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送り狼的な彼

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「ねぇ、花々里かがりちゃん。気づいてる?」

「え?」

 それでもなお煮え切らない私に、小町こまちちゃんが言う。


「そんな風に考えてる時点で、その人はもう花々里ちゃんの中で特別なんじゃない?」


 私は小町ちゃんのその言葉に、心臓を撃ち抜かれたようなショックを受けた。


「でもっ、出会ってまだたったの数日、だよ? 普通に考えてそんなことあるわけ……ない、じゃない……」

 ソワソワしながら言ったら、「でもその人、花々里ちゃんを見るなり気に入って奥さんにって望んでくれたんでしょう? それって相手の人は花々里ちゃんに一目惚れしたんじゃないの? 逆だってないとは言い切れないよ? それに――」

 そこで私をじっと見つめて「ねぇ、花々里かがりちゃん、こっちの玉子サンド、あげようか?」って何の脈絡もなく金ピカ卵のサンドイッチを差し出してくるの。


「いっ、いいのっ!? 小町こまちちゃん、だぁ~い好きっ♥」

 難しいお話は後でいいの。
 まずはデニッシュ卵サンドを♥


 そう思って手を伸ばしたら「う・そ・よ!」って引っ込めちゃうとか……。

 酷い……!


「ほら、これでハッキリ分かったでしょう?」

 全部は私もお腹すいて無理だから半分あげるね、ってパクパクッと端っこを齧ってから、小町ちゃんが残りを「食べかけで悪いけど」って手渡してくれて。

「ありがとぉぉぉぉー♥」

 齧りかけだって構わない。だって噛んだの小町こまちちゃんだし。問題ない!

 ルンルンでアーンと大口を開けた私を見て、小町ちゃんが続けるの。


花々里かがりちゃんは餌付けに弱い。美味しいものくれる人のこと、割と無条件で好きになるでしょ?」


 ふんわり笑ってそう言われて、「そっ、そんなこと――」ないって続けようとしたら「さっきだって私のこと〝だぁ~い好きっ♥〟って言ってたよ?」と先手を打たれて言葉に詰まる。


「でっ、でも頼綱よりつなのことはっ」

 言おうとして、「花々里ちゃんがトラウマだって言ってるお菓子のお兄さんだって……結局は餌付け絡みじゃないの」って小町ちゃんにポツンと落とされて。

 私は先が続けられなかった。


 だって……頼綱のことをどう思ってるかなんて……悔しいけれど、結局のところ自分が1番分かってるんだもん。


 どんなに否定したって悪あがきに過ぎない。

 私は疑うべくもなく、強く頼綱に惹かれてる――。見た目も中身も……。それから美味しいものを沢山くれるところも。

 そう。
 悔しいけど……もうすでに手遅れなくらいに……。
 全部全部大好きになってるよ。
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