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02.如月龍之介/written by 市瀬雪
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【side:如月隆之介】
よろめいたうり坊の腕を掴み、ちゃんと立ったのを確認してから手を離す。
「隆ちゃんじゃねぇよ。危ねぇな」
軽く前髪をかき上げながら溜息をつくと、目の前の相手が「ごめん、急いでたから」と小柄な身体を更に縮めて謝ってくる。
「まぁ、相手が俺で良かったな。他のやつじゃ確実にぶつかってお前ふっとんでただろうし」
「ふ、ふっとんでたって……っ」
「ないって言えねぇだろ」
当たり前みたいに言えば、彼女は言葉を詰まらせる。
相変わらず小さい。身長は150あるかどうかってところだろうか。昔から小柄な印象だったけれど、それは今でも変わっていないらしい。俺が190近くあるため、よけいにそう見えてしまうのかもしれない。
目の前で、僅かに頬を膨らませるようにして俺を見上げているのは、幼なじみの春川萌々。
幼なじみとはいえ、年齢差もあって四六時中一緒にいたような関係ではないが、それでも実家が近所であるため、それなりに顔を合わせてはいた。
小学校では一年しかかぶらなかったが、通学班も同じで、しかも俺が六年(で班長)のときに萌々が一年だったから、必然とその期間はわりと面倒を見る羽目になっていた覚えがある。
まぁ、要するに妹みたいな存在っていうか。それ以上でも以下でもない。
それは今となっても変わっていなかった。
「どうでもいいけど、時間。急いでたんじゃねぇのか」
思い出したように言えば、萌々が「あー!」と声を上げる。
こういうとき、どこぞの王子様なら颯爽と車でも出してきて、「送ってあげるよ」なんて爽やかに微笑むんだろうが、あいにく俺がそれをやるとコントにしかならない上にまず一発で免許取り消しになる。
だって俺はついさっきまで飲んでたからな。
いや、仕事だけど。
「気をつけていけよ」
どこか名残惜しそうながらも、「じゃあ、またね!」と手を振る萌々に軽く片手を挙げて、俺は苦笑混じりに独りごちる。
「……つーかうり坊とか久々に口にしたわ」
まぁでも、ぴったりだな。
特に反論もされなかったし。
あっという間に小さくなっていく背中に目を細めつつ、こみ上げた笑いに微かに肩を揺らす。
その姿が完全に見えなくなってから、俺はこみ上げた欠伸と共に一度大きく伸びをした。
* * *
久々に実家に戻った俺は、持っていた合鍵が使えることにほっとしながら中に入った。
「あら、隆之介。珍しいわね」
玄関で靴を脱いでいると、無駄に広いホールに少女みたいな高めの声が響いた。
少女みたいとは言え、相手はまぁ、俺から見ればれっきとした中年だ。もうすぐ26になる俺の母親なんだから。
よろめいたうり坊の腕を掴み、ちゃんと立ったのを確認してから手を離す。
「隆ちゃんじゃねぇよ。危ねぇな」
軽く前髪をかき上げながら溜息をつくと、目の前の相手が「ごめん、急いでたから」と小柄な身体を更に縮めて謝ってくる。
「まぁ、相手が俺で良かったな。他のやつじゃ確実にぶつかってお前ふっとんでただろうし」
「ふ、ふっとんでたって……っ」
「ないって言えねぇだろ」
当たり前みたいに言えば、彼女は言葉を詰まらせる。
相変わらず小さい。身長は150あるかどうかってところだろうか。昔から小柄な印象だったけれど、それは今でも変わっていないらしい。俺が190近くあるため、よけいにそう見えてしまうのかもしれない。
目の前で、僅かに頬を膨らませるようにして俺を見上げているのは、幼なじみの春川萌々。
幼なじみとはいえ、年齢差もあって四六時中一緒にいたような関係ではないが、それでも実家が近所であるため、それなりに顔を合わせてはいた。
小学校では一年しかかぶらなかったが、通学班も同じで、しかも俺が六年(で班長)のときに萌々が一年だったから、必然とその期間はわりと面倒を見る羽目になっていた覚えがある。
まぁ、要するに妹みたいな存在っていうか。それ以上でも以下でもない。
それは今となっても変わっていなかった。
「どうでもいいけど、時間。急いでたんじゃねぇのか」
思い出したように言えば、萌々が「あー!」と声を上げる。
こういうとき、どこぞの王子様なら颯爽と車でも出してきて、「送ってあげるよ」なんて爽やかに微笑むんだろうが、あいにく俺がそれをやるとコントにしかならない上にまず一発で免許取り消しになる。
だって俺はついさっきまで飲んでたからな。
いや、仕事だけど。
「気をつけていけよ」
どこか名残惜しそうながらも、「じゃあ、またね!」と手を振る萌々に軽く片手を挙げて、俺は苦笑混じりに独りごちる。
「……つーかうり坊とか久々に口にしたわ」
まぁでも、ぴったりだな。
特に反論もされなかったし。
あっという間に小さくなっていく背中に目を細めつつ、こみ上げた笑いに微かに肩を揺らす。
その姿が完全に見えなくなってから、俺はこみ上げた欠伸と共に一度大きく伸びをした。
* * *
久々に実家に戻った俺は、持っていた合鍵が使えることにほっとしながら中に入った。
「あら、隆之介。珍しいわね」
玄関で靴を脱いでいると、無駄に広いホールに少女みたいな高めの声が響いた。
少女みたいとは言え、相手はまぁ、俺から見ればれっきとした中年だ。もうすぐ26になる俺の母親なんだから。
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