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11.親密さの罠
リセットした意味がない
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車で待っていた佐山に練り切りと茶の差し入れをして、二言三言雑談を交わしてから事務所内へ戻った芽生は、京介に促されるまま愛らしい兎の練り切りが待つ席へ座った。それと同時、京介から「明日からここで働かせてもらえるよう長谷川に話付けといたから」と言われて面食らってしまう。
長谷川社長と静月は、芽生と京介の二人で話をした方がいいと判断したのか、応接セットからは離れて自席で仕事をしていた。時折チラチラと視線を感じるので、気にはなっているんだろう。
「あ、あのっ、京ちゃん? 知ってると思うけど私、ファミレスで働いてる、よ?」
「そっちは辞めさせてもらえるよう手配するから心配すんな」
有無を言わせぬ調子でまくし立てられた芽生は、なにがなんだか分からなくて戸惑った。
「でもっ。そんな急に辞めるとか……お店に迷惑が掛かっちゃう」
芽生としては至極当然な理由を述べたのだけれど、京介から腹立たし気に舌打ちされてしまう。
「なぁ子ヤギ。お前はそんなにあの臭ぇ男に付き纏われてぇのか?」
「えっ!?」
臭い男、とはきっと細波鳴矢のことに違いない。京介だって、芽生が彼のことを嫌っているのは知っているはずなのに、何故そんな意地悪を言うんだろう。
「そんなわけないじゃないっ! 京ちゃんの、バカ!」
芽生が京介の言葉を全否定したのを見届けるなり、したり顔で京介が続ける。
「なぁ子ヤギ。前々からずっと言おうと思ってたんだがな? あそこに勤めてる限りお前、あの嫌味な男に追いかけ回されるの、回避できねぇんだぞ?」
「そ、それはそう……だけど……」
「俺だっていつもいつも駆けつけて助けてやれるわけじゃねぇ。それも分かってるか?」
京介が来てくれて事なきを得たことは沢山あったけれど、確かに一人きりで細波の暴挙に対処しなくてはいけないことも多かった。
芽生がグッと言葉に詰まったのを確認して、京介が追い打ちを掛けてくる。
「あいつに家まで来られて怖い思いさせられたの、まさか忘れたわけじゃねぇよな?」
火事があったあの日、細波にバイト終わりを待ち伏せされて、それだけならまだしも家のすぐそばまで来られて怖くて帰れなくなってしまった。出先のコンビニから京介へSOSのメッセージを送ったことは、芽生だって忘れていない。
それに……芽生の家が燃えているのをいいことに、細波の家へ連れ去られそうになったことも一緒に思い出した芽生は、ゾクリと身体を震わせた。
「せっかく引っ越ししてリセット出来たっちゅーのに、お前はまた細波に姿を見せてやるつもりか?」
京介の言葉に、芽生は何も言えなくなった。
確かに家を引っ越した今が、色々リセットして細波から距離を取る絶好の機会に違いない。
「あ、あの……京ちゃん。私、簿記三級の資格くらいしかないんだけど……ここでお役に立てるかな?」
芽生がごにょごにょと小さな声で言ったら、京介がワシャワシャと頭を撫でてくれた。
長谷川社長と静月は、芽生と京介の二人で話をした方がいいと判断したのか、応接セットからは離れて自席で仕事をしていた。時折チラチラと視線を感じるので、気にはなっているんだろう。
「あ、あのっ、京ちゃん? 知ってると思うけど私、ファミレスで働いてる、よ?」
「そっちは辞めさせてもらえるよう手配するから心配すんな」
有無を言わせぬ調子でまくし立てられた芽生は、なにがなんだか分からなくて戸惑った。
「でもっ。そんな急に辞めるとか……お店に迷惑が掛かっちゃう」
芽生としては至極当然な理由を述べたのだけれど、京介から腹立たし気に舌打ちされてしまう。
「なぁ子ヤギ。お前はそんなにあの臭ぇ男に付き纏われてぇのか?」
「えっ!?」
臭い男、とはきっと細波鳴矢のことに違いない。京介だって、芽生が彼のことを嫌っているのは知っているはずなのに、何故そんな意地悪を言うんだろう。
「そんなわけないじゃないっ! 京ちゃんの、バカ!」
芽生が京介の言葉を全否定したのを見届けるなり、したり顔で京介が続ける。
「なぁ子ヤギ。前々からずっと言おうと思ってたんだがな? あそこに勤めてる限りお前、あの嫌味な男に追いかけ回されるの、回避できねぇんだぞ?」
「そ、それはそう……だけど……」
「俺だっていつもいつも駆けつけて助けてやれるわけじゃねぇ。それも分かってるか?」
京介が来てくれて事なきを得たことは沢山あったけれど、確かに一人きりで細波の暴挙に対処しなくてはいけないことも多かった。
芽生がグッと言葉に詰まったのを確認して、京介が追い打ちを掛けてくる。
「あいつに家まで来られて怖い思いさせられたの、まさか忘れたわけじゃねぇよな?」
火事があったあの日、細波にバイト終わりを待ち伏せされて、それだけならまだしも家のすぐそばまで来られて怖くて帰れなくなってしまった。出先のコンビニから京介へSOSのメッセージを送ったことは、芽生だって忘れていない。
それに……芽生の家が燃えているのをいいことに、細波の家へ連れ去られそうになったことも一緒に思い出した芽生は、ゾクリと身体を震わせた。
「せっかく引っ越ししてリセット出来たっちゅーのに、お前はまた細波に姿を見せてやるつもりか?」
京介の言葉に、芽生は何も言えなくなった。
確かに家を引っ越した今が、色々リセットして細波から距離を取る絶好の機会に違いない。
「あ、あの……京ちゃん。私、簿記三級の資格くらいしかないんだけど……ここでお役に立てるかな?」
芽生がごにょごにょと小さな声で言ったら、京介がワシャワシャと頭を撫でてくれた。
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