【完結】【R18】結婚相手を間違えました

鷹槻れん

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17.出しっぱなしのカップ

結葉の嘘と偉央の優しさ

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 自分をキョトンとした顔で見上げてくるハムスターには何の罪もない。

「福助が使っていたケージや道具、リビングにまだそのままだったよね?」

 何となく片付けるのが辛くて……。でも、だからと言って空っぽのケージを見るのは悲しくて。

 福助がいなくなって大分経つけれど、偉央いおが言うように福助が使っていたケージは、綺麗に掃除をしてから、布を掛けてリビングにそのまま置いてある。

「床材や餌も一緒に持って帰ってきてるから」

 とりあえずケージに移してやろうか、と偉央いおに言われて、結葉ゆいはは小さく頷いた。

「って思ったけど――。結葉ゆいは、キミは調子悪そうだし、寝室でやすんでおいで? 僕がやっとくから」

 言って、偉央いお結葉ゆいはの手からハムスターの入った箱を取り上げると、再度床に置く。

 そうして、今にも倒れてしまいそうな結葉ゆいはを気遣いながら一旦寝室へと向かった。



***



「部屋、暖房入れるから。暖かくなったらパジャマに……」

 そこまで言って、ベッドに腰掛けさせた結葉ゆいはを心配そうに見下ろすと、偉央いおが「一人で着替えられそう?」と問いかけてきた。

 何だか今日の偉央いおはとても優しくて。
 まるで新婚当初の彼に戻ったかのような〝錯覚〟を結葉ゆいはに与える。

 きっとそうにアレコレ言われたことが影響しているんだろうな、と漠然と思った結葉だったけれど、何だかいつもの癖で「反動が怖い」とも思ってしまった。

 偉央いおとの付き合いも長い。

 彼が長年かけて自分にしてきた支配と抑圧は、ほんの少し優しくされたくらいではそんなに簡単に結葉ゆいはの緊張を解きはしなかったし、逆に〝嵐の前の静けさ〟なのではないかと警戒心さえ引き起こして。

 何か些細なきっかけがあったら、きっと偉央いおそうとのことも相まって、いつも以上に自分に酷いことをする気がして仕方のない結葉ゆいはだ。



「だ、大、丈夫です……」

 どこか怯えを含んだ震え声で「自分で着替えられる」と小さく答えた結葉ゆいはを見て、偉央いおは溜め息をつきたい衝動を必死に抑えた。

 結葉ゆいはがこんな風に自分の一挙手一投足にビクビクするのは、自分がこれまで結葉ゆいはにしてきたことを思えば当然の〝報い〟だと思ったし、一度植え付けてしまったそういう感情が、今日や明日ほんの少し優しくしたくらいで拭えるはずがないことも、偉央自身ちゃんと分かっているつもりだ。

「……着替え、出してくる」

 だからあからさまにガッカリしている顔を結葉ゆいはに見せたくなくて、偉央いお結葉ゆいはに背中を向けると、彼女の箪笥たんすから寝巻きを出してやりに行く。
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