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私、どうしようもなく奏芽さんが

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 生まれて初めて「でも」とか「だけど」とか逆説なしに、純粋に私の「そこが気に入っている」と褒めてくれる人に出会えて、しかもそれを言ってくれたのが奏芽かなめさんとか。
 泣きたいくらいに嬉しい!って思って、同時に私、奏芽さんも本人の自己評価ほど酷い人ではないのに!って強く強く思ったの。

 確かに奏芽さんには横紙破りでゴーイングマイウェイなところがあると思う。
 見た目の影響もあって、私も最初はチャランポランでわがまま放題に人を振り回すだけのどうしようもない人だと思って、奏芽さんのことが大嫌いだった。
 でも、そんな彼と接すれば接するほど、強引にしか感じられなかった彼が、実はここだけはってところは押さえてくれる人なんだっていうのが分かってきて。

 だからこそ私、気が付いたらこんなにも奏芽さんに心奪われていたんだと思うの。

 それを、いま自分がそうされて嬉しかったみたいに彼にも伝えてあげたいって思った。
 でも、それは“彼のことを好きだという告白とセット”な気がして、今の私では素直に奏芽さんに言ってあげることが出来ないの。

 それが物凄くもどかしくて――。

***

「っちゅーことでさ、凜子りんこが家に寄りたいってんなら、俺、雨宮あまみやにはちゃんと一報入れるぜ?」

 スマホに視線を投げながらそう言ってくれる奏芽かなめさんに、私は「貴方のそう言うところが大好きなんです」ともう1度、つぶやく。

 だって、まだ声に出しては言えない。
 のぶちゃんにちゃんと話をしてからでないと――。

 私、今感じているような素直な気持ち、一刻も早く、奏芽さんにちゃんと胸を張って言えるようになりたい。

 そのためにも、のぶちゃんに自分から連絡をしないと。
 そう、思ったの。

***

「なぁ凜子、聞いてる?」

 奏芽さんに目の前でひらひらと手を振られて、ハッとする。

 考え事に夢中になってしまって、彼の問いかけへの答えをちゃんと出来ていなかった。

「あ、あの……えっと……」
 ソワソワと視線を泳がせたら、「別の事考えてただろ」って正鵠せいこくを射られてしまった。

 また、「俺と一緒にいるのに他の男のこと?」って叱られるかと身構えた私に、「急かす様なこと言っちまったけど……焦って結論出す必要はないんだからな?」って予想に反した言葉が続く。

「え?」
 思わず頓狂な声を出して奏芽さんを見つめたら、「生真面目な凜子のことだ。きっと俺への返事絡みであれこれ考えてんだろ?」って私をじっと見つめてくるの。

 本当、この人には敵わない――。
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