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迎え
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その仕草がただただ嬉しくて、パティスは涙が堪え切れなくなってしまう。
ぽろぽろと大粒の涙をこぼして泣きじゃくるパティスに、ブレイズが安心したような、どこか寂しげな複雑な微笑を投げかけた。
「これで胸張って家に帰れるな!」
全ての想いを断ち切るように、元気すぎるぐらいはきはきとした声でそう宣言すると、ブレイズは二人の前に小鳥とナスターを差し出す。
「森を抜けるための道案内はどっちがいい?」
問えば、マリーンは小鳥を、パティスはナスターを指差した。
「じゃ、どっちも連れて帰りな」
言って、何事もなかったように微笑むブレイズに、パティスはどうしようもなく切なくなる。
「ブレイズは――っ!?」
残ると言うのは分かっていても、聞かずにはおられなかった。
また、この広い屋敷で一人過ごさねばならなくなるブレイズを思うと、胸が締め付けられる気がした。
「俺にはお前が作ってくれた沢山のナスターたちがいるから平気だ。それに……ちっとばかし厄介だが母さんが残してくれたディックもいるしな」
出会ったころのようにどこか小憎たらしい顔をしてニヤリと嘲笑うブレイズを見ても、パティスの心はざわついたままだった。
「でも……ブレイズ! 私が作った子達は有限なんだよ!?」
無限のときを生きていかねばならないブレイズにとって、あれしきの数の犬たちが、一体どれほどの慰めになるというのか。
マリーンの腕をすり抜けると、ブレイズに抱きついて抗議するパティス。
「私、やっぱりブレイズと一緒に残る!」
下から見上げるように懇願するパティスを一度だけギュッと抱きしめると、ブレイズは彼女をそっと引き剥がした。
「それはできない。んなことしたら俺はパティスの両親から大切な娘を奪うことになっちまう。お前、俺を悪者にしたいのか?」
パティスの前にしゃがみ込むと、諭すように静かな声音でそう問いかけるブレイズ。
涙の乾き切らないパティスの頬にそっと口付けてから
「約束しないか? パティスが大きくなって……親御さんの力を借りなくても一人で生活できるようになったら……また会いに来てくれ。お前が尋ねて来られるよう、俺は毎日ナスターを公園まで迎えに出すようにするから。――な?」
そう提案した。
先ほどまでは厚い雲に覆われていた空から、嘘のように晴れ間が覗いていた。
空には満月よりやや欠けた形の月が顔を出していて、三人が佇む地面に淡い月光を降り注がせている。
「約束……?」
月光を受けて濡れ光る目でブレイズの紅玉の瞳を真っ直ぐに見つめると、パティスはそうつぶやいた。
「そう。月に誓って約束しよう」
ブレイズが優しくうなずくのを確認して、パティスは彼から離れる。
「絶対だよ?」
何度も何度も振り返り、振り返りしながら遠ざかっていく二つの人影を見つめながら、ブレイズは月に祈りを捧げずにはおられなかった。
――どうかまた彼女と会えますように、と。
ぽろぽろと大粒の涙をこぼして泣きじゃくるパティスに、ブレイズが安心したような、どこか寂しげな複雑な微笑を投げかけた。
「これで胸張って家に帰れるな!」
全ての想いを断ち切るように、元気すぎるぐらいはきはきとした声でそう宣言すると、ブレイズは二人の前に小鳥とナスターを差し出す。
「森を抜けるための道案内はどっちがいい?」
問えば、マリーンは小鳥を、パティスはナスターを指差した。
「じゃ、どっちも連れて帰りな」
言って、何事もなかったように微笑むブレイズに、パティスはどうしようもなく切なくなる。
「ブレイズは――っ!?」
残ると言うのは分かっていても、聞かずにはおられなかった。
また、この広い屋敷で一人過ごさねばならなくなるブレイズを思うと、胸が締め付けられる気がした。
「俺にはお前が作ってくれた沢山のナスターたちがいるから平気だ。それに……ちっとばかし厄介だが母さんが残してくれたディックもいるしな」
出会ったころのようにどこか小憎たらしい顔をしてニヤリと嘲笑うブレイズを見ても、パティスの心はざわついたままだった。
「でも……ブレイズ! 私が作った子達は有限なんだよ!?」
無限のときを生きていかねばならないブレイズにとって、あれしきの数の犬たちが、一体どれほどの慰めになるというのか。
マリーンの腕をすり抜けると、ブレイズに抱きついて抗議するパティス。
「私、やっぱりブレイズと一緒に残る!」
下から見上げるように懇願するパティスを一度だけギュッと抱きしめると、ブレイズは彼女をそっと引き剥がした。
「それはできない。んなことしたら俺はパティスの両親から大切な娘を奪うことになっちまう。お前、俺を悪者にしたいのか?」
パティスの前にしゃがみ込むと、諭すように静かな声音でそう問いかけるブレイズ。
涙の乾き切らないパティスの頬にそっと口付けてから
「約束しないか? パティスが大きくなって……親御さんの力を借りなくても一人で生活できるようになったら……また会いに来てくれ。お前が尋ねて来られるよう、俺は毎日ナスターを公園まで迎えに出すようにするから。――な?」
そう提案した。
先ほどまでは厚い雲に覆われていた空から、嘘のように晴れ間が覗いていた。
空には満月よりやや欠けた形の月が顔を出していて、三人が佇む地面に淡い月光を降り注がせている。
「約束……?」
月光を受けて濡れ光る目でブレイズの紅玉の瞳を真っ直ぐに見つめると、パティスはそうつぶやいた。
「そう。月に誓って約束しよう」
ブレイズが優しくうなずくのを確認して、パティスは彼から離れる。
「絶対だよ?」
何度も何度も振り返り、振り返りしながら遠ざかっていく二つの人影を見つめながら、ブレイズは月に祈りを捧げずにはおられなかった。
――どうかまた彼女と会えますように、と。
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