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*ようこそ我が家へ

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 私は耳を引き千切られてしまうのではないかという思いに、身体が動かせなくなった。

 それをいいことに、男が私の耳に吐息を吹き込むように声のトーンを低めてささやいてくる。

「もしそれが真実ほんとうならチャンスだって思ったんだ」

 言われた言葉に私は絶望しか感じなくて。

「あのっ、耳、いたぃ……ので……、離、して……くださ……。お願……」

 って小さく抗議の声を上げるので精一杯。

「あー、ごめん、痛かった?」

 絶対痛くしているという自覚はあると思うのに、さも気付いていなかったのだという風に笑うこの人が、心の底から怖いって思った。

「けど……もし本当にセックス自体が初めてだとしたら……僕との行為、こんなの比にならないぐらい、もっともっと痛いと思うよ?」

 ――僕は優しくほぐしてあげるつもりなんて微塵もないし。

「その方が僕との初めての記憶を刻み込めるでしょう?」

 さらりと恐ろしいことを言う男に、ギュッと縮こまるようにして身体を守る。

 こんなことなら奏芽かなめさんに二十歳はたちを待たずに私を奏芽さんのものにして欲しいと……強く迫っておけばよかった。

 そんなことまで思ってしまうほど、この男に“初めて”を奪われてしまうと思うと嫌で嫌でたまらなくて。

 お門違いだと分かっていても、奏芽かなめさんが頑なに私の成人を待ってくださったことでさえも恨めしく思えてしまう。

「それにしても。なんでりんの彼氏気取りのあの金髪男はキミを抱かなかったんだろうね? こんな風に横からさらわれちゃうとか思わなかったんだとしたら、相当なお人好しだよ。そもそも凜の魅力に惑わされないで二十歳はたちの誕生日まで待つとか、僕からしたらあり得ないんだけど! だってさ、凜の誕生日、4月半ばでしょ? マジ先すぎるだろ。ね、ぶっちゃけあの男、何ヶ月待ったの?」

 そこまで一気にまくしたてられて、私は奏芽さんとのことを全否定されたみたいな気持ちになる。
 奏芽さんは……私を大事にしてくれて、それで……。
 思うけれど本当にそうなの?とか揺れてしまって。四季しきちゃんの彼は四季ちゃんとのそう言う行為、別に成人にこだわったりしなかったって聞いた。
 それは四季ちゃんは彼氏にとって女性としてすごく魅力的だけど、私は奏芽さんにとってそうでもなかったと言うことかもしれない。

 今までにもそんなことを思わなかったわけじゃないから。

 だからグサグサと傷をえぐられるみたいな気持ちにさせられるんだ。

 奏芽さんを信じなきゃって思うのに、何でこんな男なんかにそこを突かれてかき乱されなきゃいけないの?
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