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5.家事は私が!
可愛いぞ
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「今日は色々あって疲れただろ。風呂、ちゃんと湯張りもしてあるし、ゆっくり温もって身体ほぐしてこい。あー、それから脱衣所、内側から鍵も掛けられるから……不安なら掛けとけ」
そのままの流れでひらひらと手を振りながら京介が立ち去るのを呆然と見送った芽生は、着替えとバスタオルに顔を埋めるようにして、いま彼が出て行ったばかりの扉へもたれ掛かって空気の抜けた風船みたいにズルズルと座り込んだ。
(きゃー、私のバカ! 京ちゃんの下着任されるとかっ。絶対照れ臭いやつー!)
言葉とは裏腹。ちょっぴり新婚さんみたいで嬉しいな? と思ったのも事実。
***
お風呂から上がって、買ってもらったばかりのモコモコ部屋着に着替えた芽生は、LDKに戻ってきて恐る恐る扉を開けた。
途端、出汁の芳しい香りが鼻先をくすぐって、お腹がグゥッと鳴ってしまう。
「京ちゃん」
それを誤魔化すみたいにお腹を押さえながらキッチンに立つ男の名を呼んだ。
「おう、子ヤギ、風呂上がったか」
「うん」
不思議だ。
いま京介自身が問いかけてきたように、芽生が風呂から上がったばかりだというのに、何故か京介もまるで風呂上がりででもあるかのように髪がしっとりと濡れそぼっている。それを裏付けるように、肩へ引っ掛けられた真っ白なタオルが、湯上がり感をいや増させていた。
外で会うときにはいつもきっちりセットされた髪の毛も、無造作にタオルでワシワシ拭いた後みたいにラフな感じで下りている。それが、全体的になんとも言えない男の色香を漂わせていた。
加えてさっきまではきちっとしたスリーピースのスーツを着こなしていたはずなのに、今は白のTシャツの上に上下揃いのジャージ姿。そんなラフな服装の京介を見たのも初めてだった芽生は、妙に緊張してしまった。
「芽生、千崎に持って来させたパジャマ、似合ってるじゃねぇか。可愛いぞ」
ちらりと芽生に視線を投げ掛けてフッと笑うと、京介が芽生の部屋着姿を褒めてくれる。
ほわりと柔らかな印象を受ける薄桃色のモコモコパジャマは、左胸のところに愛らしいウサギのアップリケが付いていた。
ただ単に服装の力かも知れないが、大好きな男に〝可愛い〟だなんて言われて、心を躍らせないなんて無理。
「あ、りがと……。えっと……きょ、京ちゃんも……その……かっこいい、よ?」
「バーカ。なに赤くなってんだ」
(いや、だからそういうことはいちいち口にしないでっ!)
芽生はボフッとフードを被って顔を隠すと、「だって京ちゃん。何だかいつもと雰囲気違うから落ち着かないんだもん」
本当は〝照れ臭い〟と言いたいのを〝落ち着かない〟と言い換えて、芽生はうつむいたままボソリとつぶやいた。
***
そのままの流れでひらひらと手を振りながら京介が立ち去るのを呆然と見送った芽生は、着替えとバスタオルに顔を埋めるようにして、いま彼が出て行ったばかりの扉へもたれ掛かって空気の抜けた風船みたいにズルズルと座り込んだ。
(きゃー、私のバカ! 京ちゃんの下着任されるとかっ。絶対照れ臭いやつー!)
言葉とは裏腹。ちょっぴり新婚さんみたいで嬉しいな? と思ったのも事実。
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お風呂から上がって、買ってもらったばかりのモコモコ部屋着に着替えた芽生は、LDKに戻ってきて恐る恐る扉を開けた。
途端、出汁の芳しい香りが鼻先をくすぐって、お腹がグゥッと鳴ってしまう。
「京ちゃん」
それを誤魔化すみたいにお腹を押さえながらキッチンに立つ男の名を呼んだ。
「おう、子ヤギ、風呂上がったか」
「うん」
不思議だ。
いま京介自身が問いかけてきたように、芽生が風呂から上がったばかりだというのに、何故か京介もまるで風呂上がりででもあるかのように髪がしっとりと濡れそぼっている。それを裏付けるように、肩へ引っ掛けられた真っ白なタオルが、湯上がり感をいや増させていた。
外で会うときにはいつもきっちりセットされた髪の毛も、無造作にタオルでワシワシ拭いた後みたいにラフな感じで下りている。それが、全体的になんとも言えない男の色香を漂わせていた。
加えてさっきまではきちっとしたスリーピースのスーツを着こなしていたはずなのに、今は白のTシャツの上に上下揃いのジャージ姿。そんなラフな服装の京介を見たのも初めてだった芽生は、妙に緊張してしまった。
「芽生、千崎に持って来させたパジャマ、似合ってるじゃねぇか。可愛いぞ」
ちらりと芽生に視線を投げ掛けてフッと笑うと、京介が芽生の部屋着姿を褒めてくれる。
ほわりと柔らかな印象を受ける薄桃色のモコモコパジャマは、左胸のところに愛らしいウサギのアップリケが付いていた。
ただ単に服装の力かも知れないが、大好きな男に〝可愛い〟だなんて言われて、心を躍らせないなんて無理。
「あ、りがと……。えっと……きょ、京ちゃんも……その……かっこいい、よ?」
「バーカ。なに赤くなってんだ」
(いや、だからそういうことはいちいち口にしないでっ!)
芽生はボフッとフードを被って顔を隠すと、「だって京ちゃん。何だかいつもと雰囲気違うから落ち着かないんだもん」
本当は〝照れ臭い〟と言いたいのを〝落ち着かない〟と言い換えて、芽生はうつむいたままボソリとつぶやいた。
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