【完結】【R18】結婚相手を間違えました

鷹槻れん

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20.逃避行

不安だらけの結葉

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 そうが迎えにきてくれて。
 エントランス前に横付けされた彼の車に乗り込んでマンションの敷地を出るまでの間、結葉ゆいははずっと『みしょう動物病院』の方をソワソワと気にして気持ちをピンと張り詰めさせていた。

 いつ、偉央いおが逃げようとしている自分を見咎みとがめて追いかけてくるんじゃないかと気が気じゃなかった結葉ゆいはだ。

 だが実際は結葉ゆいはが見つめる先。
 『みしょう動物病院』の駐車場は満車で、駐車スペースが空くのを待っている車も数台いるほどの盛況ぶりだったから。

 当然結葉ゆいはが懸念したように偉央いおが彼女を追いかけて建物から出て来るようなことはなかった。


 そう結葉ゆいはを気遣ってくれたんだろう。

 前回このマンションを訪れたときには山波やまなみ建設の社用車軽トラだったのが、今回は黒のミニバン――ヴォクシーで来てくれていた。

 助手席に乗ったら外から丸見えだ、怖い……とソワソワした結葉ゆいはにいち早く気付いたそうが、ドアロックを解除するなりリモコンキーで後部座席のスライドドアを開けて後ろに乗り込めるようにしてくれる。

 前部座席とは違って、後ろは窓がプライバシーガラスになっていて、外からは車内が見えにくくなっていたから、それだけでも結葉ゆいはの心は軽くなった。

 それでもやっぱり不安が拭いきれなかった結葉ゆいはは、そうに促されるまま後部シートに乗り込みながら、窓から顔が覗かないよう身体を寝かせるようにして。



 そんな自分を見守ってくれているそうは、コンシェルジュと同じ制服を着て、夫の勤め先を異常なまでに気にして怯えている結葉ゆいはに、きっと聞きたいことが山ほどあるはずだ。


 だけど何も言わずに運転席に乗り込むと、結葉ゆいはに「出すぞ」とだけ声を掛けてきた。

 いま、そうからアレコレ聞かれても、きっと追っ手がくるのではないかとか、そういうことばかりが気になっている結葉ゆいはには、まともな受け答えなんて出来なかっただろう。


 小刻みに震える身体にギュッと力を込めて、両腕に抱えた雪日ゆきはるの入ったトートバッグを抱き寄せた結葉ゆいはは、そんなそうの気遣いに心の底から感謝する。

 今はとにかくただただこの場から遠ざかりたい一心の結葉ゆいはだ。

 実際、そうがどこへ向けて車を走らせているのかとか、そういうことにすら気持ちが回らないほど、結葉ゆいははそればかりに気を取られていた。
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