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34.それは恋人の呼び名じゃない
訪問者
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「良かった……」
嬉し過ぎると、言葉は案外出てこなくなるらしい。
もっと気の利いたことが言えたらいいのに、芽生はそうつぶやくので精一杯だった。
「それで……ブン、佐、山さんが……殿様を連れてここへ来てくれる、の?」
だから京介が出かけても、芽生は一人ぼっちにはならないと言いたいのだろうか?
そう思った芽生だったけれど、あんなに警戒していたはずの佐山文至と自分が二人きりになるの、もう平気なの? と思ってソワソワしてしまう
「ああ。殿様の迎えついで、猫の飼育用品とかも一式買いそろえて来てくれるよう頼んであるからな。そう言うのの設置もアイツがしてくれる。けど――」
そこで芽生の頭をくしゃりと撫でると、
「アイツとお前が二人っきりになるっちゅーのはまだなんとなくモヤモヤしちまってな……」
言いながらいつも通り。照れ隠しみたいにふいっと芽生から視線を逸らせると、
「お前は俺のモンだ。万が一にも間違いがあっちゃぁ困んだろ?」
京介が半ば吐き捨てるみたいに吐息交じりな言葉を落とすから、芽生にはそんな京介が愛しくてたまらない。
「京、ちゃん……」
――なんにも心配なんてする必要、ないよ?
そう言おうとした芽生だったけれど、もしそれが京介と他の女性だったら……と置き換えて考えて、凄くイヤな気持ちになった。
「引いたか?」
芽生が眉根を寄せるのを見て、勘違いしてしまったんだろう。
「俺の愛情表現は重いっ言ったろ?」
バツが悪そうにそっぽを向いたまま京介が吐息を落とすから、芽生は京介の手にそっと触れた。
「私も……一緒、だよ……?」
「……一緒?」
「京ちゃんが……他の女の人と二人きりとか……絶対ヤダってこと!」
芽生がぷぅっと頬を膨らませて見せると、京介が一瞬キョトンとした顔をして、「そうか……」と微笑んでくれた。京介のそんな表情に、芽生は心底ホッとする。
「じゃあ……佐山さんは殿様をここへ連れてきてくれて……飼育用品を設置し終えたらすぐに帰っちゃうって認識でいいかな?」
解熱鎮痛剤のお陰で随分楽にはなったけれど、熱のせいでぼんやりした思考回路のまま、懸命に考えた芽生が京介を見つめたら、京介が「ああ、佐山は、な?」と含みのある言い方をする。
「どういう、意味?」
京介との会話で、自分を一人にしないというのは、殿様が帰ってくるからだろうと解釈していた芽生は、京介の真意を測りかねて困惑した。
「ああ。実はもうちょっとしたらな――」
京介がそこまで言ったところでチャイムの音が鳴って、話が中断する。
どうやら誰か来たらしい。
(ブンブンかな?)
飼育用品を買って、殿様を動物病院へ連れに行ったにしては早すぎる気がしたけれど、京介がいつ佐山に連絡を取ったのか、芽生は知らない。案外結構早い段階で彼に頼みごとをしていたのかも知れないよね?
そう思った芽生の予想に反して、京介に伴われて芽生の前へ姿を現したのは、ブンブンとは別の人物だった。
嬉し過ぎると、言葉は案外出てこなくなるらしい。
もっと気の利いたことが言えたらいいのに、芽生はそうつぶやくので精一杯だった。
「それで……ブン、佐、山さんが……殿様を連れてここへ来てくれる、の?」
だから京介が出かけても、芽生は一人ぼっちにはならないと言いたいのだろうか?
そう思った芽生だったけれど、あんなに警戒していたはずの佐山文至と自分が二人きりになるの、もう平気なの? と思ってソワソワしてしまう
「ああ。殿様の迎えついで、猫の飼育用品とかも一式買いそろえて来てくれるよう頼んであるからな。そう言うのの設置もアイツがしてくれる。けど――」
そこで芽生の頭をくしゃりと撫でると、
「アイツとお前が二人っきりになるっちゅーのはまだなんとなくモヤモヤしちまってな……」
言いながらいつも通り。照れ隠しみたいにふいっと芽生から視線を逸らせると、
「お前は俺のモンだ。万が一にも間違いがあっちゃぁ困んだろ?」
京介が半ば吐き捨てるみたいに吐息交じりな言葉を落とすから、芽生にはそんな京介が愛しくてたまらない。
「京、ちゃん……」
――なんにも心配なんてする必要、ないよ?
そう言おうとした芽生だったけれど、もしそれが京介と他の女性だったら……と置き換えて考えて、凄くイヤな気持ちになった。
「引いたか?」
芽生が眉根を寄せるのを見て、勘違いしてしまったんだろう。
「俺の愛情表現は重いっ言ったろ?」
バツが悪そうにそっぽを向いたまま京介が吐息を落とすから、芽生は京介の手にそっと触れた。
「私も……一緒、だよ……?」
「……一緒?」
「京ちゃんが……他の女の人と二人きりとか……絶対ヤダってこと!」
芽生がぷぅっと頬を膨らませて見せると、京介が一瞬キョトンとした顔をして、「そうか……」と微笑んでくれた。京介のそんな表情に、芽生は心底ホッとする。
「じゃあ……佐山さんは殿様をここへ連れてきてくれて……飼育用品を設置し終えたらすぐに帰っちゃうって認識でいいかな?」
解熱鎮痛剤のお陰で随分楽にはなったけれど、熱のせいでぼんやりした思考回路のまま、懸命に考えた芽生が京介を見つめたら、京介が「ああ、佐山は、な?」と含みのある言い方をする。
「どういう、意味?」
京介との会話で、自分を一人にしないというのは、殿様が帰ってくるからだろうと解釈していた芽生は、京介の真意を測りかねて困惑した。
「ああ。実はもうちょっとしたらな――」
京介がそこまで言ったところでチャイムの音が鳴って、話が中断する。
どうやら誰か来たらしい。
(ブンブンかな?)
飼育用品を買って、殿様を動物病院へ連れに行ったにしては早すぎる気がしたけれど、京介がいつ佐山に連絡を取ったのか、芽生は知らない。案外結構早い段階で彼に頼みごとをしていたのかも知れないよね?
そう思った芽生の予想に反して、京介に伴われて芽生の前へ姿を現したのは、ブンブンとは別の人物だった。
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