スキかキライかしかえらべません!

鷹槻れん

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06.アオハル?/written by 市瀬雪

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 目的地に着くと、店の駐車場にそれを止め、ジャケットの前を開けながら入り口付近へと歩いて行く。視線の先には、見知った人物が立っていた。

きよ


 声をかけると、弾かれたように顔を上げた相手から、待ちかねたみたいな声が返ってくる。

「遅いよ」

 少し高めのハスキーな声。

「時間通りだろ」

 俺は軽く整えるように前髪を搔き上げながら、笑みを滲ませた。
 そこに立っていたのは、俺より10センチ程度背の低い一人の男。少し癖のある長めの髪を無造作にセットした、中性的な顔立ちをした彼――茜 清登あかねきよとは、「何かおごってよね」と僅かに口を尖らせ、店の中を指さした。


 *  *

 昼食がまだだった俺は軽く食事をし、食後のコーヒーを待つ傍ら、取り出したスマホに目を落とす。ほぼ毎日チェックしている、写真や画像に特化したSNSを覗くためだ。そこには俺が働く店のアカウントも登録されている。

「……ねぇ、あれ見て」
「?」

「あれってアオハル?」

 けれども、目的の画面が開いたところで、向かい席に座っていた清に潜めた声で水を向けられた。

 清は煙草を吸うので、俺たちが座っているのは喫煙席だ。
 そこから清が目線で示したのは、壁際に位置するテーブル席。禁煙席の中でも、喫煙席から一番遠い席の一つだった。

「……いや、こっからは見えねぇし」

 ただし、俺の席からはついたてなどが邪魔して見ることができない。
 それをわざわざ立ち上がって見るのもどうかと思い、俺はただ、苦笑混じりに「そんな面白そうなもんが見えんの?」とだけ応えた。

「王子様みたいなキラキラした男の子と、小学生くらいの女の子が二人で座ってて……」
「小学生?」
「あ、中学生かもしんないけど」
「は?」

「まぁ、とにかく、そんな可愛らしい二人がさ。多分、あれ……」
「何だよ」

「告白してる」
「……あ、どうも」

 へぇ、と若干興味を引かれたものの、そこに運ばれてきたコーヒーの方に自然と意識が移った。

「つーか、小学生も中学生もいまは学校の時間だろ」

 ブラックのままのコーヒーをひと口飲んで、俺は「あてになんねぇな」と溜息混じりに小さく笑う。
 するとそれを聞いた清も、「あ、そっか」ととたんに興味をなくしたみたいに煙草を取り出し、

「やー。なんか他人事ながらちょっとどきどきしちゃった。上手くいくといいよね~」

 そのくせ淡く染めた頬に触れながら、次にはそぐわないほど手慣れた所作で咥え煙草に火を点けていた。
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