝動に駆られた。
ダメダメ。
こんなことでいちいち動揺していたら仕事にならないわ。無にならないとっ。
「ねぇ、キミ、新人さん? 今時おさげって珍しいけど……すごく似合ってると思うぜ。――あ。名前は……向井さん?」
とか。
胸に付けた名札を見られたらしい。
見られたのは名札のはずなのに、関係ない髪型のことをさらりと付け加えられたからか、胸自体を見られてしまった錯覚がして……ソワソワしてしまう。
コンビニの制服は胸元なんて開いてないんだから大丈夫なはずなのに、さすがに自意識過剰な反応だよ。
それとも眼前の男の声が思いのほか自分好みだったから、おかしくなっちゃった?
正直な話、初対面のはずなのに臆することなくガンガン話しかけられて、私は戸惑いまくりだ。
いっそ、「もう黙ってていただけますか!?」って睨みつけることができたらどんなにか楽なのに。
「あ、は、はい」
でも、彼は一応お客さんなので、これしきのことで邪険にもできないし。
「よろしくね、向井ちゃん。俺、この近所のビルで小児科医やってる鳥飼奏芽。ここには結構頻繁に買い物に来てるから、また出会うと思うよ? 覚えといて?」
なぜそこで自己紹介!?
チャラ男の思考回路はやはりさっぱり分からないです。
さっき知ったばかりの私の名前を馴れ馴れしくも「向井ちゃん」とか言ってきてるのもゾワッてするほど私とは相入れない。
「あ、は、はい……」
なんて応じるのが――というよりかわすのが――正解なのか分からなくて、私は気のない返事を返してしまう。
カゴの中の商品をひとつずつレジに通しながら、頭の中はどうしたものかという悩ましさにフル回転だ。
口ぶりからすると、彼はどうもこのコンビニの常連さんみたいだ。
だとしたら揉めるのは得策ではないし、今後も会う可能性が高いことを思うと、出来れば穏便にお帰りいただきたい。
一番の良策は……やっぱり少しでも早く会計を済ませてもらって帰ってもらうこと、だよね?
そう結論に達したのに!
なんでこの人のカゴの中、こんなにてんこ盛りなのー!?
***
無心にレジをこなしてこなしてこなして……小さな小箱をレジに通したところで「あ、それ」と声がかかった。
今度は何ですか!?
そう睨みつけたいのをグッとこらえて
「はい?」
と問いかけると、彼が私の手にした箱を指差してくる。
手元をよく見ずに作業をしていた私は、自分が手にした商品が何なのか把握していなかった。
きょとんとした顔で、馴れ馴れしくて迷惑な彼を見上げたら「目隠しとかいらないから」って何のこと?
「え?」
って声とともに手にした箱をまじまじと見て、私は思わずそれを投げ捨てたくなった。
こ、これっ。す、す、す……スキ……ンっ!?
「おっ、その反応。向井ちゃんはそれが何か知ってるんだ」
ニヤリとされて、私は真っ赤な顔で彼を睨みつける。
そ、そのぐらい私だって知ってます!
何に使うのかだって……その……い、一応っ。
ご縁がなくて実際に使ってるのとか見たことはないですけど!!
そこで谷本くんのレジで会計を済ませた女性がやってきて「鳥飼センセ、まだぁ?」と彼に腕を絡めて。
私は手にした箱と二人を見て、妙な生々しさを感じて即刻この場から立ち去りたい衝動に駆られた。
ダメダメ。
こんなことでいちいち動揺していたら仕事にならないわ。無にならないとっ。
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