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6.私を巻き込まないで下さいっ!

身を固める?

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 きっと葉月さんは何かに驚いて悲鳴をあげても、可愛らしく「きゃっ」とか言っちゃえる女性ひとだ。「きゅあっ」とか「ひゃわっ」などと変な呪文を唱える私とは大違い。

 織田おりた課長もせめてもう少しお母様に近いタイプの女性ひとを選べば良かったのに、何でよりによって私なんでしょう!?

 正直な話、織田おりた課長ほどの〝見た目〟と〝美声〟なら、腹黒ささえしっかりコーティング出来れば、すぐにでも絶世の美女が捕まりそうな気がする。


「失礼だな、母さん。いくら何でもそんなすぐバレるような嘘、僕はつきませんよ」

 いけしゃあしゃあとよくおっしゃいますね?
 私が捕まらなかったらどうなさるおつもりだったのでしょう?

 そう思ったけれど、そんなのにも出さず、オホホホホと課長の横で微笑んでおいた。

 まぁ、心配しなくても織田おりた課長のことだから、その時はその時で上手く切り抜けていらしたと思う。

 だからこそ余計に思うの。

 私、要らなくない?

 というか、よくない?


***


「――それで宗親むねちかさん。貴方、お父様の後を継ぐ最低条件、お忘れになったわけじゃありませんよね? さっさと身を固めて戻っていらっしゃいな」


 ん――?
 後を継ぐ?
 身を固める?

 何だかお話が妙な方向へ流れていませんか?


 そんなことを思ったものの、〝仮初かりそめの恋人役〟の私なんかに口を挟める問題じゃないとも思って。

 織田おりた課長、今はそんなに乗り気ではないみたいだけど、お見合いのお話だってあるみたいだし……いずれ釣り合いの取れたお似合いのお嬢さんと結婚なさって会社を去られるのかしら。


 思い巡らせたあれこれは、極力表に出さないようにしたつもりだったけれど、が出来なくなるのはちょっぴり悲しいなと思ったら、自然眉根が寄ってしまった。


「母さん、その話、彼女にはまだ――」


 私の様子に気付いたらしい織田おりた課長が、「、悪いんだけど追加の飲み物を買ってきてもらえる?」とお財布を手渡してくる。


 これ、明らかに私を遠ざけようとしてるよね?

 すぐに分かりはしたけれど、さすがにお財布丸っとの受け取りは無理ですって思って、慌てて固辞すると「おっ、ギフトカードがありますので」と席を立つ。

 返す前にまた残高を減らしてしまうけど、不可抗力ということで許してくださいっ。
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