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バイバイ、私の初恋の人

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「えっと……凜子りんこ。向井、凜子です」

 今まで話せなかったのが嘘みたいに、同級生相手にスッと名前を言えたのに、自分自身驚いた。

「ん、凜子ちゃんね! 了解! あ、私の名前は――」

四季しきさん、でしょ?」

 さっきも言ったけど、何度も自己紹介されてるしね、ちゃんと覚えてるよ?

 そう思いながら先んじて彼女の名を呼んだら、「固い! 固すぎですよ、凜子さん! 四季、でいいから。四季さん、とかむず痒くなるからやめて~」って肩をバシバシ叩かれてしまった。

 距離を一気に削って、一息に懐に入ってくるところ。本当、とっても奏芽かなめさんっぽい。

「……分かった。じゃあ、えっと……四季、ちゃん?」

 恐る恐る言い直したら「う~ん。まだ若干固いけど、最初だし妥協しとく!」ってにっこりされた。

「ね、凜子ちゃん、ズバッと聞いていい?」

 ホッとしたのも束の間、いきなりじっと目を見つめられてドキッとする。

 ハーフパンツに、Tシャツ。前下がりのショートマッシュは綺麗なココアベージュ。
 一見ボーイッシュに見える雰囲気だけど、メリハリボディが彼女は女性なのだと主張する。

 とにかくとっても色っぽい女の子。

 そんな子にヒョイっと顔を覗き込まれて、ドキドキしないわけがない。

 私より5センチぐらい背の高い四季しきちゃんが、わざわざ腰を折るようにして視点を下げてきたことに、私はソワソワしてしまう。

初心うぶか!」

 クスクス笑われて、私は余計に照れてしまった。

「よく大学ここまで迎えに来てる凜子りんこちゃんの彼氏! 外車に乗ってるあの人! 彼、私達よりかなり年上でしょ?」

 まだ頬が熱くて心臓がバクバクしてるのに、そんなのお構いなしで続けられて、私は思わず息をのんだ。

「あ、あの、えっと……」

 正確にはまだ彼氏ではないし、なのに迎えに来てもらったりしてるのを知られてて……違うと言うのも変に思えて。

 何て応えたらいいか迷っているうちに
「私もね、実は彼氏と10歳離れてるの! それもあってね、凜子ちゃんと仲良くなりたいなって思ったの」
 って! 情報量が多すぎて、頭がショートしそうです。


「あ、えっと……あの……」

 何て返したらいいか分からないけれど、だんまりは良くない気がして、結果1人空回り。

 そんな私に四季しきちゃんがクスクス笑う。

「もぉ、凜子りんこちゃん、最高! 反応が可愛くてたまんない!」
 四季ちゃんがそこまで言ったところで、彼女の鞄のなかのスマホが着信を告げた。

「あ、ごめん。噂をすれば、だ! 彼氏が迎えに来たから今日はとりあえず帰るね。――また話そうね!」

 一気にそうまくし立てて、まるで台風みたいに走り去っていく四季ちゃんを見送りながら、私はホォッと溜め息をつく。
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